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ラーメンとも焼きそばとも違う!謎のご当地麺「ローメン」とは!?

2018.03.22

みなさんは、長野の伊那地方で長年愛されている「ローメン」というご当地グルメをご存知ですか?風貌はラーメンのようでもあり、焼きそばのようでもありますが、味わいは似て非なるもの。地元民ですらもその説明に困る、なんとも不思議な麺料理なんです。今回は「ローメンとは何ぞや」を探るべく、地元で名を馳せる2つのお店を来訪。その魅力やツウな食べ方をお聞きしました!

蒸した太めの中華麺と羊肉を使った、伊那市民のソウルフード

ローメンとは、茶色くて太い蒸した中華麺と羊肉が特徴的な麺料理。ラーメンのような“スープあり”と、焼きそば風の“スープなし”、2つのタイプが存在します。

そもそもローメンが誕生したのは、今から60年以上も前の昭和30(1955)年のこと。伊那市にある中華料理店「中国風菜館 萬里(ばんり)」が発祥です。その後、少しずつローメンを提供する店が増え、今では伊那市を中心に約90店舗で食べることができるといわれています。
▲発祥店「萬里」のローメンは“スープあり”タイプ

さらには家庭の食卓や祭りの屋台、学校給食などでもローメンが出されるというのですから、ローメンが伊那でどれだけ市民権を得ているかが分かってもらえることでしょう。

ローメン発祥の店は“スープあり”タイプ!「中国風菜館 萬里」

▲ここがローメン発祥の店「中国風菜館 萬里」!JR飯田線伊那市駅から徒歩約6分

早速、ローメンの元祖である「萬里」へ向かい、二代目店主の馬場元(はじめ)さんに誕生秘話をお聞きしました。
▲創業者の娘さんと結婚し、二代目店主となった馬場さん。ご自身は子どもの頃からこの店に家族とよく来店し、ローメンを食べていたのだとか

「元々この店ではラーメンを提供していたのですが、ローメンが誕生した約60年前は、まだ冷蔵庫が普及していなかった時代。初代店主は『麺を翌日まで保存させるためにはどうしたらいいか』と日々頭を悩ませていたそうです。そこで考案されたのが、日持ちが格段によくなる“蒸した中華麺”。蒸した中華麺といえば焼きそばを連想する人も多いと思いますが、ローメンの麺はじっくり蒸しているため、焼きそばよりも食感がしっかりしているんですよ」(馬場さん)
▲「ローメンの一番の特徴は、このゴワゴワとした茶色の麺。これはしっかり蒸しているからで、独特の歯応えと風味が特徴です」と馬場さん。伊那市内のスーパーなどでも買うことができる

もう1つ忘れてはならないのが羊肉の存在。当時の伊那地方では羊毛産業が盛んだったため、羊肉が安く手に入ったことから具に使用されることとなりました。

「羊肉の替わりに豚肉を使ってお出しすることも可能ですが、それだとあっさりしすぎてしまって本当のローメンの味にはならないんです。ローメンは、この蒸し麺と羊肉があってこその食べ物。せっかくですから、ぜひ羊肉入りのものを食べていただきたいですね」(馬場さん)
▲ローメンの基本材料は、蒸した中華麺とキャベツ、羊肉。「萬里」では、これにキクラゲが加わる。中には、キノコやモヤシなどの野菜が入る店もあるそう

もともとは、中国料理の「炒肉麺(チャーローメン)」の名で売っていましたが、後に“チャー”がとれて“ローメン”の名で呼ばれるようになったそうです。
▲豚の頭骨と鶏ガラ、香味野菜で出汁をとったスープ。同じく伊那市内にある支店「萬里彩園(ばんりさいえん)」では、このスープを使ったラーメンも提供している

味付けは超シンプル!スープで炒め煮にして作る元祖“汁あり”ローメン

元祖でもある「萬里」のローメンは“スープあり”タイプ。中華鍋に麺と具を入れて、スープで炒め煮にして作ります。味付けはなんと三温糖と濃口醤油のみと、驚くほどシンプル。

「ローメンとは、卓上の調味料で自分好みに味付けをしてもらう食べ物。厨房での調味は下味程度を心がけているので、そのまま食べるとちょっと物足りない印象を受けるかもしれません」(馬場さん)
▲すべての材料を最初に投入。「え?そんなに入れるの!?」と思うほど、大量に三温糖が投入されるが、驚くなかれ。この“甘さ”が後々いい仕事をしてくれるのだ
▲麺と具、スープ、調味料が入った中華鍋。しっかり熱を通すため、しばらく蓋をして煮る
▲途中で火を止め、麺とキャベツを予熱でほどよい食感に。再び火をつけて、熱々の状態で提供する
▲「ローメン」700円の完成!麺が2玉入る大盛りは850円、3玉入りの超大盛りは1,070円 ※すべて税込

自分好みにカスタマイズをして召し上がれ!

