先日、エンゼルスの大谷翔平が「一番野球がうまい選手になりたい」と語り、話題になった。では、プロの目から見て「本当にうまい選手」とはいったいどんな選手なのか。各世代のOBたちに聞いた。
「プロのピッチャーからすると、うまいバッターとは『インコースをさばく技術が高い人』です。なぜなら、人間の腕をたためる角度には限界がある。
特にインコースの高めのボールは、体勢を崩さずに強い打球をフェアゾーンに打ち返すのは至難のワザです。それがダントツにうまいのが、落合博満(元中日)さんと篠塚和典さん(元巨人)でした」(元中日・川崎憲次郎氏)
今回、「内角打ちの達人」として川崎氏が名前を挙げた両名が「うまいバッター」としてもっとも多くの6票を集めた。
三冠王を3度獲得した落合の打撃の凄みを、かつての広島のエース・大野豊氏が語る。
「普通、『体が開く』、すなわち、身体の正面がピッチャーに見えてしまうバッターは、体勢が崩れやすいので怖くないんです。
ところが、落合さんの場合は思い切り身体が開いているのに軸足に体重がしっかり残っているから、ボールを自分の間合いに呼び込み、曲がり際や落ち際のボールにも崩れずに対応できる。
『打ち取ったり』という絶対の自信を持って投げたボールを何度ヒットにされたかわかりません」
同じく広島OBの山崎隆造氏は、篠塚の名前を挙げた。
「打撃のうまさは、『柔らかさ』と直結するんです。柔らかさにおいて篠塚さんは卓越していた。通常、左バッターが三塁線ギリギリに打った打球は、スライスがかかって、ファールゾーンに切れていきます。
ところが、篠塚さんの打球は、三塁線と並行するように真っ直ぐ飛んでいく。ボールの角度を目でしっかりとらえて、打球の角度を計算し、なおかつ手首を柔らかく使って打つという一連の動きを、一瞬でこなしているんです。センスの塊でした」
いっぽう、往年の名選手たちと並んで名前が挙がった現役選手が、今週本誌のモノクログラビアに登場している内川聖一(ソフトバンク)だ。
西武V5時代のリードオフマン、石毛宏典氏が語る。
「内川のバッティングを見ているとよくわかりますが、ランナーがいないときは引っ張り気味の打球を打つのに、ランナーがいれば柔軟に流し打ちしてタイムリーを稼いでくる。あれは、状況判断能力と技術の両方を兼ね備えてはじめてできること。
彼は、インパクトのタイミングで右の肘をぐっと絞って、体からバットを離さないから、あれだけの打球をコントロールできる。間違いなく現役最高のバッターだと思います」