著名Pythonista清水川貴之氏が語る「独学プログラマー」が陥る落とし穴の回避法
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「この本ではPythonについて扱っていますが、決してPythonだけを学ぶ本ではありません」
そう語るのは、2018年2月に出版された『独学プログラマー Python言語の基本から仕事のやり方まで(日経BP社刊)』(以下、『独学プログラマー』)の監訳を務めた清水川貴之氏だ。清水川氏は、Pythonの専門家集団として名高いビープラウドのIT Architectであり、公私にわたってPythonの普及拡大に尽力している人物でもある。今回、同著の内容と清水川氏自身の経験を交えながら、本のタイトルにもある「独学」に臨むエンジニアが心に留めておくべきポイントを聞いた。
株式会社ビープラウド IT Architect 一般社団法人PyCon JP 会計理事 清水川貴之氏
電気通信大学情報工学科卒業後、大手通信キャリア、ソフトウェア開発会社などを経て、Pythonによる開発案件を多数手掛けるビープラウドに入社。現在は、IT Architectとしての業務の傍ら、国内外の技術イベントでの登壇、講師、書籍の執筆・翻訳などにも取り組み、Pythonとその関連技術の普及に努めている。
エンジニアを目指す人に贈る「キャリアの地図」とは
「『独学プログラマー』の原著は、著者の米国人コーリー・アルソフ氏が独学でPythonを身に付けた経験をもとに著した『The Self-Taught Programmer:The Definitive Guide to Programming Professionally』です。この原著は16年12月の発売以来、数多くのプログラミング初学者を中心に読まれ、高い評価を得ています」
清水川氏は、本書を「Pythonの技術解説に留まらず、プログラマーが知っておくべき基礎概念や、プログラマーとしてのキャリアのあり方にまで言及している点で、他の本と一線を画している」と話す。
「この本を読んで実践すれば、確かにPythonの基本が身に付きます。しかし、この本が目指す最終的なゴールは、Pythonの習得ではありません。初心者がより良いプログラマーに成長するための指針や、プログラマーになるまでの全体像を示すことがこの本の主題だからです」
原著名に「Python」の文字がないのは、そのためだと清水川氏は説明する。つまり、正規のコンピュータサイエンス教育を受けずとも、プログラマーとして身を立てられることを世に知らしめることが本書の主眼であり、Pythonは自己実現のためのツールという位置付けなのだ。例えるなら、プログラミング初学者にとっての「地図のような本」だと清水川氏は表現する。
「この本は、他の技術専門書とは異なり『広く浅く』が持ち味です。なぜなら、真剣にプログラマーになりたい人や、開発したいソフトウェアがある人に向けて、キャリアの地図の役割を果たすために書かれたものだから。もっと詳しく知りたいと思うようになったら、より専門的な本を読むか、ウェブサイトを見て知識を深めてほしいというのが本書のスタンスです。地図のように全体像を示すことで、プログラマーになるまでの道筋がイメージできるため、特にプログラミング初学者にお勧めできる本だと思っています」
学ぶべきは、技術ではなく学ぶ姿勢
清水川氏自身、長年にわたりPythonの普及に尽力している一人のプログラマーとして本書を読み返してみても、原著者が全力を尽くして学ぼうとしてきた姿勢に感銘を受けるという。
「本書の冒頭で『目標を立てたら、友人や家族にお金を預け、目標達成できなかった時には自分が嫌っている組織にそのお金を寄付するように頼む』というテクニックが紹介されています。それは、プログラミングを習得するためには継続こそが最も重要だと著者が気付いていたからこその行動です。結果、彼は独学開始から約1年後には、世界最大級のオークションサイト『eBay』でのキャリアをつかみました。この意志の強さ、徹底して取り組む姿勢には学ぶ点が多いと感じています」
他にも原著者の行動から学ぶべき点は多い。例えば、情報サイトを通じて仕事を得るにはプログラマーとしての評価を高めることが重要だと悟ると、評価を上積みするため、友人に働きかけて仕事を発注してもらい実績を積む。地道な努力をいとわない姿勢などもその一つだ。
「著者が持つ『世の中が評価や実績を重視するのであれば、それに合わせるのが目標達成の近道だ』と割り切る姿勢には潔さを感じます。こうしたエピソードの数々は、未経験からでも最短で職業プログラマーになる、という彼の思いの強さを感じられるものだと思います」
独学の落とし穴から脱する「アウトプットの習慣化」と「程良い距離感」
一方で、独学にも弱点はある。その一つが、思い込みによる誤解や間違いを修正する機会が少なくなってしまうことだ。
「独学ゆえに、間違った思い込みを誰かに正してもらえる機会はほぼありません。よって本書では、困った時には技術コミュニティーなどに助けを求めるよう説いています。独学とは、特定の教師が存在しないこと。独りぼっちで学ぶだけが独学ではないのです。一人で抱え込まず、他者と交流する機会を自ら作り出すことも独学を成功させる大事なポイントだと思います」
他にも、無自覚な思い込みを発見して解消する方法もある。自身の経験から清水川氏は次のように続ける。
「学んだことやそのときどきの自分の考えや行動を、ブログなどに書き残す習慣を持つのがお勧めです。アウトプットするためには質の高いインプットが必要になるため、熱心に勉強するでしょうし、間違ったことを書いたとしても指摘してくれる人がいるかもしれません。学んだ内容を率先して人に教えたり、説明したりするのも効果的ですね。人に教える立場に立つことで、はじめて自分の理解が浅かったことに気づくこともありますよ」
ITの世界の移り変わりは激しく、プログラマーの双肩には、常にその変化に適応し、時に自ら生み出さなくてはならないというプレッシャーがのしかかっている。最後に、プログラミングの楽しさを忘れないためにも、セルフマネジメントのスキルを磨いてほしいと清水川氏は言った。
「好きで始めたプログラミングであっても、長く続けているとつらくなってしまうこともある。本の中でもプログラミング学習を継続するコツをいくつか紹介していますが、これはセルフマネジメントの知恵とも言えるでしょう。私自身、プログラミングの楽しさに魅入られてこの業界に身を置き続けていますが、業務の合間や繁忙期の後などには、一度仕事から離れてみたりもします。何事も、楽しんで継続できるペースを見つけていってほしいですね」
取材・文/武田敏則(グレタケ) 撮影/吉永和久
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