人の気持ちを想像するのは難しい。
どんなに慎重に接していても、相手の気分を害してしまうこともある。
いつものようにネットサーフィンしていたら、セクハラを受けた女性の話を見つけた。
【前編】事実にはオチも救いもないけれど、これが地方移住で受けた性被害と現実です。
要約すると以下のような内容が書いてある。
- 地方に移住した佐藤さんは山奥での暮らしを楽しんでいた
- あるとき、友達が佐藤さんのところに遊びに来てくれた
- 仲良くしていたおじいちゃんに電話をかけて、車で案内してもらうことにした
- おじいちゃんのことは身内のように慕っていた
- 元々宿泊予定だった人の都合が悪くなり、急遽おじいちゃんの家に泊めてもらうことになった
- おじいちゃんは風呂の扉を開けて入ってきたり、布団に潜り込んできた
- 次の日のお昼に、友達は家から飛び出していった
- 後で友達から事情を聞くと、佐藤さんが寝ている間に"何か"されたことがわかった
- おじいちゃんは佐藤さんが悪者であるように、周りに吹聴していた
- そんなしょうもないおじいちゃんはとあるNPOのサイトで「地元の人の代表」として大きく紹介されていた
- これが「地方移住の現実なんだ」と佐藤さんは締めくくっている
ネットでずいぶん拡散されているので、この記事を目にした人もいるかもしれない。
この記事を読んだとき、初めは
「また非モテの暴走の話か」
と思った。
しかし、このような暴行事件(?)を起こした人を「非モテ」と一括りにするにはいささか乱暴すぎる。
非モテだからといってセクハラするわけではないし、モテる人が一切セクハラしないわけでもない。
セクハラは「自分」と「相手」の関係性を見誤ることから生じるものだ。
大好きな人に触れられることはセクハラにはならないが、全く異性として考えていなかった人に触られたら、それはセクハラとなる。
この「関係性の読み間違い」の背景には、男性側に「自信過剰」を初めとした、複数の原因がある場合が多い。
具体的には、セクハラを起こしてしまう男には、以下のような条件があると考えている。
- 自分に自信がある
- 自己評価と他己評価が乖離している(自分はイケてると思っている)
- (無駄に)行動力がある
- 思春期に女の子と話して失敗した経験が少ない
- 観察力が足りない(あるいは観察が間違っていた)
- 想像力が足りない(あるいは想像が間違っていた)
セクハラの第一のパターンは「勘違い」だ。
自分に自信があって、自分はイケてると考えているが、相手からするとただキモいだけの場合。
自分はイケてると思っているから、口説いたときに相手が嫌そうにしていても、
「イケてる俺に口説かれているんだから、嫌よ嫌よも好きのうち」
と考える。
それが相手に不快な思いをさせて、結果としてセクハラとして受け取られてしまう。
過剰な自信が目を曇らせ、相手を見えなくさせてしまうのだ。
セクハラの第二のパターンは「独りよがり」だ。
独りよがりになって空気が読めず、自分の欲望のままに行動しているパターンのこと。
このような人に共通するのは、相手を観察する能力が極端に低いということだ。
自分しか見えていない。
相手の表情とか、仕草とか、話し方から相手の心情を想像する能力が足りない。
だから、自分の思うがままに欲望をぶつけ、結果として相手を不快にさせてしまう。
これが、
「距離感が掴めない」
という問題である。
今までたくさんの人を見てきて感じていることは、
「相手との距離感を掴むセンサーは、思春期に最も発達する」
ということだ。
繊細な思春期に
「こんなことを言って嫌われてしまった」
「こういうことを言ったら喜んでくれた」
という経験を積み重ねることで、自分の中で「感情の引き出し」ができる。
「こういう表情をしているから怒っているんだろうな」
「怒っているときはこう言えばいいんだろうな」
のように、仮説を立てて検証する経験をたくさん積むことで、相手の感情を読み取るセンサーの精度は高まっていくのだ。
このようなセンサーが最も鍛えられるのが思春期で、年を取ると自分にも相手にも鈍感になってしまうので、なかなか磨くことはできない。
別に思春期に恋愛しまくるのが大事、という話ではなく、思春期に人間関係で失敗して反省した経験が少ない人は、大人になっても鈍いこと多いと僕は思っている。
完璧なセンサーを持つことは不可能だ。
誰だって失敗する。
それでも、失敗を重ねることで、自分の中で「感情のデータ」が蓄積されていって、相手の感情を想像する基盤ができる。
そこで想像した「相手の感情」は言語化できるわけではないけれど、ぼんやりと「気持ちの色」のようなものが見えるようになってくる。
セクハラを起こしてしまう人は、その色が見えていない。
センサーが故障しているので、相手が嫌がっていることが感知できない。
本人は悪いことをしているつもりはないはずだ。
ただ見えていないだけだから。
「センサーがない」というのは、暗い森の中を懐中電灯も持たずに歩くようなもので、下手すると危険に遭遇してしまう。
人の感情を照らすセンサーを身に付けて歩こう。
セクハラの第三のパターンは「妄想」だ。
世の中には都合の良い妄想が溢れている。
少年漫画の主人公は何の取り柄もないのにモテまくるし、小説では何の面白みもない主人公が
「やれやれ」
とか言って女の子と夜を共にするし、ドラマでは主人公が必ず勝つ。
現実はそんなに甘くない。
いちご100%的な展開で、最初は険悪だった二人が突然恋仲になったりなんかしないし、現実では一度険悪になったらたぶん、ずっと嫌われて関係が終わる。
現実を捻じ曲げて解釈する「妄想力」は男女においては悲劇の要因となる。
妄想ではなく、目の前の事実を元に、相手の感情を予測することが重要だ。
センサーとチューニング。
この2つが大事だ。
相手の感情を予測して、反応を見ながらチューニングしていく。
もちろん失敗することもあるし、間違えることもあるけれど、そこから学んで経験を蓄積することが大切だ。
これは住む場所や年齢の問題ではなく、その人自身の想像力の欠如が問題なんだ。