Number Theory の話題(Repunit Number と Zsigmondy’s Theorem)

今回も引き続き「Zsigmondy’s Theorem」(ジグモンディの定理)を取り上げます。

前回はジグモンディの定理の内容とその応用例についてご紹介しました。今回の主役は次の数列です。

『レピュニット数(Repunit Number)』

すべての桁が1である自然数を「レピュニット数」という。
特にここではレピュニット数列{Rn}

Rn=111111n

と定めることにする。

見慣れない数かもしれませんが、電卓で最も遊ばれやすい数の一つと言えるのではないでしょうか(笑)。余談ですが、「レピュニット」というのは(英語圏の)造語で、1が繰り返すことから、

repeat“+”unit“=”repunit

というのが名前の由来です。

このレピュニット数は面白い性質を持っています。例えば、以下の等式を見て下さい。

1111111112=12345678987654321
割と有名な等式かもしれませんが、次の式のリストを見ると何だか神秘的にすら思われます。

12=1
112=121
1112=12321
11112=1234321
111112=123454321
1111112=12345654321
11111112=1234567654321
111111112=123456787654321
1111111112=12345678987654321


さて、このレピュニット数を小さい順から並べた数列を「レピュニット数列」と名付けて調べてみます。まず一般項は次のようになります。

(1.1)Rn=10n19
漸化式は
(1.2)Rn+1=10Rn+1
となります。一応、2進法や3進法でもレピュニット数を考えることはできますが、ここでは10進法(10を基底としたレピュニット)で考えます。

横道に逸れますが、偶数個の1からなるレピュニット数について、以下の等式が成立します。

6252=11
562452=1111
55624452=111111
5556244452=11111111
555562444452=1111111111
55555624444452=111111111111

    

これは偶然という訳ではなく、

     (5Rn+1)2(4Rn+1)2=(25Rn2+10Rn+1)(16Rn2+8Rn+1)=9Rn2+2Rn=Rn(9Rn+2)=Rn(910n19+2) ((1.1))=Rn(10n+1)=R2n
という関係が背景にあります。10n+1 という数は n1 個の01で挟んだ見た目をした数ですから、これにRnを乗じればR2nになることは明白ですね。


レピュニット数Rnは以下のような性質を持ちます。

AmnRmRn

Bmnが互いに素 RmRnが互いに素

これらの性質は以下の(ほぼ自明な)関係式により導かれます。

(1.3)RM+N=10MRN+RM
あとはユークリッドの互除法や帰納法により証明可能です。なお、レピュニット数列の隣接2項が互いに素であることは(B)の特別な場合に相当しますが、その証明は非常に易しく、漸化式すら使用しません。

また、レピュニット数には次のような性質もあります。

C2および5を除く任意の素数に対して、レピュニット数となるような倍数が存在する

この命題は次のように言い換えることができます。

C′)レピュニット数には2および5以外の任意の素数を素因数にもつものが存在する

これはいわゆる「鳩の巣論法」(「ディリクレの引き出し論法」とも)によって示すことができますし、フェルマーの小定理を知っていれば瞬殺です。

因みにこのレピュニット数列は入試問題の題材にもなっており、2008年の東大前期入試において出題されています。最近では駿台予備校主催の2017年第2回東大実戦模試で扱われたようです。(2008年の東大の問題は個人的にオススメです)


レピュニット数には他にも色々と面白い性質が存在するのですが、ここからは本題に移ろうと思います。

再掲になりますが、ジグモンディの定理とは以下のようなものでした。

『ジグモンディの定理(Zsigmondy’s Theorem)』

abが互いに素な整数で a>b であるとき、任意の正の整数nに対して、anbn を割り切るが akbk (1kn1) を割り切らないような素数(primitive prime divisor)が少なくとも1つ存在する。但し以下の例外を除く。

