(英フィナンシャル・タイムズ紙 2018年3月21日付)
米ニューヨークのニューヨーク証券取引所。(c)AFP/Getty Images/Spencer Platt〔AFPBB News〕
経済学は医学と同様に(そして、例えば宇宙論とは異なり)、実際的な問題の解決を目指す実学である。
その目標は、世界をより良い場所にすることで、ジョン・メイナード・ケインズが大恐慌を目の当たりにして生み出したマクロ経済学は特にそうだ。
この学問の真価は、経済がつまずく可能性はどこにあるのか、そしてつまずいた経済を立て直すにはどうすればよいのかという2つのポイントを、その道の達人たちが理解しているか否かによって試される。
2007年の世界金融危機の際、達人たちはほぼ完全に不意打ちを食らった格好になり、マクロ経済学は第1のテストで見事に落第した。第2のテストは比較的良い成績だったが、それでも再建が必要な状況にある。
現在はシティグループに籍を置くエコノミストのウィレム・ブイター氏は2009年、本紙フィナンシャル・タイムズのブログで、「1970年代以降のマクロ経済理論における主流派のイノベーションの大半は・・・良く言っても自己言及的で内向きな気晴らしでしかなかったことがはっきりした」と指摘していた。
筆者は先日、オックスフォード・レビュー・オブ・エコノミック・ポリシー誌に掲載された論文「マクロ経済理論の再建(Rebuilding Macroeconomic Theory)」での徹底した分析に触れ、全く同じ考えを持つに至った。
正統なアプローチには深刻な欠陥があったうえに、トップクラスのプロのエコノミストたちは、この危機への対処法について全くバラバラな考え方をしていたのだ。
ソクラテスなら、自分はものを知っているという幻想を抱くよりも、自分はものを知らないという自覚を持つことの方がはるかに良いと言うかもしれない。もしそうであれば、マクロ経済学は良い状態にある。