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 高価なメーカー製機器が主流だった大型ネットワークスイッチやフラッシュストレージの分野にも「ホワイトボックス」の波が広がっている。米シリコンバレーで2018年3月20、21日(米国時間)に開催された「OCP U.S. Summit 2018」では、大型スイッチやストレージに関するオープンソースのハードウエア仕様が相次ぎ発表された。

 OCP U.S. Summitは米フェイスブック(Facebook)が主導して2011年に誕生した「Open Compute Project(OCP)」の年次会合だ。OCPはデータセンターで使用するサーバーやストレージ、ネットワーク機器、ラック、空冷装置などのハードウエアの仕様や設計図をオープンソースとして開発・公開している。

 近年サーバーの世界では、巨大クラウド事業者がODM(相手先ブランド設計製造業者)からサーバーを直接調達する動きが進んでいる。米国の調査会社IDCが2018年2月28日に発表した2017年第4四半期の世界サーバー市場動向調査では、クラウド事業者などがODMから直接調達したことを示す「ODMダイレクト」の市場シェアが、金額ベースで20.6%、数量ベースでは23.0%にも達した。OCPはこうした動きを巨大クラウド事業者だけでなく、通信事業者や金融機関、一般企業にも広げようとしている。

 かつては米グーグル(Google)や米マイクロソフト(Microsoft)、フェイスブックのような自社でハードウエアを設計する企業でなければ、ODMからハードを調達できなかった。しかし現在は、フェイスブックやマイクロソフトなどが自社で開発したハードウエアの仕様や設計図を、OCPを通じてオープンソースとして公開している。そして台湾のODM事業者などがOCP仕様のホワイトボックス(メーカーのブランドがついていない)ハードの販売を始めている。OCPが登場することで、誰でもODMからホワイトボックスのハードウエアを調達できるようになった。

 そして今、サーバー市場を席巻したホワイトボックスの波が、大型ネットワークスイッチやフラッシュストレージにも広がっている。

データセンター間通信もホワイトボックス

 フェイスブックは3月20日に、データセンター間のトラフィックを制御するスイッチである「Fabric Aggregator」を発表した(写真1)。同社は2014年に、ToR(トップ・オブ・ラック)スイッチである「Wedge」とスイッチ用のネットワークOSである「FBOSS」をオープンソースとして公開して以来、より大型のネットワークスイッチの仕様を次々と公開している。

写真1●フェイスブックが発表した「Fabric Aggregator」
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 最初に発表したWedgeは40ギガビット/秒のポートを16個搭載する厚さ1UのToRスイッチだったが、2015年には「ファブリックネットワーク(多数のスイッチがメッシュ状に接続したネットワーク)」を構築するための大型スイッチ「6-pack」を公開。2016年には2代目のToRスイッチでポートが100ギガビット/秒となった「Wedge 100」や、2代目のファブリックネットワーク用スイッチである「Backpack」を公開している。

 そして今回、複数データセンターにまたがってファブリックネットワークを集約するスイッチとして、Fabric Aggregatorを公開した。これによっていよいよ、データセンター内ネットワークだけでなくデータセンター間ネットワークまで、ホワイトボックスのスイッチによって構築できるようになった。

 OCP U.S. Summit 2018の基調講演に登壇したフェイスブックのオマー・バルドナド(Omar Baldonado)氏は、同社のデータセンター網におけるネットワークトラフィックのトレンドとして、フェイスブックとインターネット間のトラフィックが横ばいで推移しているのに対して、フェイスブックの社内ネットワークのトラフィックが近年急増していると述べた(写真2)。「Hadoop」のような分散データ処理ソフトウエアが台頭することによって、サーバー間での通信が増加しているためだ。

写真2●フェイスブックにおけるネットワークトラフィックの増加トレンド
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