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 今回流出したNEMは、ビットコインと同じくトラストレスの世界にある。信頼できる中央機関はなく、国家権力を含めて何者も情報を恣意的に書き換えることはできないという建前だ。今回のNEMの問題は、トラストレスな世界は両刃の剣であることを浮き彫りにした。

 では、仮想通貨という異質な存在を国家は適切に制御できるのだろうか。つまり、トラストとトラストレスが共存するなかで、利点を生かしつつ欠点を補えるのだろうか。この新たな命題に向き合うためには、国際的な規制対応も含めて関係者が知恵を絞っていくことが必要となるだろう。2018年3月、アルゼンチンで開催されるG20の財務相・中央銀行総裁会議では、ビットコインなど仮想通貨が議題に上った。ただ、議論はそこでは終わらないだろう。

 2019年には大阪でG20首脳会議が開催される予定だ。その場にも、仮想通貨を巡る議論は引き継がれていくことになりそうだ。我が国は、仮想通貨の規制監督にかかるこれまでの貴重な経験を生かし、ぜひ国際的な議論をリードしていくことを期待している。