人生デザイン U−29「寄席文字職人」[字][再] 2018.03.24

243月 - による admin - 0 - 未分類

今回の「U−29」は…。
おお迫力のある後ろ姿。
何やら紙を見つめているこちらの男性です。
いきなり大きく出ましたね。
吉也さんの仕事は書道家…かと思いきや違うんです。
これは寄席文字。
江戸時代から伝わる文字の書き方なんです。
…絵に近いと思いますよ。
落語の寄席などで使われる文字。
客席が埋まるようにと縁起を担いで紙いっぱいに大きく書きます。
憧れの伝統の世界に飛び込んだ吉也さん。
しかし…。
う〜ん…。
思わぬ壁にぶつかりました。
それは一体?おはようございます。
おはようございます。
出来ましたか?この日吉也さんがいたのは神社。
節分に開かれるお祭りの看板を頼まれていました。
いいんじゃないですか。
ありがとうございます。
こうポップすぎず。
この大きい看板にふさわしいどっしりとした文字でね。
やっぱ節分って豆まきでたくさんの方がお見えになる行事なのである程度にぎやかな印象があった方がいいと思うんですけども。
あんまり派手すぎずかといってスカスカすぎず…。
いいかなと思ったのでこうしてみました。
分かりました。
じゃあ早速設置させてもらいますね。
ここ茨城県石岡市は常陸国総社宮を大切にしてきた地域。
お祭りには町じゅうの人が大勢参加して盛り上がります。
そんな町で生まれ育った吉也さん。
物心付く前から両親に連れられてお祭りに通っていました。
そして大人たちが着るはんてんや提灯に書かれている太くてかっこいい文字に出会いました。
吉也さんは今も大好きな地元で暮らしています。
ただいま。
お帰り。
くたびれた?母親の加代子さん。
吉也さんが中学生の頃からそのちょっと変わった感性に気付いていました。
これがね描いた絵なんですよ。
(取材者)いつですか?
(加代子)これ?これは中学校の時だよ。
これ全部墨を1種類の墨から薄い墨と濃い墨を作ってこのぐらいの濃さだったらいいなっていうのを出してって。
ウロコだったらこのぐらいだろうな…。
体に入れてこなければいいよって言われましたよ。
(取材者)えっ!?体に入れてこなければいいって。
手本も見ずに描いた竜と獅子の水墨画。
おお〜中学生とは思えない趣味ですね。
実は吉也さん伝統文化なら何でも大好き。
古典落語に…。
こちらは。
江戸時代のデザイン集。
そして浮世絵。
おお〜これは古そうな本ですね。
これいつだろう。
え〜大正14年です。
(取材者)大正14年!?この角崩し文字一文字に見えますけど「大きい」っていう字に「工」って大工って入ってるんですよ。
(取材者)ああ。
でも一瞬でそれ読めちゃうのがすごい。
まあまあまあまあ。
これはもう読み込んでますからね。
気付いた頃からこういうものが好きなんだと自分のDNAの中に何か相通じるものを感じるんだなと思って。
なるほど。
遺伝子レベルで伝統文化が好きなんですね。
この日は仕事の打ち合わせ。
依頼主はなんと実のお兄さん。
経営している居酒屋をリニューアルするため看板のデザインを頼まれました。
吉也さん初の大仕事です。
う〜ん。
いいっすけどねアイデア路線は。
もうちょっと何かこうさっぱりさせたいっすね。
お店の名前はもちろん寄席文字で。
その背景のデザインの話になると…。
かつお縞っていう色がだんだん変わってくるかつおのおなかみたいな細縞が何本か入ってその何かに勝つとかこれからの繁栄を願ってとかそういうのにかつおってよく使うんですよ。
そういうのがあってもいいのかななんて。
(高野)いっぱい勉強するんだ…。
おお〜まさに吉也さんの得意分野ですね。
どんなデザインになるんでしょうか。
今までにやっぱなかっただけどその本来の目的縁起ですとかそういった部分を崩してないものが作れたらいいなと思います。
土曜日。
吉也さんが向かったのは…。
おはようございます。
おはようございます。
よろしくお願いします。
