冬の彫刻家「シモバシラ」
みなさんこんにちは。
相変わらず寒い日が続きますね。
夜半の冷え込みは京都では想像以上ですよ。
今日はこの寒さの中で花開く世にも不思議な植物のお話です。
皆さんは霜柱を見た事がおありでしょうか。
お日様が上がり始める寒い日の早朝、庭や畑に出てみると、長さ1~2cmくらいの
氷の柱が地面一面に伸びていて、小さな小石や土を持ち上げています。
私はその上を足で踏んで遊んだものです。
昔、麦畑では霜柱で持ち上がった麦の株の周りの土を踏み固め、
霜の害から根を守る作業をよくやりました。
さて今日はこの霜柱と同じ名前を持つ「シモバシラ」のお話です。
緑色の葉っぱで白い花のようなものをつけている挿絵を見てください。
この植物はシソ科の仲間で冬に茎が枯れても根は地面の中で元気に生きていて、翌年また芽を出して成長し花を咲かせる多年草の植物です。
関東から九州まで幅広く分布しており、山林の中や渓流の周辺で多く見かける事が出来ます。
ご覧の様に白い小さな花の集合で、どちらかと言えばあまり目立たないありきたりの草です。
しかし、それが初冬に大変身をするのです。
私の隣の家の川本コーヒーの常連さんでアマチュアカメラマンの羽柴さんという方がおられます。
雨の日も風の日も、晴れた日も寒い日もカメラを抱えて毎朝、
京都植物園に写真を撮りに行かれています。
今までに私もいっぱいいろんな植物の写真を見せていただきました。
ある日、世にも不思議な写真を見せてくださいました。
その名は「シモバシラ」。羽柴さんが撮影された右の写真を見てください。
枯れた茎の周りにまとわりついた白い綿のような美しい花を!
夏の姿からは想像もつきませんね。
さらにこんな事は滅多にないのですが、天女が持つ真っ白な壺のようなものすら見られます。
ちょっと手で触るだけで壊れて姿形がなくなってしまうそうです。きれいですね。
この植物は冬には普通の植物と同じように枯れてしまうのですが、
地面からまっすぐに伸びている枯れた茎が大変身しているのです。
シモバシラの枯れた茎は中が空洞になって残っていて、その中に、茎は枯れても
まだ全然元気な根が、地面からこの茎に水分を吸い上げて送り続けるのだそうです。
しかし、枯れた茎は縦方向に裂けやすくなってきているため、
下からどんどん吸い上げられた水が詰まり、茎の中で膨らんで、
その圧力で爆発し、茎の裂け目から横に広がって湧き出てきます。
そして、こんな見事な条件が揃った時だけ、
氷のシモバシラ彫刻が生まれるんだそうです。
本で調べましたら、初めての寒波で急激に冷え込んだ日で、
かつ次の条件が揃った時しか見られないそうです。
(1) 気温が氷点下ぐらいにまで下がった早朝
(2) 風が弱い、または無風のとき
(3) 雨や雪が降っていないとき
これらの条件が揃うと、地上に吸い上げられた水分が茎からはみ出して
「氷」となって現れるんだそうです。凄い事ですね。
これを見たある方は
「持ち上げているのは小石ではなく、茎の表皮。一度これが出来ると茎は壊れるので、一年にたった一度だけ咲かせる冬の花」
と感想を述べておられました。
枯れてもただでは枯れないシモバシラ。
でもなんで茎が枯れているのに根は水を吸い上げ続けるのでしょうか。
このシモバシラの彫刻にはまだまだ不思議な事がいっぱいです。不思議すぎて考えていると寝られなくなります。
東京では昭和記念公園でも見られる場所があるとか。
是非皆さんもどこかでこの不思議な冬の彫刻とも言える
シモバシラの水の花を探してみてください。
2010年2月17日 10:10 | | コメントを読む (1) | コメントを書く
コメント
シモバシラを探して伺いました。
茨城県牛久市の我が家の畑にも霜のお髭が出ます。それで他の場所ではどうなのかぜひとも見たくて…、京都行って見ようと思います。
Posted by: けろよん | 2014年1月13日 19:26