鈴木大介さんの現代ビジネスでの連載をまとめた『されど愛しきお妻様』。刊行を記念して成毛眞さんと対談が行われました。
成毛さんの著書『発達障害は最強の武器である』(SB新書)を目にしたとき、「それは不自由が重い当事者に対して、あまりに残酷なタイトルでは?」と思ったという鈴木さん。ところが読んでみると「発達障害を矯正するのではなく、社会の仕組みを合わせたほうが経済的な損失が少ない」という共通の思いを見つけ……。
ご自身をはじめ、周囲も同じような高IQ発達障害傾向脳が多いという成毛さんと、マクロ視点での発達障害と教育、経済との関係について語ります。
成毛 『されど愛しきお妻様』、読ませていただきました。つらくて、しっかりは読めませんでしたけど。僕ね、つらい体験をした人や、同情せざるえない人の本は読めないんですよ。はげしく落ち込んでしまう。ご本人はそんなつもりで書いているんじゃないのはわかっているんですが、お妻様の脳腫瘍に鈴木さんの脳梗塞にと、それだけでもう大変で……今おいくつでしたっけ?
鈴木 44才です。
成毛 まだ若いですよね、普通の夫婦なら経験することのない病歴……!
鈴木 そこですか! その反応初めていただきました(笑)。 でも、うちは病気していなかったら家庭が破綻してたかもしれないので、その点ではラッキーだと思ってます。
成毛 そうですよね。一方で普通に病気という意味では、大変だなって思うがゆえに、うーん。
鈴木 それは確かに、妻の病気もまあ心配ですし……実は大変だったんです!(笑)
成毛 いやあ、大変ですよ。経済的にはもちろん、初めてパートナーの大きな病気を経験して、さらに自分まで病気してって続くと、普通なら破綻の原因になりかねませんよ。細かいディテールだけなら、例えば、お皿投げるだけならやる家庭もやらない家庭もあるし。障害があってもなくても。
ビル・ゲイツもミーティング中にコーヒーカップ投げてましたし、だからそっちは意外と大したことないなって思いましたけど。
鈴木 僕の場合、過去にどうしても家事をしてくれない妻の前でお皿を投げたのは、衝動性ではなく我慢ができなかっただけで、そしてお皿を投げられることは妻にとっては殴られることよりも痛いと思うのですごく反省しているんです。それにしても、ビル・ゲイツがモノを投げている環境で平然と働けてしまうのがすごいですよね。ビビっちゃいません?
成毛 昔のマイクロソフトのアメリカ本社の幹部連中って、やっぱりなんかおかしかったんですよ。まだパソコンが発売される前、半導体チップしかなかった時代で、ビル・ゲイツもジョブズもこんなにパソコンが売れるとも、ましてやスマホが出てくるなんて想像もしてなかった。アキバで部品を集めて短波受信機をつくってる、アマチュア無線の延長みたいな感じ。
だから、そういう会社に嬉々として入った連中って、やっぱりね(笑)。食い詰めていたわけでも、大手のコンピューター会社に勤めていたわけでもなく、みんな20才前半で。だから普通じゃないし、普通じゃない人にも慣れているんですよね。ビル・ゲイツだって、何だろう、怒って投げているわけじゃないんですよ。投げようと思って投げている感じ。自分を第三者として見ている感じですよ、あの人は。
鈴木 表現手段のひとつとしてモノを投げている?
成毛 いちばん短いメッセージで済むからじゃないですかね。論理的に考えて投げるのが一番、簡単で手っ取り早いと思ってるイメージ。いや、もちろんカッとなっているんでしょうけど、本人はちゃんと理屈付けてやっている可能性がすごく高いです。
鈴木 説明がつくわけですね。