師匠の橘右之吉さんのお店です。
吉也さんは週に一度師匠の指導を受けています。
右之吉さんはこの道50年のプロ。
国立演芸場のポスターも手がけています。
吉也さんが右之吉さんのもとにやって来たのは今から7年ほど前。
大学は流通情報学部。
でも大好きな伝統の世界で働きたいと考えた吉也さん。
一番ほれ込んだ文字を仕事にしたいと思うようになり思い浮かんだのが右之吉さんでした。
橘右之吉っていう人の字を見た時にやっぱその衝撃を受けたんです。
何か…自分が書きたいと思った字はこれだって思うんですよ。
吉也さんは思い切って大学を3年で中退。
右之吉さんのもとに向かいましたが…。
…って言われたんです。
とにかく粘ったんですよ。
もう絶対帰らないと思って。
そしたら3回目かな4回目かな行った時に「あんたこう何回も来てるけどそんなに好きなのか」って問われて「はい。
好きです」って。
大学…大学をやめたあとに来たんだ。
私がやめさせた訳じゃないから。
その本気度が見せかけの本気じゃなくて本当に本気だったっていうのが一番じゃないですかね。
最初の1年は漢数字など簡単な文字をひたすら書き続けその後師匠の手伝いをしながら修業は6年続きました。
そして去年職人として一歩踏み出しました。
はい。
もっとお前自分の体格と同じように太く書いてみろよ。
はい。
線が細いよ。
並べてみな。
インパクト。
細くない?ねっ。
はい。
消し札という縁起物のアクセサリー。
若い人にも気軽に伝統の文字に触れてほしいと師匠が考えて作りました。
実は右之吉師匠スマホゲームのCMや有名ブランドとのコラボなど伝統の文字の新しい可能性を探り続けています。
弟子の吉也さんにも同じ気持ちを持ってほしいと期待していますがちょっと心配なところがあるようです。
伝統は本当に古いものを守ってるだけじゃなくてやっぱり新たなものがそこには血が入ってくるから伝統として現代に生きる訳だから。
師匠から教わった昔のスタイルって言っちゃおかしいけれども一番核となった部分があくまでもあってそれを変えていくっていう形でしょうね。
両方できなきゃ意味ないんですよ。
ご苦労さまでした。
失礼します。
気を付けて。
吉也さんの1週間スケジュールはこちら。
平日は自分のペースで仕事をこなし毎週土曜日は師匠のもとで稽古です。
休日はというと…。
お〜やっぱりお祭り。
上手ですね!
(一同)乾杯!そして地元の仲間と飲み会。
お酒を飲む時もはんてんなんですね。
あれ家賃?実家暮らしでしたよね?実は1年前から仕事部屋として一軒家を借りているんです。
この日取り掛かったのはお兄さんから頼まれた看板のデザイン。
ふう〜。
ん〜手が止まってしまいました。
何かないかな…。
悩んでいるのは寄席文字の背景のデザイン。
打ち合わせの時にはいろいろとアイデアが出ていましたが何かもの足りないようです。
こうやって見ると。
柄をいくつか組み合わせる事にしたようです。
…っていう願いを込めてます。
とにかく縁起を大切に考えたデザイン。
はい。
とりあえずいいんじゃないかなと思います。
青いかつお縞緑の麻の葉。
そして日の光をイメージした赤。
2つの模様と3つの色を盛り込みました。
次の日吉也さんが向かったのは師匠のもと。
まずは師匠にOKをもらわないといけません。
よろしくお願いします。
はいおはようございます。
看板を。
店の看板か。
はい。
この色とこの色下のかつお縞の部分とその上の赤とがどう考えてもなじんでるとは思えないし。
バラバラで色使ってるっていう感じになっちゃってるから。
見せたいのは文字の方を出したい訳だからそれをはっきり出せるような形にしていかないと作ったものがバックに負けちゃうよ。
字がね。
やっぱりそこに何かこう…どう直していいか分かりませんじゃお前しょうがねえんだからさ。
昔の事を詳しいなって本当にじじいですよ。
言ってる事はね。
それでいろんな事よく知ってますよ。
