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 マイクロソフトは現在、毎年数エクサバイト(数千ペタバイト)もの容量のフラッシュメモリーを調達し、自社データセンターで利用している。マイクロソフトはフラッシュストレージ用のハードウエアも自社で開発してOCPで仕様を公開済みだ。「M.2」規格の小型SSDを大量に搭載できるサーバーで、SSDはホットプラグ(稼働中に挿抜)できる(写真5)。

写真5●マイクロソフトが開発したフラッシュストレージ用のサーバー
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 しかしこれまでは、SSDのファームウエアはメーカーによって仕様がバラバラであり、SSDの機能もメーカーによって大きな違いがあった。そのためこれまでは、マイクロソフトは自社でフラッシュストレージを実現するに当たって、SSDごとに最適化を強いられてきたという。

専用SoCやFPGAでフラッシュストレージを高速化

 マイクロソフトが発表したProject Denaliは、メーカーによって異なるSSDファームウエアの仕様を統一するものだ。Project Denaliではさらに、これまでSSDファームウエアが担ってきた役割を、サーバー(ホスト)側に移す。これによって、SSDメーカー以外の企業がSSDの機能を自由にカスタマイズできるようにする。

 OCP U.S. Summit 2018の基調講演に立ったマイクロソフトのクシャグラ・ヴァイド(Kushagra Vaid)氏は、「Project Denaliは、クラウドのデータセンターに最適化したSSDを我々の手によって実現するための仕様だ」と説明している。

 具体的には、現在はSSDファームウエアが担っている「電源管理」「メディア管理」「バッドブロック管理」「ウエアレベリング(書き換え回数を平準化する仕組み)」「ガベージコレクション」「アドレスマッピング」の6個の機能の内、後者の3個をホスト側に移す。さらにホスト側に移した機能をSoC(Systems on a Chip)やFPGAにオフロードし、高速処理できるようにもする(写真6)。

写真6●「Project Denali」の詳細
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 マイクロソフトとしては、SSDファームウエアの担う機能を減らすことで、SSDの単価を引き下げる狙いがある。また「ウエアレベリング」「ガベージコレクション」「アドレスマッピング」を高速化するSoCがあれば、ホワイトボックスのサーバーと安価なSSDの組み合わせで、高性能なフラッシュストレージを実現できるようになる。このようなフラッシュストレージ用SoCは、半導体スタートアップのCNEX Labsが開発中だ。

ハイエンドストレージもホワイトボックスになる

 ネットワーク機器でホワイトボックス化が進んでいる背景には、半導体メーカーが販売する「マーチャントシリコン」のスイッチングASIC(パケットやフレームを処理する半導体)が高性能になり、マーチャントシリコンだけでハイエンドのネットワークスイッチを実現できるようになったことがあった。

 今後はネットワーク機器の世界で起きたのと同じ事が、フラッシュストレージの世界で起きる可能性が高い。これまではハイエンドのフラッシュストレージを実現するためには、高性能なSSDファームウエアを開発したり、ストレージメーカーがASICを内製したりする必要があった。Project Denaliや、Project Denaliに対応したストレージ用SoCが登場することで、ハイエンドのフラッシュストレージをホワイトボックスで実現できるようになれば、フラッシュストレージのホワイトボックス化が加速することになりそうだ。