いよいよ、お待ちかねのローメンを実食!……が、馬場さんの説明にもあったように、ここからがローメンのおいしさを左右する大事な作業。一口味を確認したら、卓上調味料で自分好みの味に仕上げていきましょう。ちなみに、カスタム前の味は「甘い」です(笑)。
▲ウスターソースと酢を回しかけた後、その他の調味料でお好みの味に仕上げていくのが、馬場さんおすすめのおいしい食べ方
▲まずはウスターソースと酢で味のベースを作っていく。女性は酢を多めに入れる人が多いとか
▲卓上には、ウスターソースと酢のほか、ゴマ油、ラー油、七味唐辛子、おろしニンニクなどの調味料が置かれている

筆者もいろいろな調味料を入れて試しましたが、個人的なおすすめは、ニンニク+ラー油+七味唐辛子の組み合わせ!ニンニクが入ることで力強さが増し、一気にパワフルな味に変わります。甘みの効いたスープがほかの調味料の味を引き立てている印象。一口食べるごとにそのおいしさにどんどん引き込まれていってしまいました。
▲同店では「仕事の合間でもニオイを気にせず食べられるように」と、ニンニクはあえて後入れの方式をとっている

多くの飲み屋でもローメンを提供しているため、伊那地方では、ローメンをつまみにお酒を飲む人や、“〆の一杯”にローメンを食べる人も多いそう。
「家族用にテイクアウトをして“翌朝食べる”のもおすすめですよ。麺にスープがしみ込んで、これがまたおいしいんです!」(馬場さん)
▲下味の砂糖が、後入れの調味料の味をうまくまとめ上げ、スープに深みを与えてくれる。残ったスープを最後に飲み干すのがツウの食べ方。最後にご飯を入れて食べるのもおすすめだ

ちなみに「萬里」では、お店の味を自宅で楽しめるお土産麺も販売されています。スープや具材もセットになっているので、簡単に作ることができますよ。
▲元祖の味が自宅でも楽しめるとは!「冷凍ローメン」(1食480円)、「常温いなローメン」(2食入700円、3食入970円) ※すべて税込

“スープあり”のローメンを提供する店舗は、同店の流れを汲むところが多いそう。系譜をたどってこちらの元祖の味と食べ比べてまわるのもおもしろいかもしれません。

焼きそばにも似た“スープなし”の元祖はこちら!「うしお」

もう1軒、この店なくしてローメンを語れないのが、昭和32(1957)年に創業した「うしお」。創業から60年が経った今なお多くのお客さんであふれかえっている人気店です。この日は、ローメンの普及活動を行っている団体「伊那ローメンズクラブ」を運営する伊那商工会議所の牧田淳志(あつし)さんにも同席いただき、ローメンの魅力を語ってもらいました!
▲「萬里」と並ぶ伊那ローメンの二大巨頭のひとつ「うしお」。JR飯田線伊那市駅から徒歩約4分

「メニューにはラーメンもあるんだけど……うちに来るお客さんの99%はローメンを食べていくよね」と店主の潮田秋博(うしおだあきひろ)さん。ちなみに、同店は“スープなし”ローメンの元祖。「祖母の兄が中国で食べた料理を思い出して再現したのが始まりだと聞いています」(潮田さん)

当初は生の中華麺を茹でて作っていたそうですが、茹で湯がスープのようになってしまい、「あまりおいしくはなかった」そうです。その後、生麺の代わりに蒸し麺を使用することで茹で汁問題は解決。現在のやきそば風に進化したといわれています。
▲麺2玉(260g)入りの「ローメン(超)」850円(税込)。潮田さん曰く「並」は飲んだ後の〆のサイズ。女性でも「大盛り」が普通で、男性は「超」か「超々」を注文するそう

