体中の痛みにだるさ、学校で倒れて歩くのも辛くなるーー。HPVワクチン接種後、そんな多様な症状を訴える娘のそばで、治療法を探して必死に奔走したのは母親でした。
回復した今、大学生のさくらさん(20代前半)は「家庭環境などのストレスが、ワクチン接種をきっかけに体の症状となって現れた」と振り返っていますが、お母さんの方はどう捉えているのでしょうか。
BuzzFeed Japan Medicalは、現在も全国のお母さんたちと連絡を取り合っているという母親のともこさん(仮名)にもお話を伺いました。
今は、同じように接種後の体調不良に苦しむ女の子の母親から相談を受けているというともこさん。
さくらさんに取材した前編:母の不安、無関心な父・・・『家庭環境のストレスが影響した』 HPVワクチン後の体調不良を振り返る
ホルモンバランス、ストレス・・・体調不良の原因は?
今思えば、娘はホルモンに体調が左右される子なんです。ワクチンの接種が様々な症状を引き起こす引き金になったと思いますが、接種前から生理前にはイライラしていたし、HPVワクチン後の体調不良から回復した後も生理痛がひどくなりピルを処方されています。
その後、動悸も訴えていましたが、注目して症状が悪化しちゃいけないと思って、あまり私はその話題に触れないようにしています。そういう症状がワクチン接種の時期と重なって、ワクチンと結びつけてしまったという反省からです。
一連の症状が出始めたのは、規則が厳しい公立高校に進学して、学校に行くのがいやだと言い始めていた時期でした。私たち夫婦の不仲や離婚話もあり、そのストレスも重なったのでしょう。
下の二人の子供が発達障害があったり、チックや過敏性大腸炎があったりして私が手一杯だったこともあり、いつも長女には我慢ばかりさせていたような気がします。「なぜ他のきょうだいばかり」という不満が溜まっていたのかもしれません。
最終的に治してくれた代替療法の先生から、治った後で、「娘さんの症状は心因性のものです」と言われて納得しました。「心因性」というと、「気のせいということ?」と腹をたてる人もいますが、ストレスで胃潰瘍になったり、円形脱毛症になったりするのと同じことだと思います。
ただ、ワクチンをうった直後に様々な症状が出た人を見ると、薬液の成分が原因の人も一部いるのではないかと思います。本物の副反応です。
でも、うちの娘のようにしばらく経ってからの症状は、やはり成分とは関係ないのでしょう。
夫不在の子育て いびつな母娘関係
振り返ると、子供の体調や健康のことは、全て私一人で心配して、悩んで、対処していた気がします。
夫は長女が生まれた頃から仕事ばかりで全く子育てをしない人でした。今で言うワンオペ育児です。私が一晩中抱きかかえて腱鞘炎になっても、一切起きてくれません。育児も家事も全て私がして、でも生活費を運んでくる夫に文句は言えない。愛情が冷めてしまいました。
それでも3人産んだのは、私の母親に「3人産みなさい」と言われていたからです。母は長女の私にとても厳しい人でした。妹より成績が良かったので期待をかけられ、テストも100点を取らないと許してもらえない。成績も3位以内に入らないと認めてもらえませんでした。
高校はどこに行き、先生になり、公務員と結婚し、子供は3人産むと人生の目標が全て母によって決められたように感じ、親の期待に応えることが自分の目標となっていました。両親も不仲で、そのストレスを私にぶつけていたのかもしれません。
私は親の期待通り教員免許を4つ取りました。教育学部に入った時から教育は肌に合わないと思い、一度、企業に就職したこともありますが、結局、会社を辞め、改めて先生になりました。
実家は近所なのですが、未だに緊張して長くいることができません。とにかく私は母に評価されないので、おかしいことを言わないようにして過ごさなければならないのです。
子供も3人目を産み終えた時にホッとしました。その後は会話もほとんどありません。
二番目の子は3歳の時に発達障害とわかって手がかかったのですが、夫は子守を全くしないので、長女にお父さん役をやらせてしまったと思います。
一番下の子が熱が出て頭が痛いと泣き叫んでいた時も、夫は二階に上がってしまう。長女が「なんでお父さんは上に行ったの? 心配じゃない」と一緒に一晩中起きて世話をしてくれたことを覚えています。
下のきょうだいの学校の相談も長女にしていました。大学進学で家を離れるまで、愚痴や相談の相手は全て長女でした。大学進学も公立でないと行かせられないと言い聞かせ、奨学金で学費をまかなわせています。今思うと、家庭内の様々なストレスがかかっていたのだと思います。
長女が体調を崩した時も、夫は相談できる相手ではありませんでした。心配もしていなかったと思います。娘が壊れていく中、私はずっと一人で不安と向き合っていました。
不安をすくい取ってくれた「仲間」
