(C)MoominCharacters(tm)
March.23.2018
トーベ・ヤンソンの1945年の小説と絵本に
登場しました主人公です
彼女のノンノンも元の名はフローレンスです
トーベが10代の頃, 弟さんと喧嘩した後で,
トイレに悔し紛れに描いた「とても醜い生き物」が,
ムーミンの原型だとされています
小生家では幼稚園の頃,日曜日の朝10時と言えば
「ムーミン」を家族全員で見るという
ルーティーンがありました
モスクワの味「パルナス」と言うお菓子のCMが
もれなく流れていました
比べて,なんか理屈っぽく暗いことも多いし,
「?」と思いつつ見ていたものでした
そして, 1週間ほど前,
なぜかムーミンとサシでポタージュを黙って飲む,
という夢を見たことがきっかけで,今回注目し直し,
ムーミンたちのセリフを見ましたところ,
その哲学的クオリティの高さに驚愕致しました
ある意味で, 現在もはやジャンル化しています,
いわゆる「自己啓発」系で聞き覚えのあります
ことばだらけです
トーベさんの時代を超え普遍に達していた
感性と洞察力に脱帽するより他ありません
本日はこの, ムーミンワールドの哲学性を検証し,
その示唆に富んだメッセージを味わうべく,
ムーミンを始めとするキャラクターたちの
名言をいくつかをご紹介したいと思います
まずは, ムーミン自身の自己紹介?からです
I’m so soft and round.
No sharp edges anywhere.
僕はすごく柔らかくて,まん丸している
どこにも尖ったところがないんだ
たまらないですね!
自分のことをよく分かっているというか…
自分の体がすごく柔らかくて,まん丸している,
と「卑下」したかと思いきや,
どこにも「尖ったところがない」と言える,
この逆説的な内面の強さ,
それがムーミンを見たときの安心感といいますか,
ある種の魅力を醸し出しているのかもしれません
単なる身体的特徴の表現としてはマイナスであっても,
心理的特徴の表現と考えますとパーフェクトです
こころのかたちが尖っていない
そもそも, 超時空的な妖精ですし…
実際, アニメの中でのムーミンは,
気が弱いのか強いのかわからないけれど,
誰からも結局は憎まれず自然と愛される存在です
当然, 争いごとは好みません
You all know, don’t you,
that if people are frightened very often,
they sometimes become invisible.
みんなわかってるよね,
人って,もしちょくちょく怖がりすぎたら,
時々姿が見えなくなるんだよ
恐怖の根源は未知への漠然とした不安です
自分がどうなってしまうか分からない感覚,
八方塞がりな状況は,万人が嫌うものです
ですが,
恐怖は具体が蒸発させてくれます
よく分からないから不安になり,
結果,怖くなる
ムーミンは警告します
ムーミン谷の掟では, 恐れは彼らを透明にし,
ダークサイドに追いやるものだということを
特に人と人との摩擦では,気がつけば
「我を失う」瞬間など誰にでもあるものです
Sometimes it is terribly difficult
being one’s own self.
自分らしくいることって,
時にはすごく難しい
ムーミンは一貫して,
「自分とは誰か」というアイデンティティ論を,
ことばにせずとも問い続けたけていたように
思えます
洋の東西を問わず,
子どもから大人へと成長していく過程で
誰しもが何かしら思う節があることを,
ムーミンが代わりに悩んでくれます
There’s no point in being grown up
if you can’t be childish sometimes.
ときどき子どもっぽくなれないなら,
大人になる意味なんてない
この超時空感覚!
「永遠の子ども」の切実な叫び声が
ここにあります
ただし,
ムーミンだって,ノンノンに対して,
決めるときには決めます…
There’s no need to imagine
that you’re a wondrous beauty
because that’s what you are.
君が驚くほどの美人だなんて
想像する必要はないよ
だってそれが今の君だから
わぁっ,キザですねー
イタリア男性の口説き文句のようです
君のお父さんは泥棒だね
太陽を盗んで君の眼に
はめ込んだんだ
ムーミン谷の婦警さんのようなミイは,
実に現実主義的で辛辣ですが,
純粋な心の持ち主です
Hope for the best
and prepare for the worst.
最高を期待して,
最悪のための準備をしておきなよ。
まるで大企業の大物社長のことばのようです…
期待は最高を,
準備は最悪を想定してする…
実行できたなら,
まさしく無敵の論理です
さらに, 体は小さいのに
大物ぶりを示します
What’s important is reliance.
If this is shaken, it is over.
Bye!
信頼でしょ。
これが揺らいだらおしまい。
さようなら。
ですが,
時にミイは優しさを隠せません
Occasionally,
a good cry is just
what you need to grow.
うんと泣くことが
成長するのに本当に必要なことなのよ,
場合によってはね
一人暮らしの下宿人を慰める女主人さんのようです
『めぞん一刻』とか…
ムーミンは, 何か悩みがありますと,
決まってスナフキンに相談をします
とりわけ人間関係などで行き詰まるムーミンを,
スナフキンは楽器片手に,
風のように諭します
理想の自分を追いがちなムーミンに,
スナフキンは次のようにさらりと言います
One can never be truly free,
if one admires others too much.
もし誰かをあんまりにもあがめていたら,
ほんとに自由になることなんてできやしない
仏陀は「私を疑え」と仰いました
疑って,疑って,それでも疑い切れない
何かがあったときに,
初めてそれを信じよ,と
個人的には究極のリーダーシップ宣言だと思います
現実の世の中では,
私を信じよ, とだけ言う「リーダー」しか,
ほぼお目にかからない気もします…
スナフキンのこのことばには,
仏陀と同様のメッセージ性,つまり
自分を信じることからまず始め,
自己実現は他人になることではなく,
自分自身を知ることだとする,
透徹したビジョンを感じます
また, もじもじするムーミンは,
彼女ノンノンとの関係について
しばしば相談を持ちかけています
そうした時にもスナフキンは,
ギター片手にこう言います
Those who love you will never mind
if you’re a bit clumsy.
君がちょっと不器用だからって,
君を愛する人はそんなこと気にしないさ
超一流のカウンセラーですね!
「自分自身でいてください」
の一点張りでは, どうすればいいのか,
よく分からないものです
ですが,「ちょっと不器用」でもいいんだよと,
まるで映像を見せてくれているかのように,
スナフキンのことばは説得性が極めて高いです
二言は無用でしょう…
一方で自分の心の持ちようについて,
次のような意識レベルで
スナフキンはつぶやきます
I own everything that I see
and everything that pleases me.
I own the entire world.
自分で見るものすべて,
きれいだと思うものすべては,僕のものさ
全世界もね
捉えようによっては究極のナルシシストですが,
ある意味, 仏教心理学で言います,
世界は汝の心の表れである
に通底する,壮大極まりないビジョンです
そして,
過去の偉人たちが口を揃えて言います
あのキラーフレーズを,
彼一流の端的さでこう言います
You cannot count on ‘Some day’;
now is ‘the time’.
「そのうち」なんてあてにならない
今が「その時」だよ
こうしたミイやスナフキンらの友人を始め,
父母,そしてノンノンという存在に囲まれて,
哲学者ムーミンがたどり着いた境地は…
I only want to live in peace
and plant potatoes and dreams.
僕はただ平和に暮らして,
ジャガイモと夢を植えたいだけなんだ
ちゃんとジャガイモは植えるんだ…
それでは, このへんで