木村草太教授と読み解く自民党の改憲7案

安保法制を無理に通したツケが回ってきた

2018年3月20日(火)

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自民党の憲法改正推進本部が3月14日の役員会で、9条に関する7つの改憲案を示した。3月25日の党大会に向けて、意見集約が進められる。それぞれの案がどのような意味を持ち、どんな違いがあるのか。新進気鋭の憲法学者、木村草太・首都大学東京教授に聞いた。

(聞き手は、森 永輔)

木村草太(きむら・そうた)
首都大学東京教授。1980年生まれ。東京大学法学部卒業。専攻は憲法学。主な著書に『集団的自衛権はなぜ違憲なのか』『憲法の新手』『憲法という希望』など(撮影:菊池くらげ、以下同)

7つの案を見て、どんな印象を持ちましたか。

木村:大きく言えるのは、安全保障法制*を2015年に無理に成立させたツケが回ってきたということです。安保法制を成立させる前なら、自衛隊を憲法に位置づけるのは今より容易でした。「日本が武力攻撃を受けた場合にこれを阻止するため自衛隊を置く」とすればよいわけですから。しかし、安保法制があるがゆえに、こうした書き方ではすまなくなっている。

*:集団的自衛権行使の限定容認や平時の米艦防護、PKO(平和維持活動)での駆けつけ警護など、これまで自衛隊に認められていなかった活動を認めた一群の法律を指す。2015年9月に成立

 一方、安保法制の合憲性を明確にするには、集団的自衛権行使の限定容認を明示する文言にしなければならない。それは国民投票において国民の理解を得られない可能性が高い。かといって、あいまいな表現を取れば、憲法による統制が意味を成さなくなってしまう。

なるほど。今のお話をふまえて、7つの案を順に見ていきます。まずは「有力案」とされるものから。

【9条の2】

我が国の平和独立を守り、国及び国民の安全を保つための必要最小限度の実力組織として、法律の定めるところにより、内閣の首長たる内閣総理大臣を最高の指揮監督者とする自衛隊を保持する

 自衛隊の目的を「我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つため」というのは、自衛隊の役割として必要十分でしょうか。

木村:この表現は、意味が定まっていないので、評価のしようがありません。

 安倍政権が、集団的自衛権行使を限定容認する新たな9条解釈を閣議決定する以前は、自衛隊の役割は明確でした。政府が旧三要件としてまとめていたものです。

【武力行使の旧三要件】
  • わが国に対する急迫不正の侵害があること
  • この場合にこれを排除するために他に適当な手段がないこと
  • 必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと

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「木村草太教授と読み解く自民党の改憲7案」の著者

森 永輔

森 永輔(もり・えいすけ)

日経ビジネス副編集長

早稲田大学を卒業し、日経BP社に入社。コンピュータ雑誌で記者を務める。2008年から米国に留学し安全保障を学ぶ。国際政策の修士。帰国後、日経ビジネス副編集長。外交と安全保障の分野をカバー。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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