n=1 かつ ab=1 のとき
n=2 かつ a+b2の冪のとき
n=6 かつ a=2b=1 のとき

今回は和のバージョンは必要ありませんので割愛します。

ここで、以下にRnの素因数分解の結果を示します。上記の命題(A)~(C)がちゃんと成立しているのが理解して頂けると思います。


1:1
2:11
3:337
4:11101
5:41271
6:37111337
7:2394649
8:1173101137
9:3337333667
10:11412719091
11:21649513239
12:371113371019901
13:5379265371653
14:112394649909091
15:33137412712906161
16:1117731011375882353
17:20717235363222357
18:3371113193752579333667
19:1111111111111111111
20:11411012713541909127961
21:337432391933464910838689
22:1111234093877921649513239
23:11111111111111111111111
24:3711133773101137990199990001
25:412712140125601182521213001
26:1153798592653716531058313049
27:33337757333667440334654777631
28:11291012392814649909091121499449
29:319116763430376200377843839397
30:3711133137412112412712161 90912906161
31:2791694331957336415063790604359
32:1117731011373534496411409 698575882353
33:3376721649513239 1344628210313298373
34:11103401320717235363222357 21993833369
35:41712392714649123551 102598800232111471
36:33711131937101990152579333667 999999000001
37:2028119247629013 2212394296770203368013
38:11909090909090909091 1111111111111111111
39:3375379265371653 900900900900990990990991
40:1141731011372713541909127961 16763215964848081
41:831231538987 201763709900322803748657942361
42:3771113374312723919332689 464945969190909110838689
43:17315277911963506722254397 2140992015395526641
44:111123891014093877921649513239 10527889691056689261
45:333137412712386813336672906161 4185502830133110721
46:11471392531549797184491917 11111111111111111111111
47:35121409 316362908763458525001406154038726382279
48:37111317377310113799015882353 999900019999999900000001
49:2394649505885997 1976730144598190963568023014679333
50:1141251271505190912140125601 18252121300178875943472201
51:337613210631207172352986961 5363222357 13168164561429877
52:115379101521859265371653 10583130491900381976777332243781
53:10716594311325815267337711173 47198858799491425660200071
54:33371113193775752579333667 705419291475966169440334654777631
55:412711321216496292151323983251631 1300635692678058358830121


取り敢えずR55までの素因数分解の結果を列挙しました。察しの良い方ならお気付きでしょうが、色付きの数字は「新出の素因数」です。ここでRnの「新出の素因数」とは、Rnの素因数のうち、R2Rn1のそれぞれを素因数分解して得られる素因数のいずれにも該当しないようなものを指しています。上記のリストを見ると、どの項に対しても「新出の素因数」が存在することが予想できます。

「新出の素因数」と言えば”あの定理”がピンと来ますよね?

・・・そうです!この予想をジグモンディの定理を利用して解決してみましょう。


《証明》

Rn=10n19 であり、任意のnに対して 10n19の倍数であるから、常にRnは整数である。したがってRnの素因数は 10n1 の素因数から32を除いたものに一致する。ここでジグモンディの定理より、 10n1 には少なくとも一つの「primitive prime divisor」が存在するから、命題

Rn (n2)の任意の項に対して「新出の素因数」が存在する」

は真である。


非常にあっさりと解決してしまいました。ジグモンディの定理恐るべし・・・。

因みに、レピュニット数のうち素数となるものを「レピュニット素数」というのですが、R2R19R23R317R1031R49081R86453R109297R270343(この中には「確率的素数」も含まれる)と、かなり疎らに点在しています。2017年12月現在、レピュニット素数が出現する規則性や、無数に存在するか、などに関してはほとんど分かっていません(勿論、命題(A)や(B)を考えれば、Rnが素数となるのはnが素数の場合に限ることは直ぐに分かりますが・・・)。

もう少し「新出の素因数」について見ていきましょう。

nが素数のとき命題(B)により、Rnの素因数はすべて「新出の素因数」となります。そして3を除くすべての「新出の素因数」はみな一様にmodn1に合同、つまり新出の素因数をp (3)とすると

p10(modn)
が成立します。これは位数の性質により証明可能ですので、早速証明してみましょう。


《証明》

Rnの「新出の素因数」をpとする。p(2,5)についてフェルマーの小定理により

・・・(ア)10p11(modp)
となる。npを法としたときの10の「位数」であるから、ordp(10)=n と書ける。これと

10k1(modp)ordp(10)|k

という定理により、

・・・(イ)10k1(modp)n|k
が言える。
nは「位数」であるから、p1nが成り立つ。ここで k=p1 とすれば、より、
10p11(modp)n|p1
が言える。

これとより、レピュニット数Rnの「新出の素因数」をpとするとき、p1nで割り切れることが示された。


これは高校数学のレベルを超えていますが、位数の性質さえ押さえていれば、やっていることはごく単純です。フェルマーの小定理が、指数部分と剰余を繋ぐ重要な道具であることが、ここでも再認識できますね。

 

●   ●   ●   ●   ●

 

今回の話題はなかなか興味深いテーマだったのではないでしょうか?数年前から興味を持っていた内容なので、いつかまとめたいと思っていました。文字に起こすとあっさりとしてしまいますが、こういう数学的事実の発見(或いは再発見)というのは非常にワクワクさせるものなのです。皆さんにも何か面白いテーマにアタックして数学する楽しさを味わって欲しいと思います。

ところで、今回のレピュニットは 10n19 ですが、当然 5n146n15 などといった数列も同様に考察することができます。まだまだ興味が尽きませんね!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です