「モブ子の恋」という漫画をご存知だろうか。
田村茜さんが月刊コミックゼノンで好評連載中のこの漫画は、20年間、ずっと片隅で“脇役”として過ごしてきた田中信子(通称:モブ子)に芽生えた初々しく爽やかな恋を描いたお話である。
じわじわと人気拡大中のモブ子の恋のオススメポイントをまずご覧いただきたい。
「モブ子の恋」ってどんなお話?
20年間、世界の脇役として生きてきた田中信子(通称:モブ子)に芽生えた、初めての恋心を描くお話。
バイト先の同僚「入江君」との、ささやかな恋物語は、ゆっくりゆらゆらと進んでいきます・・・!
モブ子の恋のオススメポイント
1.田中さんへの感情移入がエグい。
世界の隅っこでささやかに生きてきた田中さん。そんな彼女の「モブ子の習性」に共感する人は多いはず・・・!
生きづらさや、ついついやっちゃうダメな癖などがある人ほど共感できると思います!
2.入江くんがかっこいい!
眼鏡男子の入江君は、普通の少女マンガに出てくる男の子のように、スポーツが得意な訳でも、活発な訳でもありません。だけど、人が困っているときにスッと助けてくれる。よく気がつく人です。
なかなか行動できない田中さんと反対なようで、読み進めていくと実はよく似ていることがわかってきます。
3.悪い人がいない。
ふたりの脇を固めるキャラクターは、みんな基本的にいい人ばかりです。ライバルとの駆け引きはありません。
この漫画には「人気者の男の子に急接近」もなければ「突然の急病」も「イベントでの奇跡」も「ライバルとの戦い」も「他の男の子に言い寄られるハーレム展開」もありません。
王道女性向け漫画に必要な要素が何一つないようで、読んで見れば、「恋の素晴らしさ」を真正面から描いた王道漫画になっています!・・・すごい!
4.双方向からのザッピングストーリー
第2巻からは入江君目線のお話も入ってきます。初恋同士のふたりの頑張りに、キュンキュン必至です!
モブ子の恋の裏テーマ
モブ子の恋のテーマは「脇役の恋物語」だけじゃないんです!実はこんな裏テーマが・・・
ドキドキの大きさに、主役も脇役も関係ない。
これは1巻のリード文にもなっています。
自分が美少女じゃなくたって、相手がクラスの人気者じゃなくったって、ライバルなんていなくたって、物理的な障害なんてなくたって、恋はドキドキするもの。
少女漫画の主役が感じるドキドキと、私達脇役が感じるドキドキの大きさに違いなんてないはず。
恋をする時、人は脇役のままではいられない。
この言葉は、連載初期からずっと大事にしてきた言葉です。
人は、恋をしなければ脇役のまま生きていけると思うのです。
しかし、恋をしてしまったら、そしてその恋を成就させようと思ったら、「嫌われるかも」「変に思われるかも」という不安を胸に、勇気を出さなければならない場面が沢山あります。
恋が成就したあとだって、相手のために、言葉にするのが恥ずかしいような思いを伝えたり、ロマンチックな場所に行ったり、頑張らなければいけない場面はなくなりません。
でも、そんな努力が、勇気が、恋をもっと尊いものにするような気がするのです。
担当編集である私の恋は先日唐突に終わってしまいましたが、「モブ子の恋」は終わりません。応援してくれる人達がいる限り・・・!
長文失礼しました・・・!
もうお気付きでしょうか。この紹介文、実はモブ子の恋の担当さんが考えた文章なんです。愛がすごい・・・!
