シリーズ 欲望の経済史[終]〜日本戦後編〜 最終回「改革の嵐の中で0s」[字] 2018.03.23

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2017年政府は生活保護の受給基準を30年ぶりに見直す事を発表。
67%の世帯が減額になるとの推計も。
貧困とその責任をめぐる論争がさまざまなメディアで繰り広げられネット炎上も後を絶たない。
かつて「一億総中流」といわれた国で今叫ばれる格差貧困。
私たちの社会は経済は一体どのようにして現在にたどりついたのか。
訳の分からない論理は小泉内閣には通用しないという事を!戦後日本経済の歩みその光と影を2人の知性と共に6回にわたり振り返る異色の経済史。
元大蔵官僚。
独自の経済理論を元に幅広く発言する異色の経済学者。
気鋭の経済学者。
最終回は改革の嵐が吹き荒れた2000年代を捉え直す。
80年代にバブルを。
90年代にその崩壊を経験した日本経済。
重い空気を振り払うかのように2000年代は改革の嵐が吹き荒れた。
不良債権により経営悪化に陥った銀行は90年代後半からの規制緩和金融ビッグバンを受け次々と統廃合を行う。
更に改革の波は行政機関にも及ぶ。
行政の効率化を目指し2001年に行われた中央省庁の再編。
そこで解体された省庁の中にはかつて「金融機関との癒着」という影をあらわにした大蔵省も含まれていた。
(坂井)2001年1月に大蔵省が解体される事になりました。
これ先生のかつての古巣なわけですよね。
どんなふうにこう率直に感想を思われました?あのこの時行われた事は2つあるんですね。
一つは…ああいう事があるために80年代のバブルのような事が起きてしまったという事ですね。
それからもう一つは名前を変えたって事ですね。
「大蔵省」という名前を変えて「財務省」という名前にした。
これはあまり重要だという考えてる人はいないと思いますが私は大変重要だと思います。
というのがですねあれによってあの役所はですねもはや…つまり普通の名前ですから財務省ってのは。
確かに財務っていう言葉は企業財務っていう言葉もあります。
よく使う言葉日常用語でしょ。
でも大蔵って言葉はないんですよ。
企業大蔵って言わないですよね。
(野口)ええないです。
非常に強い権力を持っている機関組織というのは変な名前を持ってるんですよ。
だからそういう特権を剥奪されたという事は大蔵省財務省に勤めている人の意識に多大な影響を与えたと私は思います。
そして改革ムードの中あの男が現れる。
歴史が動くかもしれない。
(拍手)
(女性)頑張れ小泉!戦後最高の81%という圧倒的な支持率の下第87代総理大臣に就任した小泉純一郎だ。
私の内閣の方針に反対する勢力これは全て抵抗勢力であります。
訳の分からない論理は小泉内閣には通用しないという事を!シンプルなキャッチフレーズの連呼。
敵と味方を分ける構図づくり。
明快な「劇場型政治」に人々は熱狂した。
そして小泉が目指したのが…。
…に取り組みます。
「聖域なき構造改革」。
2002年には道路公団の民営化に着手。
採算の見込みのない高速道路の建設見直しなど「効率」を重視した経済政策を進める。
(田中角栄)日本列島改造というのが出てくるんですよ。
「土建政治」とも揶揄された巨大事業を起こし景気を押し上げる旧来の政治から当時グローバルスタンダードとうたわれた新自由主義への移行を目指したのだ。
「しがらみ」から「効率」へ。
その流れは一般企業にも及ぶ。
(アナウンサー)「給料は自ら提出した業務目標の達成度や仕事の成果だけを尺度に決められます。
毎月の給料はあくまで仕事の成果だけを反映させるという成果主義を徹底させたいというわけです」。
業務の成果により人事報酬を決定する「成果主義」が相次いで導入される。
それは好業績には高賃金をというグローバルスタンダードへの対応でありまた社員間に競争原理を持ち込むものでもあった。
このころコンサルタントという存在も一躍脚光を浴びる。
多くの企業が経営の戦略を外部の専門家に託すようになる。
そして規制緩和は人々の生き方にも影響を及ぼす。
2003年「働き方の多様化」をうたい労働派遣法を改正。
製造業への派遣が解禁となる。
これにより正規労働者が減少非正規労働者が30%以上にまで増えた。
ネットカフェで寝泊まりしながら「日雇い派遣」で働く若者の姿が話題となったのもこのころから。
くしくも同じ年には…IT関連をはじめとした多くのベンチャー企業がオフィスを構え「ヒルズ族」という言葉も生まれる。
IT技術の進化により株主の姿も変わった。
「デイトレーダー」の出現だ。
