NTTコミュニケーションズが3月22日、MVNOサービス「OCN モバイル ONE」における通信品質向上の取り組みについて解説した。
ネットワークサービス部 オープンネットワークサービス部門の半田篤志氏によると、OCN モバイル ONEでは、1人あたりのトラフィックが年間で20%ほど伸びているという。契約コースの平均データ容量も伸びているが、こちらは年間約10%の伸び率に落ち着いている。OCN モバイル ONEのトラフィック特性は、固定回線と同様に「少数のヘビーユーザーが全トラフィックの過半数を占めており、過半数のライトユーザーはほとんどデータ容量を使っていない」(半田氏)という。
特に使われている通信プロトコルは「https」が約5割で最も多く、YouTubeアプリで使われているプロトコル「QUIC」の利用率も最近は伸びている。
料金プランのデータ容量を使い切り、月末に通信制限されるユーザーが多いのは他サービスと同じだが、OCN モバイル ONEでは1日110MBか170MBのコースもある影響で、月末の通信制限はある程度抑制できているという。
増え続けるトラフィックに対し、NTTコムはどのような対策を施しているのだろうか。まず半田氏が挙げるのが、低速通信時の「バースト転送」だ。
OCN モバイル ONEでは低速時は速度が200kbpsまで制限されるが、バースト転送では150KBまでの読み込みなら高速通信と同様のスピードを維持する。例えばSNSの新着フィードを取得する程度なら、スムーズに読み込めるという。実際、ユーザーからの低速時の評価は高く、「『低速最強』というコメントも見受けられる」と半田氏。他社だとIIJもバースト転送を導入しているが、対象となる容量は75KBで、OCNの方が高速で読み込める容量が大きいのも同氏は差別化要因に挙げた。
もう1つの対策が「TCPの最適化」だ。パケット送信のタイミングを混雑状況に合わせてコントロールすることで、パケット再送を抑えて通信速度を向上させる。また、パケット再送が起きたときは、OCNのWebサーバではなくトラフィックコントロール装置からドコモのネットワークへ送信することで、応答時間を短縮させる。実際、最適化をした方が、最適化なしと比べて混雑する時間帯でも画像をスムーズに表示できたという。
大容量のhttps通信に対しては「SSLペーシング」を活用。混雑時にデータの送受信ペースをコントロールし、パケット破棄に伴う再送を抑えることでネットワークへの負荷を減らし、通信速度の向上を図っている。
また、https通信で動画を視聴する際、先のデータまで読み込む「バッファリング」を抑えることで、途中で視聴をやめた際のデータ消費を抑えられる。SSLペーシング無しだと、このバッファリングの範囲が長いため、多くのデータを消費しやすくなる。動画コンテンツをザッピングするようなシーンで有効だ。
トラフィックの増加傾向に合わせて設計帯域を見直し、2018年2月に帯域を増強したところ、ランチタイムの速度は大きな変化が見られなかったが、夕方~夜間の速度は改善が見られたという。
今後は、YouTubeアプリで使われているQUICプロトコルに対するペーシングや、オプトイン(ユーザーに承諾を得る)前提で静止画や動画の圧縮などの導入も検討していく。
現在のところ、通信品質を評価する指標はスループット(Mbps)が定着しているが、「1Mbpsや10Mbpsが持つ意味は、利用するコンテンツによって異なる」(半田氏)ため、通話品質を計る「MOS値」のような、新たな指標を提示できないかも模索していく。現在使われている「スピードテスト」に代わる新たな測定ツールを、NTTコム自身が独自に開発していくことも視野に入れている。ただ、「(新たなツールは)エンドユーザーは自分で測定できない」(半田氏)ものになるため、「一般的なものと併用して見せていくのが大事」とした。
ヘビーユーザーへの規制についは慎重な姿勢だ。OCN モバイル ONEでは、200kbpsの低速通信時には3日間で366MBまで、といった規制は設けていない(2014年10月に撤廃)。半田氏は「そういった規制がないからOCNを選んでいる人もいる。大容量の通信をするユーザーが悪かどうかを分析しないといけない。現時点で大容量ユーザーを追い出したり規制をかけたりするかは判断できていない」とコメントした。低速通信なので大容量のデータをやりとりするのが難しく、全体のトラフィックに大きな影響を与えていないためだと思われる。
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