オウムアムアの故郷は連星系
【2018年3月23日 RAS】
ハワイ語で「偵察兵、斥候」の意味の名を持つ「オウムアムア」は、2017年10月19日に米・ハワイのハレアカラ天文台で発見された差し渡し200mの小天体である。運動の軌道や速度の情報から、オウムアムアが太陽系外からやってきたことはほぼ確実とみられ、観測史上初の恒星間天体とされている。
オウムアムアは発見当初は彗星だと考えられたが、ガスの放出が見られなかったことや表面のスペクトル観測などから、岩石質の天体であることが示された。カナダ・トロント大学スカボロー・惑星科学センターのAlan Jacksonさんは、オウムアムアが小惑星であることが実に意外だったと話している。彗星の方が見つけやすく、また太陽系で考えると小惑星よりも彗星のほうが数多く放出されるため、最初に見つかる恒星間天体は彗星だろうと考えられていたからだ。
「オウムアムア」の想像図(提供:ESO / M. Kornmesser)
そこでJacksonさんたちの研究チームは、小惑星のような岩石質天体の放出源を明らかにするため、どれくらい効率的に連星系が天体を系外に放出するのか、また天の川銀河内でそのような連星系がありふれた存在であるのかについて調べた。
その結果、連星系が効率的に岩石質の天体を放出すること、連星系から放出される岩石質の天体の数は氷天体に匹敵するほど多いことが示され、オウムアムアのような岩石質天体の故郷が単独の恒星ではなく、連星系である可能性が非常に高くなった。
さらに研究チームは、連星のうち1つの星は比較的高温の大質量星だろうと結論づけている。そのような連星系では、近くに岩石質天体が多数存在すると考えられているからだ。また、オウムアムアは惑星形成の過程のどこかで連星系から放出されたとも推測している。
オウムアムアのような天体を観測することによって、他の恒星系で惑星形成がどのように働くのかに関する重要な手がかりが得られるかもしれない。「私たちが太陽系内の惑星形成を理解するために彗星を利用するように、オウムアムアから、どのようにして他の恒星の周囲で惑星が形成されるのかについて多くの情報が得られるはずです」(Jacksonさん)。
〈参照〉
- RAS News&Press:‘Oumuamua likely came from a binary star system
- MNRAS:Ejection of rocky and icy material from binary star systems: Implications for the origin and composition of 1I/‘Oumuamua 論文
〈関連リンク〉
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