高速で株の売買を繰り返し株価の一日の騰落の差益を得る。
競争社会を生き抜く新しい形とも言われた。
更に規制緩和は地方都市の人々の生活も変えた。
2000年に施行された「大規模小売店舗立地法」を受け全国的な大型ショッピングモールの開発ラッシュが始まる。
「歴史」や「伝統」と切り離され均一化されていく町の風景。
顧客の動線を綿密に計算し商業施設娯楽施設を配置したショッピングモールは地方都市にこれまでにない快適さと利便性をもたらすと考えられた。
こうした中平均株価は2003年の底値から上昇。
景気はようやく回復を見せる。
バブルの後遺症から徐々に脱却。
2005年には大手銀行が抱える不良債権もその比率を半減させる事に成功。
IT化グローバル化そして改革の嵐の中失われた10年を取り戻すための模索を続けた日本経済。
だが世界はそれをはるかにしのぐスピードで動いていた。
中でも目覚ましい躍進を見せたのが中国だった。
2001年世界貿易機関に加盟しかねてからの開放策に拍車をかけた中国。
安い労働力を武器に外国企業の誘致を成功させ「世界の工場」と呼ばれる工業大国へと変貌した。
急速な経済成長を続ける中国はGDPでも日本を猛追経済大国への道を走り続けた。
2010年に中国が日本を抜いてGDPが世界第2位になりました。
日本はですね43年ぶりに世界3位に落ちたと。
別に全然不思議はないと思いますね。
中国の人口っていうのは日本の10倍ぐらいありますから中国のGDPが日本より小さいという事の方が不自然ですよね。
だから2010年にその不自然さが解消されたっていう事です。
今は中国のGDPって日本の2.5倍ぐらいありますよ。
2.5倍もあるんですか?そうですよ。
それが問題だと私思います。
つまり日本は追いかけるどころかどんどん追い越されてるんです。
日本は1人当たりのGDPを見てもかなり落ちてるんです。
そして中国との差はどんどん縮まってるんですよ。
この傾向が続けば抜かれるわけですよね。
まあ抜かれてほしくないけどありうる事でしょうね。
なぜそう考えるかというとあの中国の経済構造産業構造っていうのは例えば国有産業が非常に大きな比率を占める。
だから効率が悪いと思ってる人が多いですよね。
確かにそういう側面もあるんですが一方において特に…2000年代世界経済を大きく動かしたのはIT化の波だ。
アメリカでは既に90年代から産業構造の転換に伴い自動車や家電などの大手企業に代わりコンピューターやインターネットなどのIT産業に巨額の資金が流れ込むようになっていた。
IT関連のベンチャー企業が次々と創立しその株価も暴騰した。
しかし2000年。
FRBの利上げを契機に株価は急速に下落。
更に2001年9月11日同時多発テロが発生。
不安が世の中を覆い人々の熱は冷める。
アメリカのITバブルは崩壊。
2002年になると乱立したIT関連企業の多くが倒産。
失業者数は56万人にも達した。
かつて70年代後半から躍進し続けた日本の半導体産業。
80年代半ばにはアメリカを抜きシェアトップになるなど世界をリードしていた。
だが90年代はソフトが時代の主役になる。
アメリカ企業の基本OSが世界標準となると国内独自のOSを搭載したパソコンの生産は縮小の一途をたどる。
半導体産業で後れを取った日本だがネットインフラの整備に伴いブロードバンド化が進む。
ネット普及率は2000年に30%を超え日本独自のネット文化がさまざまなクラスタに細分化した新たな消費の形を生む。
そうした日本の独自性を表すのが99年に始まった携帯電話によるネット接続サービス。
この「ガラパゴス的」進化によりユーザーがリアルな実話を元に書いた「携帯小説」と呼ばれるコンテンツが若者の間で爆発的な人気となる。
同じ99年に始まった「2ちゃんねる」。
細分化したさまざまなジャンルに対応した巨大掲示板だ。
ここから生まれたラブストーリーはクラスタを超えた共感を呼びベストセラーとなった。
だが匿名性ゆえの悪意に満ちた書き込みも問題となりその後の若者たちのコミュニケーションにも影を落とした。
そして今世界のIT業界で目覚ましい躍進を見せているのがやはり中国だ。
世界の企業時価総額ランキングを見るとアメリカIT企業に交じり中国の企業が3社。
そのうち2つがIT企業。
ちなみに日本企業トップの自動車メーカーは38位だ。
例えば電子マネーの面でですねアリババ・グループがアリペイっていう電子マネーを作ってますが中国の国内で使われてるだけではなくて東南アジアに進出してる。
更に日本に進出しようとしてます。
(坂井)その辺りのコンピューターサイエンスの知識をお金にする。
