先日流れてきたツイートにうんうん頷きながら同意した。
おそらく、こういった類のことは多かれ少なかれ、ほとんどの人が言われていると思う。
私自身、何かを決断しようとしたときに「〇〇はするな」とか「〇〇はしないほうが良い」と言われ、非常に嫌な気分になった。
それが正しいか正しくないのかは別にして、自分が体験したことのないことに挑戦しようとする人の出鼻をくじくようなアドバイスをする人は多い。
そのような根拠のないアドバイスを鵜呑みにして、後悔することもあった。
「若いうちは苦労したほうが良い」ってほんと?
そして、このツイートの内容を反芻しながら考えていたことは、「若いうちは苦労したほうが良い」って根拠なくね?と、ということである。
これも言われたことのある人は多いと思う。
「若いうちは苦労した方が良い」
これは一見、正しいアドバイスのように聞こえる。「若いうちの苦労は買ってでもせよ」や「かわいい子には旅をさせよ」ということわざさえある。しかし、年を取るにしたがって、この言葉をそのままストレートに受け取ることができなくなってきた。
若いうちは本当に苦労した方が良いのだろうか?
辛くて苦しいことをただ我慢するのは意味がない
もし、「若いうちは苦労した方が良い」の意味を、「辛くて苦しいことをただ我慢する」というふうに額面通り受け取るなら、それははっきり言って無意味だ。
若いんだからサービス残業は当たり前。
若いんだから上司やクライアントから理不尽な仕打ちを受けるのは当たり前。
若いんだから貧乏なのは当たり前。
いや、違う、そういうことじゃない。そんな“苦労”はしても無意味だ。
もしアドバイスをする側が「俺の若いころは苦労したんだから、お前も苦労しろ」という私怨を込めて言っているのだとすれば、聞く価値は全くない。
そして、「若いんだから嫌なことを我慢しろ」という意味であれば、全く同意できない。
私の感覚では、今の若い人たちは割とフラットにものを考えるから、理不尽な要求を「若いんだから」で押し付けても拒否するだろう。根拠のない常識を受け付けないスマートさを彼らは持っている。
苦労するより考えられる大人になれ
しかし、考えを進めるにしたがって、「若いうちは苦労した方が良い」の本当の意味がわかってきた。
それは、「苦労」の質によって変わってくる。
もし、その「苦労」が、乗り越えることで自分が成長できる困難や壁であれば、決してその苦労から逃げてはいけない。
クライアントから無茶な要求をされても、それを叶えるために自分が努力して達成することでもう一段上のレベルに行けるなら、それこそ「買ってでも」したほうが良い。
そしてもう一つ重要なのは、ただ苦労するだけではなく、困難に直面した時に、「考える」ということだ。
この困難を乗り越えるにはどうすればいいのか。何が足りないのか。何ができるのか。
考えもなしにガムシャラにやっても、「若いうちは苦労したほうが良い」の本当の価値にはたどり着けない。
吸収率の高い若いうちに、困難に直面して、考えて、考えて、考えたという経験が自分の中に蓄積していって、それは年を重ねたときに間違いなく誇るべき財産になる。
中堅と言われる年になった今思うのは、世の中には「考えられる」大人と、「考えられない」大人がいて、「考えられない」大人は死ぬまでずっとそのままであるということだ。
「考えられる」大人は、年を重ねても成長できるし、向上できる。
考える癖を若いうちに身に着けることは、非常に重要だ。
成長したのは社員Aと社員Bどっち?
ひとつわかりやすい例を挙げよう。
社員Aと社員Bは10日間かかる仕事を依頼された。しかし、その仕事に割ける時間は8日間しかない。
社員Aは、毎日終電まで会社に残り、身体も精神もボロボロにしながらなんとか8日間でその仕事を完了させた。
社員Bは、丸一日を費やしてどうしたらその仕事をより効率的に進められるかを考えて、結果的に8日間でその仕事を完了させた。
「苦労」をしているように見えるのは、毎日終電まで残って必死にやった社員Aだが、成果に変わりはない。それどころか、より効率的に仕事を進める方法を考えて、それを実践した社員Bは、今後の仕事でその経験が生きてくるだろう。
傍から見たら社員Bの方が楽をしているように見えるかもしれないが、傍から見える光景だけで判断するのは愚かだ。
まとめ
若い人が楽をしていると、良い顔をしない大人がいる。「若いのに楽しやがって」と眉を顰める人がいる。
私は楽をしていることが悪いと思わない。
ただ困難から逃げて楽をしているのであればそれは批判されて然るべきだが、楽に見える若者でも、考えて楽な環境を作り出しているのであれば、それは批判すべきこととは限らない。
結びに変えて言いたいことは、「若いうちは苦労したほうが良い」と言ってくる人のアドバイスは聞かないほうが良い。冒頭の「聞いちゃいけない大人のアドバイス」に含まれる。
「若いうちに苦労したほうが良い」というのは、大きな意味でとらえれば間違っていなくもないが、誤解を招く恐れもあるし、アドバイスとしてはもはや通用しなくなってきている。
本当に聞いたほうが良いアドバイスを言う人は、「若いころにしっかり考えなさい」と言ってくれる人だ。そっちのほうがしっくりくる。