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「イチゴ論争」の教訓 |
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[Write date] 2018-03-21 오전 10:58:20
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平昌冬季オリンピックで、日本のカーリング女子選手が韓国産イチゴをほめたことを発端にした両国のイチゴ論争には、大切な教訓があると思っている。
農業の専門紙記者だった2000年代前半、私は日本の農産物の育成品種が海外に持ち出され、安い価格で日本に逆輸入される問題の取材にのめり込んでいた。
例えば、当時韓国で最もシェアが高かった「レッドパール」というイチゴ品種は、日本の愛媛県の生産者が育成したもの。この育成者は1995年頃、韓国の一部農家に苗を譲渡し、限定的に生産を認める許諾契約を結んだ。ただ契約は守られず、レッドパールはその後、韓国内に限りになく広がった。
一方、品種開発者の権利を一定期間守る韓国の「種子産業法」で、イチゴが対象になるのは2012年と遅かった。日本の育成者が韓国内で品種登録しようとしてもできない状態が続き、レッドパールなどは08年までに特許期間(25年)が終了、誰でも自由に作れるようになった。韓国農林部(当時)に取材した際(03年6月)、「04年にはイチゴを法対象とする」との回答をもらったことがあるが、結局は12年にずれ込んだ。
私は、日本品種が韓国で品種登録されると、生産者に金銭的な負担が新たに生じる恐れがあるため、そのような「保護措置」をとったと考えている。韓国内では合法だが、日本からすると脱法的に見える。これが、日本側からの批判の根幹にある点だ。
この課題を解決するため、韓国の研究機関や生産者が長年努力し、日本品種をベースに新品種を開発し、大きく生産量も伸ばしてきたことはよく分かっている。旬のこの時期、市場やスーパーで山盛りになったイチゴや、あっちこっちのカフェでイチゴをふんだんに使ったスイーツを見るたびに、高品質のイチゴを日本よりも安く、たくさん食べられる韓国の日常をうらやましくも思える。
ただ、韓国側が「違法じゃないのだから、日本は文句を言うな」となれば、両国の対立は一生続く。韓国の優良イチゴ品種が法整備の遅れた国に流出し、似た問題が起きれば、韓国の人は怒らないだろうか。植物に限らず、特許権の保護はどの産業分野でも重要なテーマだろう。
仮に「日本品種は、韓国のイチゴ産業に貢献しました」と言われれば、日本側も「まずは韓国のイチゴ産業の発展に敬意を表します」と、対立を緩和する一歩となり得る。歴史問題でもそうだ。日本が過去の歴史に向き合おうとしなければ、韓国側から大きな反発は当然起きるだろう。
釜山駐在となってまもなく1年。この間に学んだのは、両国が互いに批判だけするのではなく、「自分の悪いところ」「相手の良いところ」を認めて発信する勇気が必要だということだ。今月末で駐在を終えて帰国となるが、その教訓を大切に両国関係の取材を続けていきたいと思っている。(終わり) 西日本新聞釜山駐在記者=竹次稔 |
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