この愛のこもった紹介に対して思うことがあり、今回許可を取って記事にさせてもらいました。
面白い漫画には楽しむための下地がある
ある漫画(というかあらゆるコンテンツ全般)に対して面白い/面白くないと意見が分かれることがあります。
意見が分かれる理由は単純に自分の好みに合わないという場合ももちろんあります。
しかし、面白くないと感じる理由の一つに楽しみ方がわからないという場合があります。
これは思い返せばそうかもと思うのですが、その物事に触れたときは感覚的にしか理解できていないことが多く、とても厄介な一方で無限の可能性が眠る宝の山でもあると私は考えるのです。
例えば小学生にいきなり因数分解を解けと言われても「これが何を意味しているのかわからない=面白くない」とほとんどの子は思うはずです。
同様に、ひっそりと生きる地味な女の子の初恋を描いた漫画が面白いと言われても付き合って三日で彼氏のことを彼ピとか旦那呼ばわりするウェイ系女子にとってはピンとこないかもしれません。
ただこうした人たちは、理解できないから面白くないと思うのであって、解き方/楽しみ方を理解すれば楽しい・面白いと思う可能性を大いに秘めています。
そんな人たちが面白くないと思いこんだままでいるのか、それとも面白さに気付き、こちらの世界に歩み寄ってくれるのかは楽しさを教えてくれる人の存在が何よりも必要不可欠です。
こうしたポジティブな感想はどこが楽しかったか理解できている人たちで非常にパワーを持っています。その究極完全体がモブ子の恋の担当さんである。
どう読めばいいのか、どういった視点で楽しめばいいのか非常にわかりやすい文章で紹介されていて、私自身雑誌でサラッと読んでいたときに感じた、悪くはないが読んだ人にしか届かないのではないかという危惧を見事に払拭する愛の波動を感じました。
ドキドキの大きさに、主役も脇役も関係ない。という裏テーマを知ればウェイ系女子さんだって「うちらと同じじゃん」と親近感を持って楽しめるし、「恋の素晴らしさ」を真正面から描いた王道漫画と分かればみんなが知っているような少女漫画しか読んでいない人にも勧めることができます。
普段はひっそりと生きていても恋をする時には行動を起こせる人物だと知れば見方を変えてくる可能性は大いにあります。
モブ子の恋の担当さんの作品紹介は読者を前向きな方向に向き合わせてくれるとても良い文章です。
すでに『モブ子の恋』を読んだ人も今まで意識してなかった楽しみ方がきっとあると思います。
そしてこれから『モブ子の恋』を読む人にとっては、この紹介文を読むことで楽しみ方がわかるため、素敵な漫画として記憶に残るはず。
自分が推している作品にこんな楽しみ方を教えてくれる紹介ができれば同じ方向を向いてくれる人は間違いなく増えます。もし何か大好きな作品を見つけて誰かに布教したいと思ったときモブ子の恋の担当さんの文章はとても参考になると思います。
「愛は地球を救う」という言葉は綺麗ごとなんだけど、漫画の世界ぐらいは綺麗でもいいんじゃないかな。心を込めた思いというのは必ず誰かに響きます。
編集という仕事は何かと気苦労絶えない日々だと思いますが、担当さんは自信をもって作品づくりに取り組んでください。愛のある作品は絶対生き残ります。
今後の活躍(とまた新しく恋が始まること)を陰ながら応援しています。
モブ子の恋、オススメの漫画です。
おわりに
漫画業界は今転換期を迎えており、おそらく5年後、10年後の漫画業界のスタンダードは今とはまるで違っていると思います。
そんな中で編集者不要論なんてものがときおり囁かれますが私は必要な存在だと思っています。
面白い漫画の陰には必ず優れた編集者が存在します。それは作品をよりよくするために知恵を授けることであったり、効果的な宣伝であったり、作家の管理であったり優れた部分は大小さまざまです。
そうした能力は後天的に習得できるので今回は置いておいて、私は担当編集者は作者に次いで作品の一番の理解者であって欲しいと願っています。そして商業である以上、常に読者を向いていて欲しいです。
自分は馬鹿だからわかんないけど新しいマネタイズの仕組みをなんとか生み出して、これから50年、100年先も優秀な編集者と漫画家が共栄し続ける方法を模索する、それぐらい出版社には優秀な人が集まっているはずです。
完璧な作家なんていないし、同様に完璧な編集も読者なんて存在しません。各々が補完しあって良い漫画が生まれると思っています。漫画という文化を面白いと思うなら、どうか正しい方向を向き続けてください。
今回はこの辺で、それではまた。