体調不良の原因がわからず、病院を渡り歩いてもまともな対応をしてもらえない中、私は必死でインターネット検索をしていました。そして、全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会の関係者が「HPVワクチンをうった後にこういう症状が出るかもしれないから気をつけて」とツイートしていたのを見つけたのです。
最初は「まさかな」と思っていたのですが、当時悩んでいた症状を書き込んだら、「これはHPVワクチンの副反応じゃない?」と連絡会の人からリプライが返ってきました。しばらくやりとりすると、「やっぱりそうよ」とHPVワクチンの副反応であると断言されました。
今、振り返れば、それは症状を固定させてしまう呪いの言葉だったのですが、その時はようやく原因がわかったと思ってホッとしました。すがるような思いでした。一人じゃない、仲間がいると思えたのです。
娘に「これってワクチンのせいじゃない? 経験のあるお母さんがこうなったのはワクチンのせいだって言っているよ」と伝え、よせばいいのに被害を訴える子供たちの症状のビデオも何回か見せました。そうなると負のスパイラルで、娘もそうだと思い込み、症状がどんどん増えていきました。
HPVワクチンの一連の「被害」は、インターネット社会だから起きたことかもしれません。ネットで検索していなかったら、そして被害者連絡会につながっていなかったら、知らないまま「おかしいな」と何もなく終わっていたか、心療内科や精神科をたらい回しにされて薬漬けになっていたかなのでしょう。
被害者連絡会の人たちはとても親身になってくれました。乳酸菌や体にいいとうたう水、サプリメントなど代替療法を勧めてきて、サンプルを送ってきてくれる人もいました。
その頃には、長女が寝ていると息をしているか確認してしまうぐらい心配が募っていましたから、こちらも必死でした。私もうつになりかけていたのでしょう。連絡会の具体的な提案をありがたく感じていました。
一方、当時、被害者連絡会の掲示板に会員が治ったという話を書き込んだとたん、掲示板ごと削除されるという事件もありました。治ったことを告げたとたん、役員たちからフェイスブックの友達を切られ、急に一切アクセスできなくなったそうです。
治った経験を他のお母さんたちに伝えると何か都合の悪いことでもあるのかとさえ思いました。そういう話を聞いて、私は目が覚めたのです。
実際に苦しんでいる子供や母親たちと、被害者連絡会の取り巻きの人たちは分けて考えた方がいいと思います。彼らが関係ないのに対立を煽って、囲い込み、治るものも治らなくしている。外から見ると一体に見られているのかもしれませんが、私はお母さんたちを悪く言う気にはなれません。
「希望の言葉」が治してくれた
最終的に娘が治ったのは、代替療法の先生の希望を持たせる言葉のおかげだと思っています。「辛かったね。治るよ」と、初めて寄り添ってくれる言葉をかけてくれたことで、娘も私も安心したし、治すスイッチが入ったのだと思います。
正直、今はこの先生のやり方に疑問もあるのですが、施術や食事療法のほかは、規則正しい生活をして、自宅で軽い運動をするよう指導されただけなのです。辛さを受け止めてくれたことと、「治る」という希望をもたせてもらったことが効いたのだと思います。
それまでかかっていた小児科や整形外科の先生たちはみんな、私たちの話を聞こうともしませんでした。
ワクチンをうったクリニックの先生からは、「ワクチンのせいじゃない。お腹が痛いのがワクチンのせいだなんて、カメラも撮ってないのになんでわかるんだ」と叱られて、二人で涙が出そうになったのを覚えています。
手が腫れた時に受診した小児科の先生からは「思春期によくある病態」とろくに説明もないまま突き放され、足が腫れた時には「霜焼け」と言われて、「あり得ない」と心の中で怒りを感じていました。
首に激痛があって整形外科にかかった時は、「寝違えだろう」と言われて、キレそうになりました。「ワクチンをうった後にこんなに苦労をしたのです」と説明しても、「うっといてよかったよ」とだけ言われ、辛い話をした後にこんなことを言うのかと呆れました。
「推進派」の心ない言葉
ワクチンは安全だと主張する医療者にありがちなことですが、ワクチンが原因ではないかと不安を訴える声にきちんと耳を傾けません。「非科学的なことを言う」と軽く見て、あからさまにバカにした態度をとることが私たちを傷つけてきました。
あるワクチン推進派の先生は、「HPVワクチン後の痛みなんてがんの痛みと比べれば大したことない」と言ったことがあります。あまりにもショックで、「がんの痛みと比べるようなものではないでしょう」と返したら、「客観的に見て、抗がん剤の副作用の方が辛い」とまで言われました。
まだ私たちが受け入れられていない時に、「どうせ接種から何ヶ月も経ってから痛みが出たんでしょう?」とか「ストレスが多かったからだよ」と言われ、わかってもらえないという気持ちが募りました。
