●(歌記号)1から10まで君次第/存在するだけで影響与えてるインフルエンサー……。アイドルグループ、乃木坂46の歌「インフルエンサー」にこんな一節がある。男子の恋心を描いたようにも、ファンから芸能人への片思いにも読める。昨年は日本レコード大賞にも選ばれた。
▼インフルエンサーを直訳すれば影響力のある人だ。本来は見識やセンスに優れ、支持者の多い政治家や知識人、タレントらの役回りだったろう。ネットの普及で無名の人が短期間にそう呼ばれる例が増えた。化粧の巧みな女性が手腕を公開し、熱心な閲覧者を獲得。おじさん世代の知らないインフルエンサーの誕生となる。
▼ネット上の固定読者をフォロワーと呼び、多いほど「この商品を宣伝してください」という依頼も増える。影響力を測る物差しというわけだが、そのフォロワーが売買されている実態も知られるようになってきた。架空の会員を作ったり、新興国で会員を集めたりして、人気を水増ししたい向きにまとめて売り込むそうだ。
▼広告業界の知り合いによれば、企業は水増し分も織り込んで宣伝費を投入しているという。この種の行為を詐欺として禁じる米国では「フォロワー工場」と呼ばれる偽造会社の摘発が報じられている。存在するだけで自然に影響を与える。そんな本来の姿とはかけ離れた偽インフルエンサーの跋扈(ばっこ)はいつまで続くのだろう。