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思っていたような仕事ができなかった
ただし、異業種ならではの壁にぶつかる人も少なくないようだ。自動車業界の場合、「ソフトウエアは注目されてはいるが、会社全体ではまだ少数派」(所氏)。ハードウエア中心の文化の中でソフトウエア部門の存在感を高めるのに苦労するケースがあるという。
リクルートキャリアの内堀氏は「デジタル事業を新規に始めるというユーザー企業に転職したITエンジニアから、戸惑いの声を聞くことがある」と明かす。AIを導入する、IoT化を進めるなど華やかなビジョンを掲げてはいるものの、「具体的には何も決まっていない」という企業が少なくない。社内調整や細かなルール作りから始める必要があり、転職前に思い描いていたような仕事ができない。社内手続きにも時間が掛かり、ネット企業から転職した人にはスピード感の違いに愕然とする人もいるという。
ミスマッチを防ぐには、ITに対する経営層の認識を確認することが重要だ。「経営層がITを理解していないから他社に移りたい、というエンジニアはとても多い。入社前に、その点はきちんと確認した方がいい」(内堀氏)。自動車業界を担当する所氏も「役員クラスがITの重要性を認識しているかは、転職者の定着性に影響する」と話す。
企業の選考を受ける立場である転職希望者にとって、面接などの場で経営トップのITへの理解度を問うことはハードルが高かった。だが最近は、その状況も変わってきているという。「まず、採用側が自分たちの自己紹介から始めるようになっている。高圧的な面接はなくなっている」(所氏)。ロバート・ウォルターズ・ジャパンの安藤氏も「一次面接は、採用側と転職希望者側が互いを面接する場になっている」と話す。
今、まさに引く手あまたのITエンジニア。だからこそ、転職先を選ぶ力、見極める力がこれまで以上に重要になっているといえそうだ。