ワクチンの成分とは関係ないのだと今は納得しようとしていますが、そういう認識になった今でも、SNSなどであまりにもデリカシーのないことを言われると腹がたちます。もうわかっているのだから、傷口に塩を塗り込むのはやめてほしいのに、薬害を叫んでいるお母さんと一緒に攻撃の対象とされていると感じることさえあります。
全部騒ぎが過ぎ去って、治った場合も、お母さんたちは取り残されています。推進派の人たちは、接種後の体調不良を訴えた親子に対して、「親が悪かったんだろう」という目で見ています。親が自分の心配をしてもらうために症状を創り出して訴えているのだと書く医者さえいます。
「傷の舐め合いはいけない」と言う医者もいますが、親同士が傷を舐め合って直さないといけないところもあるんです。
親のケアも必要
「親のせいだ」「お前が悪いから、自業自得だ」と言われ続け、母親たちは心に受けた傷を誰にも言えない状態になっています。でもそこをケアしないと、また不安は子供に向かってしまう。本当は上手に医療者がケアしてくれたらいいのに、突き放されています。
ワクチンを推進するのはいいですが、それと今傷ついている人のケアは別です。
私は治る子が増えてほしいし、お母さんたちも救われてほしいから、こうして表に立って自分の体験を伝えています。でも「推進派に利用されたくない」と反対するお母さんたちもいて、その気持ちもよくわかります。受け入れていない人を攻撃することで推進しようとする動きを警戒しているからです。
娘がもう一人下にいるので、うつかどうかの選択を迫られています。でも頭の隅っこにワクチンをうったのが原因で苦しい思いをしたというトラウマが残っているのです。一生懸命ワクチンのせいじゃないと納得しようとしているのに、推進する人の攻撃で最後に残った1%の不安が引き出されてしまいます。
ワクチンへの不安が症状の引き金になっていることもあるのですから、推進する人ももう少しデリケートなものの言い方をしてもらいたいのです。
苦しんでいるお母さんに手を差し伸べて
国が積極的に勧めることを反対はしません。
ただ、再開するなら、被害を訴えている人にも丁寧に説明してあげてほしい。
科学的な立場から発言する人たちからは、ワクチンに不安を抱く母親たちは、文句を言って邪魔をする人、悪者扱いになっています。確かに問題もあると思いますが、お母さんが子供の健康を心配するのは当たり前です。
彼らも話を聞いてあげたら落ち着くと思うのです。もともと子供の健康を心配する思いや立場は一緒です。ただ、医療側の対応が悪かったことで不信感が募り、こじれているだけなんです。
あの人たちにも、「辛かったね」と言ってあげる人が必要です。推進する人は、そういう人の傷に塩を塗り、叩くことしかしない。それで信頼が得られると思っているのでしょうか。
あの反対運動をお母さんたちが辞め、解放されたら、子供たちも病気から解放されるはずです。おそらくお母さんたちも精神が参っていて、あの運動にすがる気持ちを手放せないでいるのだと思います。
私も自分を振り返ってわかりますが、お母さんたちは孤立して、自分自身の不安に耐えられないのです。その不安に子供は反応してしまう。長女にも「お母さん、あまり体のこと聞かないで」「心配し過ぎ」と言われていました。
私が不安から解放されたのは、先生に「治るよ」と言われたこと。そして、下の子の学校の先生に「お母さん辛かったね」と言ってもらったことがきっかけでした。
学校の先生に、長女が色々病気をして大変だと打ち明けた時に、「本当に辛かったね」という一言をかけられただけで、私は初めて泣くことができました。お医者さんからはそんな言葉を一度も言われたことがありません。簡単な言葉なのに、この件で医療従事者に「お母さん、辛かったね」と言われたことが一度もないんです。
HPVワクチンの問題はコミュニケーションの問題
推進派も反対派も医師は、「全て私は知っている」「何もわからない者に教えてやる」と言う上から目線の態度しか示しません。でも私たちがほしいのはそんな言葉じゃない。心に寄り添うことって難しいかもしれませんが、医療者にはそういうことも少し考えてほしい。
被害者連絡会の人たちも、きっとそういう言葉を欲しています。「反ワクチンは邪魔するな」という態度ではなく、少しでも「助けよう」「手を差し伸べよう」という態度を示してあげてほしい。
私は克服しつつあるつもりですが、まだ下の娘に打つのは怖いです。恐怖が先立ってまだ勇気が出ません。頭での納得と心での納得は違う。頭で理解したつもりでも、心がついていかない。まだ呪いがかかっているんです。
今、推進派が発信している様子を見ると、心配は消えません。HPVワクチンの問題は、コミュニケーションの問題です。不安を抱く人に丁寧に説明しなかった初期対応のまずさが全ての呪いの根源なのに、科学的な正しさを盾に大きな声でねじ伏せようとする人たちは、まだ何もわかっていないです。
わずかな確率でも、子供に苦痛を与えてしまう、既に与えてしまったかもしれないという親の不安とどう向き合うか。もう少し真剣に考えてほしいと思います。