文字

花まるシネマ

『スリー・ビルボード』 キャスト3名がオスカー候補になった秀作!

(C) 2017 Twentieth Century Fox

 アメリカの原題は「スリー・ビルボード ミズーリ州 エビング郊外」。つまりは、超が3つもつくほどのド田舎に立てられた3つの看板の話です。私たち日本人にとって、アメリカっていうとすぐに思いつくのがロサンゼルスだったり、ニューヨークだったりキラキラした大都市ですよね。でも、アメリカはめちゃくちゃ広くて、実際はこんな田舎町がたくさんある。生まれてからずっと街の中が全てで、その街で見てきたことが人生の全て。家庭で教えられてきたことが人生の全てなんて人はざらにいるわけです。

 完全な善人なんていないし、完全な悪人だっていない普通の田舎町。この映画の登場人物は、まさにそういう場所で生まれ育った人たち。娘を亡くし、町で一番の正義である警察署長を非難する看板を立てた母親は、あまりの口の悪さにこっちが笑っちゃうほどの偏屈な人。非難された警察署長を慕う若い警察官もまた、差別主義者である彼の母親にそれが正義だと教え込まれているからこそ、平気で差別発言をしてすぐに暴力を振るう。

 元々は、「娘が惨殺されたってのに犯人の目星もつかないなんてどうなっとんじゃボケが!」と怒り狂った母親が立てた看板から始まる物語。みんな普通の人だけど、理性ではどうにもならない感情があって、みんながみんな自分の中の正義を通そうとして、他人を傷つけてしまう。傷つけ合いながらも、小さな世界で生きてきた彼らの人生観が、少しずつ変わっていきます。フランシス・マクドーマンド、ウディ・ハレルソン、サム・ロックウェルという3人の演技派俳優がそんな深い深い人間の内面を演じ、素晴らしいアンサンブルを見せています。先日発表されたオスカーのノミネーションでは見事3人全員がノミネートされ、賞の行方がとても楽しみです! ★★★★★(森田真帆)

監督:マーティン・マクドナー

出演:フランシス・マクドーマンド、ウディ・ハレルソン、サム・ロックウェル

2月1日(木)から全国公開

【花まるシネマ】の最新記事

  • 外山真也のプロフィル

     とやま・しんや 1966年生まれ。映画ライター&時々編集者。学生時代はヨーロッパ映画を中心に見ていたが、情報誌の仕事が長かったため、今は洋の東西を問わず、単館系からハリウッドまで幅広くが信条。主な執 ...

    ⇒続きを見る

ページトップへ

facebook twitter rss

▼山陽新聞社運営サイト
さんデジタウンナビ | 岡山の医療健康ガイド | マイベストプロ岡山 | 47CLUB | さん太クラブ | おかやまリフォームWEB | LaLa Okayama
山陽新聞カルチャープラザ | 建てる倶楽部 | 山陽新聞進学ガイド | 山陽新聞プレミアム倶楽部 | まいられぇ岡山 | 囲碁サロン
▼関連サイト
47NEWS | 今日のニッポン
掲載の記事・写真及び、図版などの無断転記を禁じます。すべての著作権は山陽新聞社、共同通信社、寄稿者に帰属します。

Copyright © The Sanyo Shimbun. All Rights Reserved.

loading