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森友問題・改ざん前文書を精読したら見えてきた「すべての根源」

学園側の無理な要求が…
長谷川 幸洋 プロフィール

「特別な便宜」は見当たらない

ここで興味深い問題がいくつかある。まず「新たなゴミが出た」という話は本当か。大阪航空局と近畿財務局は現地調査して「新たなゴミを確認した」としているが、昨年11月に公表された会計検査院報告はこれに強い疑問を投げかけている。

たとえば、大阪航空局が確認の根拠にした工事写真には「(深度)3.8mを正確に指し示していることを確認できる状況は写っていない」うえ「別途、廃棄物混合土の深度を計測した記録はない」ことを踏まえると(新たなゴミの)「裏付けは確認できなかった」と結論づけた(会計検査院報告108ページ、http://www.jbaudit.go.jp/pr/kensa/result/29/pdf/291122_zenbun_1.pdf)。

ここでは土地の所有・管理者である大阪航空局の責任が重い。「新たなゴミ」の存在、あるいは不存在をしっかり確かめていれば、別な対応を考えられた可能性もある。

この局面で国の担当者と森友学園、工事業者の3者が口裏合わせしたかのような音声テープの存在が報じられている(https://mainichi.jp/articles/20171203/ddm/002/100/135000c)。国側が森友側に調子を合わせて「新たなゴミ」の存在を認めたがっていた様子なのだ。

そうだとすると、なぜ大阪航空局と近畿財務局は森友側に同調したのか。実は「新たなゴミ」などなかったかもしれないのに、なぜ「ある」という前提で話を進めたのか。いったいどんな弱みを握られていたのか。そこが焦点になる。

 

改ざん前文書に基づくなら、答えは「国を損害賠償で訴える」という「脅し」だ。損害賠償の話は会計検査院報告にも出てくる。国が損害賠償で訴えられるのは名誉な話ではないから、担当者が「ビビった」としても理解できる。

もしかしたら、メモにできない話もあったかもしれない。そんな材料があったなら森友側が国に迫った構図はますます強まる。なかったならなかったで損害賠償話が脅す材料だったという話になる。ここは検察も徹底的に捜査するだろう。

さらに言えば、森友学園は2015年3月に独自に実施したボーリング調査の結果「軟弱地盤であることが分かった」として賃貸料の値引きを求めたが、近畿財務局が依頼した地質調査会社は「特別に軟弱とは思えない」との見解を示したにもかかわらず、同局が値引きに応じていた経緯もある(改ざん前文書の53ページ、及び会計検査院報告104ページ)。森友側が当初から、あの手この手で値引きを迫っていた様子が浮き彫りになっている。

いずれにせよ、国が大幅値引きせざるをえなくなった背景に「安倍首相の特別な便宜」は見当たらない。改ざん前文書で明確になったのは「損害賠償話で国が森友側に脅された」という事情である。

新たなゴミをよく調べもせず、損害賠償をチラつかされてビビった大阪航空局と近畿財務局は「情けない」というほかはない。本当にゴミが想定以上に深くまで埋まっていて、それを知らずに貸し付けたなら訴訟ざたになっても仕方ない。受けて立つ道もあったのではないか。

そうせずに、大幅値引きに追い込まれた(積極的に同調した?)のは大阪航空局と近畿財務局の失敗である。佐川氏は改ざん前文書を読み、関係者から話を聞いて経過を知るにつけ「これは財務省の責任問題になりかねない」と受け止めて、改ざんを指示したのかもしれない。

一言で言えば、改ざん前文書が打撃を与えたのは安倍政権ではなく、財務省と国交省だ。そうであれば、改ざんはマスコミが報じているように安倍政権を守るというより、財務省(と近畿財務局)を守ろうとする意図だった可能性がある。

とはいえ、安倍首相の側も昭恵氏が森友学園の名誉校長に収まったり、学園を訪れ、児童の歓待に「感涙した」りしたのは軽率のそしりを免れない。昭恵氏は籠池氏に体よく利用されたのだと思うが、利用される側にも落ち度はある。そこは首相も率直に認めるべきではないか。