でもいろんな事よく知っててもそういうのは「野郎の本箱」っていってねただこう積み重ねてるだけで生かしてないんだよ。
だからもうてんこ盛りなんですよ。
それを今度削っていって実際の姿に持ってこられればいいんだよね。
(取材者)今回は入ってる感じしますか?師匠から見て。
何がですか?
(取材者)新しい感性。
入ってないよ。
お疲れさまです。
師匠にばっさり言われてしまった吉也さん。
ヒントを得ようとまだ工事中のお店にやって来ました。
今日はちょっと外壁の色を見て看板の色を決めようと思って。
あっなるほど。
外壁はうぐいす色。
その中央に高さ4メートルの巨大な看板が設置されます。
外壁って何かほかに模様とか入ったりするんですか?模様は特にないんでなるべくシンプルに仕上げます。
シンプルな外壁でもう看板だけがドンっと。
そうですね。
看板を引き立たせるために周りはシンプルに。
「野郎の本箱」にならないためにはどうすればいいのか。
おっオレンジですか。
新しいもの…。
自分のデザインってその何なのかなって思いますよね。
それを自分なりにっていう…。
人はこうしなかったなっていうものを…。
…って何なのかなって。
5時間後。
(取材者)もう色はそれで?いきます!色は一色。
柄も麻の葉だけに。
文字を引き立たせるシンプルなデザインになりました。
はい。
(取材者)出来ましたか。
出来ました。
何かその願いを込めたものをそういう意味があるものを出来た事は新しい事なのかなと思います。
再び師匠のもとへ。
おはようございます。
イメージカラーが。
これしまっちゃえよ。
オレンジ系がいいっていうのでだいだい色っていう。
だいだい色。
オレンジだったらだいだい色にして代々繁盛するようにっていう願いを込めたいなと思って。
うん…。
いいんじゃないかな。
はい。
ありがとうございます。
時間がないもんね。
じゃあこれで進めればいいや。
はい。
今日このまま今から帰ってもう入稿という事で。
入稿はいはい。
まあよかったな。
一段落だなそしたらね。
ありがとうございます。
はいご苦労さま。
おっ?という事はOKって事ですか?師匠。
いやまだまだでしょう。
まだまだでしょう。
これからもっともっとよくなると思いますよ。
だからそんな安直に言ったとおりに…。
言ったとおりにやってるから駄目なんだよ。
言ったとおりじゃなくて今度それの要求よりもっと上行かないと。
そうすればねえ「ああなるほどこういう発想があったんだ」っていうふうになってくれればうれしいね。
満足ですか?これは。
これは満足だよね。
看板負けしないようにお兄ちゃんも頑張んなきゃなみたいな。
アハハハハ!やっぱうれしいです。
もうとにかくうれしいですね。
吉也さんに最後に質問です。
まっすぐ頑張っていろんなものを吸収してそれを生かせれば頼んでよかったって言ってもらえる職人になれるのかなと思います。
2018/03/24(土) 01:00〜01:25
NHKEテレ1大阪
人生デザイン U−29「寄席文字職人」[字][再]

6年の修業を経て寄席文字職人になった27歳。伝統が大好きで飛び込んだ世界。しかし求められたのは、まさかの“新しさ”だった!粋なデザインを求められる試練に密着。

詳細情報
番組内容
橘吉也さん(27)は寄席文字職人。江戸時代からの伝統の字体で、お祭りの看板などを描き、背景のデザインなども手がけている。幼い頃、お祭りで見かけたかっこいい文字にほれ込んで以来、伝統的な字体や絵、図柄などが大好き。師匠・橘右之吉さんの元での6年の修業を経て、ようやく仕事を請けるようになった。この冬、飲食店の看板のデザインを頼まれた吉也さん。しかし最初のデザイン案に師匠からは強烈な「ダメ出し」が…
出演者
【語り】松坂桃李

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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