落としたい汚れに効く洗剤を知ろう
これまで、家の中のさまざまな場所で、汚れには菌やウイルスが繁殖しており、この汚れを効果的に落とすことは感染症対策としても大変重要だということをお伝えしてきました。ここで改めて、住宅用洗剤の種類と、それぞれにどんな特徴があり、どんな汚れに有効かをおさらいしてみましょう。
いわゆる「洗剤」と呼ばれるものを液性別に大きく分けると、中性、酸性、アルカリ性の3種類があり、それぞれ落とせる汚れが異なります。
中性洗剤は手肌に優しい一方、洗浄力が弱いので、 日常の掃除用として使いましょう。pH6〜8の洗剤が中性洗剤にあたります。
酸性洗剤は、 水あか・石鹸カス・トイレの黄ばみを落とすのに適しており、pH3〜5.9の弱酸性洗剤や、pH3未満の酸性洗剤が市販されています。弱酸性洗剤よりも酸性洗剤のほうが汚れがよく落ちるため、頑固な汚れを落とすのにおすすめです。
市販の洗剤は「トイレ用」「お風呂用」などとして売られていますが、同じ酸性洗剤であれば、トイレ用をお風呂の水あか掃除に使っても問題ありません。汚れの種類と洗剤の液性で相性を組み合わせれば、使い回しができて経済的です。
ただし、酸性洗剤は強力なため、ステンレスや人工大理石などに長時間浸透させると変色したり、大理石では溶解する恐れがあるため、これらへの使用は避けてください。
アルカリ性洗剤は、油汚れや皮脂汚れに適しています。pH8.1〜11の弱アルカリ性洗剤は、手あかやフローリングの足跡にスプレーしてからなじませ、乾いたマイクロファイバーのクロスやモップ、雑巾などでスタンプを押すように拭き取るとよく落ちます。一方、 pH11.1〜14のアルカリ性洗剤はキッチンのしつこい油汚れを落とすときに便利です。アルカリ性洗剤を使用するときは、手荒れ防止のため手袋をしてください。
洗剤には、界面活性剤の力を補助する目的で、「キレート剤(金属封鎖剤)」や「溶剤」などが含まれているものもあります。
キレート剤は、界面活性剤の作用を邪魔する水中の金属イオンと反応して、界面活性剤の働きを助ける役割があり、主に水回りに使用する中性洗剤に配合されています。
水回りの汚れに関しては、このキレート剤が含まれているほうが汚れがよく落ちるので、値段だけで購入を決めず、成分をよく確認してください。
一方、溶剤とはアルコールやアセトンなどの油を溶かす揮発性の成分のこと。キッチンの頑固な油汚れを落とす際は、溶剤入りのアルカリ性洗剤を用いるのがおすすめです。
また、カビの除去には、一般的に専用のカビとり剤を使う方が多いかと思いますが、その成分は塩素系漂白剤にも含まれる「次亜塩素酸ナトリウム」で、カビ菌の細胞そのものを分解させて除去しています。そのため、同成分が含まれるキッチン用の塩素系漂白剤などを使っても、カビを落とすことができます。
なお、塩素系漂白剤と酸性洗剤を混ぜると非常に有毒な塩素ガスが発生します。決して混ぜてはいけませんし、両者を同時に同じところに使用することも決してしないでください。
洗剤が効果を発揮するには時間が必要
続いては、洗剤の使い方についてです。
たとえば、トイレ掃除。便器につけた洗剤を、ブラシでゴシゴシこすっても、いっこうに尿跳ね汚れがきれいにならない。そんな経験はありませんか?
その原因は、洗剤をつけてからこすりはじめるまでの「時間」です。洗剤が汚れを分解するには、まずは洗剤を汚れに浸透させる時間が必要なのです。
ではどれくらいの間、洗剤をつけておけばよいのでしょうか? 正解は、どんな汚れでも、最低3分。 汚れがひどい場合は30分〜1時間です。洗剤が本領を発揮するには、思いのほか時間がかかるのです。
しかし、その効果は確かです。たとえばキッチンの頑固な油汚れの場合、アルカリ性洗剤をつけて1時間ほど放置すると、力を入れずに簡単に落とすことができます。
トイレの便器は、酸性洗剤をまんべんなくなじませ、3分してからこすればスッキリです。
洗剤をつける前には、洗剤が浸透しやすいよう、古い歯ブラシなどで最初に少し汚れをこすり、汚れの表面に傷をつけておくとさらに効果的です。
このように、洗剤をつけてからすぐにゴシゴシするよりも、時間を置いてからお掃除したほうが、格段にラクしてきれいにできるのです。最近、汚れに長くとどまっていられるような、ドロドロした増粘タイプの洗剤が増えてきたのにも、こういった理由があるからなのです。
細菌などの栄養源になり、繁殖の原因となる汚れは、正しい洗剤を選び、賢く使うことで、すっきりきれいに落としましょう。
●まとめ●アルカリ性洗剤は油汚れや皮脂汚れに、酸性洗剤は水あかや石鹸カス、トイレの黄ばみに、塩素系漂白剤はカビ落としに効果的
(イラスト/石山沙蘭)