民主主義は「権威主義の誘惑」を断ち切れるか

中国・ロシアが台頭、欧米は動揺するが…

今年3月、2人とも権力基盤をさらに盤石なものにした(写真:左・Jason Lee/REUTERS、右・Sputnik/Alexei Druzhinin/Kremlin via REUTERS)

ロシアのプーチン大統領と中国の習近平国家主席が相次いで「国民の圧倒的支持」を得て、再選、再任を果たし長期政権の道を確保した。政権維持に苦しむことの多い主要民主主義国の政治指導者から見ると、投票結果の数字はうらやましい限りだろう。この結果、代表的権威主義国家の中国とロシアの政権は安定し、国際社会での影響力がさらに増していくことなりそうだ。

対照的に欧米先進民主主義国の多くが排外主義を掲げるポピュリズム勢力の跋扈などに苦しみ、政権が不安定化している。戦後長く続いてきた民主主義や市場主義、国際協調主義を中核とする国際秩序が、台頭する権威主義国家を前に揺らぎ始めているように見える。

完璧な統制の下で、「選挙」の形で正統性を演出

まずロシアと中国の「選挙結果」を数字で見てみよう。

3月18日に投票されたロシアの大統領選には8人が立候補した。有権者数は7343万人で、投票率は67.5%だった。数々の不正投票など問題が指摘されているが、プーチン大統領は5620万票を獲得し、得票率は76.7%でほかの候補をまったく寄せつけない圧勝だった。かねてプーチン氏は70%の投票率と70%の得票率を目標に掲げていたが、それをほぼ達成できたようだ。

習近平氏の場合はもっと完璧な勝利だった。今月初めに中国の国会にあたる全国人民代表大会(全人代)が開催された。まず、国家主席の任期を2期(10年)までとしていた規定をなくす憲法改正案が採決され、賛成2958票(99.8%)、反対2票、棄権3票、無効1票で可決された。

その数日後に主な人事についての採決がおこなわれ、習近平国家主席の再任については投票数2970票すべてが賛成で反対や棄権は0票だった。また異例の人事として話題を呼んだ王岐山氏を国家副主席に起用する案も賛成2969票、反対1票という結果だった。習近平氏については国家軍事委員会主席に再任する案も賛成2970票、反対0票だった。

このほか李克強首相の再任、新たに設けられた国家監察委員会主任、最高人民法院院長、最高人民検察院検察長などの人事も採決されたが、反対票は0か1ケタにとどまった。異論を認めない完璧な統制のもとでの投票が行われたことが数字の上でも示されている。

次ページ民主主義の勝利ではなかったのか
関連記事
トピックボードAD
人気連載
トレンドライブラリーAD
  • コメント
  • facebook
0/400

コメント投稿に関する規則(ガイドライン)を遵守し、内容に責任をもってご投稿ください。

  • NO NAME175d1d20c20f
    習近平もプーチンもそれなりに賢く優秀だから何とかなってる。他の独裁国家は泣かず飛ばず、中国もロシアもトップがアホにすげ替わったら一瞬でダメになるよ。一人に権力が集中するということは、ある意味でハイリスクハイリターン。投資で言う一点投資に近い。しかも、権限もアホが持ってるから、システムを変えようと思ってもどうしようもない。国民はアホと一蓮托生する道しか残ってないのが、リスク高すぎ。
    逆に、民主主義はみんなでやるから圧倒的な成果は出にくいが、失敗も少ない。投資で言う分散投資みたいなもの。
    どっちがいいのかは知らないが、投資では分散投資が常識なことを考えると、長い将来を考えたら民主主義のほうが良さそうだ。
    up29
    down0
    2018/3/23 07:14
  • NO NAME58c8ef270669
    プーチンもキンペーもいずれ老いる
    そのとき自制して自ら退くことができるだろうか?
    たぶん無理だ
    up15
    down0
    2018/3/23 07:29
  • NO NAMEb1e5b79211c3
     米中貿易摩擦から中国経済失速となると中華帝国の夢は瓦解しかねない。ロシアは打たれ強く生き残ってきているので、今後も多少のことでは動じない。民族問題でも華人優先の中国共産党と違ってロシアは比較的穏健だ。
     プーチンは若手大臣を経済やIT部門に登用していて将来の後継者も育成しているし、メドベージェフも優秀だから、これからロシアは伸びる。
     民主主義か権威主義化かというが、日本だってあやしいものだ。
    up7
    down0
    2018/3/23 10:29
  • すべてのコメントを読む
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • いいね!
トレンドウォッチAD
急成長後の新たな難題<br>リクルート「スタディサプリ」

有料会員数が64万人を突破。カリスマ講師の授業動画を月980円で何度も視聴できる「スタディサプリ」が急成長。学校への導入、海外展開など戦線拡大を図るが、競合は手強く茨の道。