「『うしお』さんを筆頭とする“スープなし”のローメンは、濃いめの味付けのところが多いので、若い人ややガッツリ派から支持を集めています。ライスと一緒に食べても、酒を飲みながら食べても旨いんですよ!一方で『萬里』さんをはじめとする“スープあり”タイプは、やさしい味わいのところが多く、年配の方に人気がありますね」(牧田さん)
▲月に10回はローメンを食べているという伊那商工会議所の牧田淳志さん(左)と、うしおの3代目店主・潮田秋博さん(右)

ウスターソースでしっかり味付けして作る焼きそば風の“汁なし”ローメン

“スープあり”タイプとは作り方がどう違うの!?ということで、厨房にお邪魔し、“スープなし”ローメンの作り方も見せてもらいました。
▲ゴマ油とニンニクであらかじめ炒めておいた羊肉とキャベツ。同店では、一緒に炒めずに別々に調理している
▲焼きそばにも似たビジュアルですが、蒸した中華麺はそのままフライパンに投入するのではなく、一度茹で戻しをしてから炒めているそう
▲3~4分ほどで茹で戻し完了。もちもちとした独特の食感で、調味料との絡みも抜群!
▲少量のキャベツを入れたフライパンに茹で戻した麺を移し入れ、ニンニク、ゴマ油、鶏ガラスープ、ウスターソースと共に炒めていく
▲麺にしっかり味がしみ込んだらお皿に盛り付け。炒める際に鶏ガラスープを使用するが、「スープは皿によそわない」のが「うしお」のこだわり

火を入れすぎるとかたくなってしまうので、羊肉は麺とは一緒に炒めず、仕上げの段階でトッピングしています。
▲後のせしたキャベツの上に羊肉をたっぷりのせる
▲盛り付けが終わったら、ウスターソースと酢をまわしかけてテーブルへ!

マヨネーズやカレー粉とも相性抜群!お好みの味にレッツカスタマイズ♪

「うしお」のローメンは、ニンニクを効かせた焼きそば風の味わい。太麺にもしっかり味がしみ込んでいるので、味付けを加えなくても箸がどんどん進んでいきます。
▲そのままでもおいしく食べられるよう、しっかり味付けをした状態で提供しているそう

もちろん“スープあり”タイプ同様お好みの味にカスタマイズすることもできます。
「あとは卓上の調味料でお好きなようにアレンジを楽しんでください」と潮田さん。

「せっかく作った料理の味を勝手にいじられるのは、嫌じゃないですか?」という素朴な疑問にも、「それがローメンという食べ物ですから。もう、好きにやっちゃってくれていいんです!」という寛容なお言葉が返ってきました。なんと懐の深い食べ物なのでしょう(笑)。
▲卓上にはウスターソース、酢、ゴマ油、一味唐辛子、カレー粉、醤油などが並ぶ

聞けば、伊那の方はみなさんお気に入りのローメンの店が決まっていて、自分なりのカスタム方法が確立されているのだとか。

「私の場合は仕事柄いろいろなお店に行きますが、『うしお』さんに来た時は、ソース、酢、一味唐辛子、ゴマ油をかけて楽しんでいます」と、牧田さんがお気に入りの食べ方を教えてくれました。
▲「自分なりのローメンを楽しんで!」とお二人。マヨネーズをかけて食べるのもおすすめだそうで、店員さんに声をかけると持ってきてもらえる

ご飯ともよく合い、ガッツリおなかを満たしたい方にも大人気の「うしお」。伊那市でローメンを食べるなら外すことのできない名店です。
「“汁あり”も“汁なし”もどちらもローメン。それぞれ違うおいしさがあるので、食べ比べてみてほしいなと思います。中華料理店や居酒屋など、市内各地のお店でローメンを食べることができるので、ぜひ食べにいらしてくださいね!」(牧田さん)

みなさんも、ぜひ現地でローメンを食べて、お気に入りの味を見つけてみてください。

伊那ローメンズクラブ

(写真・平松マキ)
松井さおり

松井さおり

出版社勤務を経て、フリーランスのライター&編集者に。雑誌や書籍を中心に、主に、食・旅・くらしなどにまつわる記事を執筆している。現在は、東京から長野県長野市に拠点を移し、県内外を奔走する日々。(編集/株式会社くらしさ)

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