丹羽宇一郎選、沖縄戦の悲劇を知る「この1冊」

「怒りに身が震え、涙が止まらなかった」

沖縄戦で亡くなった20万人あまりの名前が刻まれる平和の礎(画像:jimsy / PIXTA)
戦争の大問題』の著書がある元中国大使、元伊藤忠商事社長の丹羽宇一郎氏が、講演で地方に行ったとき、1冊の本を紹介された。
帰路、その本を読み、数年ぶりに怒りに震え、そして涙が止まらなくなったという。沖縄戦での民間人の悲劇をテーマにした本だ。
今日、3月26日は沖縄戦が始まった日である。県民の5人に1人が亡くなった悲劇を二度と繰り返さないために、日本人が知っておくべきことを語ってもらった。

国民が国を守っても、国は国民を守らない

何年かぶりに怒りで身の震える思いに包まれた。怒りの次には涙が止まらなくなった。

『一九四五年 チムグリサ沖縄』(さきがけ文庫)書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします

先日、秋田県に出張した折に同地の方から薦められて『一九四五年 チムグリサ沖縄』(秋田魁新報社)を読んだときのことだった。チムグリサとは、沖縄の言葉で「ああ、哀れだなあ」と相手の立場に立って嘆くという意味だ。

同書は、著者の大城貞俊氏が長年にわたって取材してきた、沖縄の戦争体験者の「聞き書き」をもとにつくられた短編小説集である。

大城貞俊氏は、本作品で2017年に秋田魁新報社が主催する第34回「さきがけ文学賞」を受賞している。

同氏には、沖縄戦の体験者から聞き書きした話をまとめたノンフィクション、『奪われた物語』(沖縄タイムス社)という著作もある。いずれも沖縄戦の犠牲者たちの真実を追求した労作だ。
『一九四五年 チムグリサ沖縄』には、戦渦に巻き込まれ、逃げ場を失った沖縄の人々の嘆き、悲しみ、苦しみ、怒り、無念、悔恨、そして絶望が市井の人々の当時の言葉でつづられている。

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  • NO NAMEd02d924b68ee
    降伏なんて簡単に口に出来るのは、今の時代に生きて来たから。
    世界の大半を白人列強諸国が支配し、資源の利権を抑え、白人列強諸国同士以外では国家平等も人種平等も建前ですら国際社会では通らない、という状況であったことを考慮せずに降伏しなかったことを批判しても意味はない。

    そもそも総合商社が戦後発展することが出来たのは、日本が無謀な暴発をすることにより世界秩序が一新された恩恵を受けたからだろう。あの戦争抜きで、人種平等や国家平等や自由貿易の建前を唱えられる世界をどうやって構築出来たというのか?
    日本の対中対米開戦の判断が正しかったとまでは断言しないが、伊藤忠のトップに立った人ならばそういうことを真剣に考えるべきではないか。

    あと、どんなに実体験を元にしていようが、小説は小説。ドキュメンタリーではない。
    小説をベースに歴史上の人物や組織を裁くのは如何なものかと思う。
    up20
    down19
    2018/3/26 12:21
  • NO NAME90a553c14212
    下手したら米ソに分割統治された挙げ句、
    西側と東側の戦場になった可能性もあった。
    分割統治を免れアメリカが反共の橋頭堡として優遇してくれる
    歴史を知ってるからこそ「俺様なら速攻で降伏を決断したね」と
    エラソーなことが言えるのだ
    up21
    down21
    2018/3/26 11:22
  • NO NAMEa822d0f3d03c
    確かに過去も現在も沖縄を痛めつけているのは日本と米国。このままでは、いずれ、中国と付き合うほうがまし、と独立して米軍基地に出て行ってもらい、豊かになった中国から観光客や産業を呼びこむことを目指すことになるかもしれない。中国も武力侵攻などばかなことはせず、沖縄の民意を利用するほうがはるかに効率よく自らの影響力を増すことができると考えているだろう。日本政府は、安倍お友達向けの特区などやめて、沖縄を全県特区に指定して、消費税免除、自然保護以外の規制緩和など県民にメリットのある優遇策を実施していかないと、そのうち本当に中国にとられると思う。
    up9
    down13
    2018/3/26 12:49
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