お金にするのは最近「マネタイズ」って言いますけれどそういうものはマネタイズできるんだという事について日本人は非常に意識は低いのではないのかと思う事があるんです。
私はそのご意見に反対ですけれども。
反対ですか。
数学者っていうのはお金を稼ごうと思って「公開鍵暗号」を開発したんじゃないんですよ。
「公開鍵暗号」を開発した人たちというのはヒッピーですよあれは。
全くそういう事に関心がない人です。
経営者がそういう理解を持ってないという事です。
日本の経営者が経営してないんですねはっきり言えば。
それは垂直統合的な?うん。
あるいは「40年体制」と言ってもいいと思いますがね。
1940年体制。
それは終戦に分断線を引くのではなく戦時期の40年ごろに転機があったとする考え方。
そのころにつくられた組織や制度などが戦後の日本経済を導いたという野口の説だ。
40年体制で企業間の異動が行われないで一つの企業の中で偉くなるという仕組みしかない。
となると日本でやはりこれから必要になるものって何かというともう経営者っていうのは経営者という職業があるんだ。
そうです。
しかしそれは40年体制的な企業の仕組みとは相いれない姿だと思いますね。
戦時期の国家統制を推し進めるための「1940年体制」。
それを引きずりながら進んだ日本の戦後経済はさまざまな光と影を生んだ。
戦後行われた国主導の産業構造の転換。
万歳!万歳!それは奇跡的とまで言われる経済成長をもたらした。
だが一方でその光は格差公害といった影も生んだ。
国の主導に企業が従う体質は光り輝くバブルの裏側で官と民の癒着を招き金融不祥事という影を生んだ。
かつて時代を牽引し目覚ましい成果を上げた40年体制。
だがその後の日本経済はどこへ向かうのか?80年代90年代のバブルの崩壊そこで金融機関が大きく変わったとかあるいは大蔵省が変わった。
金融機関も大蔵省も40年体制の非常に重要な構成要素です。
それらが力が衰えた事は事実です。
ただ私は変わってない面もあると思うんです。
変わってない面?それは何かっていうと国に対する依存なんですよ。
企業の自主性という事が非常に重要なんですね。
ところが…例えば製造業がいろいろな補助を国に求めるとかですねこれはある意味で40年体制の負の側面といいますかねそういう面は強くなってきたという事が言えるんじゃないでしょうか。
もう一つ競争について思う事があるんですが最近のITサービスだと必ずしも良いものが勝つというよりは先に多数派をとった方が世界の一強になる。
そういうネットワーク外部性もですね非常に大きい現象になっていると思うんです。
そこは非常に問題ですね。
確かにおっしゃるような事が起きてるわけです。
つまりIT革命というのは競争を促進するだろうというふうに思われたんですね。
しかし実際に起こっている事はまさにそうであってですねグーグルアップルフェイスブックですねそれからアマゾン。
こういうところがまあ寡占独占に近い状態を実現してますね。
IT革命で…それが更に加速される危険がある。
それはAIなんです。
AIの教育のためにはディープラーニングっていうのをやるんですね。
ディープラーニングをやるためにはビッグデータが必要なんです。
ビッグデータを得られる企業というのはごく限定的なんです。
まさに今言ったグーグルアップルアマゾンフェイスブックこういうところなんですよ。
一強の企業ばっかりですね。
したがってそういうところがですね今後ビッグデータを得そしてAIを進歩させるという事になれば今言った事が更に促進される事になりますよね。
だからそういう問題にも直面しているという事です。
2000年代前半改革の嵐の中IT関連をはじめとした起業ブームが巻き起こる。
それは従来の価値観を打ち壊す新たな社会の出現すら予感させた。
だがその効率に重きを置いた変革は濃い影も生んだ。
2006年1月。
ITベンチャー企業として規制緩和を利用した株式交換による企業買収を繰り返し時価総額およそ8,000億円にまで成長したライブドア。
その堀江社長および幹部が「証券取引法違反」により逮捕され過熱する起業ブームに冷水をかける事となった。
そして2008年。
アメリカの投資銀行の破綻をきっかけに世界的な金融危機「リーマンショック」が起きる。
その余波を受け日本の株価も暴落。
企業が生産を縮小する中で派遣などの多くの非正規労働者が職を失い社会問題にまで発展した。
2000年代の改革の嵐は過酷な「格差社会」という影も生んでいたのだ。
経済学者で大手金融会社の理事長でもある中谷巌。
小泉政権発足当初「構造改革」を最前線で牽引した中谷はこのころ「懺悔の書」を書き記していた。
それから10年の月日が流れた今。
「働き方」をめぐる改革が取り沙汰される中私たちはどのような生き方を模索していけるのか。
今政府も含めて多くの人が考えてる理想的な働き方というのはですね少ない労働時間でなるべく安定した職を得てそして相応の報酬を得るとこういう事ですよね。
つまりそれは言ってみれば…
(野口)私はですね若い人たちがこういう事に対してどういう意志を持ってるかは大変重要だと思います。
それがですね学生の就職希望を見ると明らかなんですね。
日本の場合にはどこが一番人気がある企業かといいますと…。
メガバンクなんですよ。
それから航空会社ですよね。
それから製造業の大規模なところ。
こういうところなんです。
つまり安定した職場です。
アメリカの学生がどういうところに就職したいか。
大企業伝統的な企業は一切ありません。
今はシェアリングエコノミーなんかをやってるユニコーン企業ですよねだからウーバーとかエアビーアンドビー。
これがトップですね。
決して安定的な職場ではないけれどしかし可能性が非常に大きいんですね。
日本の学生とアメリカの学生では非常に大きな差があります。
私はある意味では日本とアメリカの将来の社会がどういう社会になっていくかという事を暗示しているように思えてならないんです。
なるほど。
先生のおっしゃる事はそうだなと思う一面でやっぱり大きい組織の方が不確実性は少ないわけですよね。
そうなるとやっぱり安定した職場で働きたいっていうのは自然な心理ではあると思うんです。
自然な心理ではありますね。
そう考えるのも無理はないですよ。
なかなかこう将来というものが本当に見渡しにくくなった時代で個人レベルで不確実性を管理する事はもうほとんど不可能になってきている。
やっぱりそうなると巨大なみんなが直面してる不確実性を一応管理できるのはどこかというと国家ぐらいしかないような気がしてくるんです。
というわけでどうしても僕は国家にセーフティネットの充実再分配の実施というのはこれからやはり一層大切になるのかなと思うんですよ。
セーフティネットというよりは…
(坂井)ああなるほど。
やっぱり再チャレンジというものを尊ぶ文化。
文化でありかつそれが実際の社会的な制度として実現しているいなくてはいけない。
セーフティネットも確かに重要ですが私は規制の問題の方が重要だと思いますが。
規制?ええ。
今は新しい事をやろうと思ってても規制でできないというところが多いんですよ。
例えばですね先ほど大企業に就職すれば安全だと私もそう思って申しましたがねただ現実に起こってる事見て下さい。
金融機関は90年代から軒並み破綻したわけですよ。
最近何が起こってるか。
シャープが破綻してですね東芝が今のような問題になってる。
ですから大企業に就職すれば安全だという事は既に失われてると私は思います。
戦後70年余り日本経済は時に光り輝きその裏に影も生まれた。
その時影に見えたものが長い目で見れば光となる事もある。
視点によって無限に反転しうる光と影の経済史。
2018/03/23(金) 22:30〜23:00
NHKEテレ1大阪
シリーズ 欲望の経済史[終]〜日本戦後編〜 最終回「改革の嵐の中で0s」[字]

大好評「欲望」シリーズ日本戦後編。トピックスを押さえつつ光と影を再考する最終回、2000年代。元大蔵官僚にして経済学者の野口悠紀雄と坂井豊貴・慶大教授が案内役。

詳細情報
番組内容
バブル崩壊の後遺症から立ち直れない閉塞感漂う中「抵抗勢力」との対決も辞さないと宣言した小泉純一郎首相は「聖域なき構造改革」を標榜。大蔵省が財務省となる省庁再編、銀行も統廃合、日本経済は新たな局面を迎えた。起業ブームもあり新たな時代の始まりを予感させたが、そこでも「想定外」の事態が?様々な光と影が交錯。リーマンショックは何をもたらした?世界で進行したのは?日本再生の可能性を見出すべくゼロ年代を再考。
出演者
【ゲスト】早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問…野口悠紀雄,慶應義塾大学教授…坂井豊貴,【語り】首藤奈知子,【朗読】園部啓一

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事

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音声 : 2/0モード(ステレオ)
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