世紀のパロディ「フランク三浦」の末路

「フランク三浦」の製造販売元、ディンクスの下部良貴社長に聞く

2018年3月23日(金)

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 国境を越えて広がる知的財産権に対する意識の高まり。多くのグローバル企業が特許や商標権などの侵害を巡って国際紛争を繰り広げている。そんな中、一部の腕時計ファンから世界的注目を集めた一大国際紛争が昨年決着した。「フランク・ミュラーvsフランク三浦紛争」だ。

 時計の企画開発などを手掛けるディンクス(大阪市)の下部良貴社長がフランク三浦の開発を思い立ったのは2011年頃。あくまで「パロディ商品」と位置付け、価格はフランク・ミュラーの100分の1以下に設定。「時計の歴史を200年早めた時計職人ブレゲの再来」と言われるミュラー氏に対し、「グレコローマンスタイル400戦無敗の謎の天才時計技師・フランク三浦氏(4ページに写真)が立ち上げたブランド」などと主張して市場投入に踏み切った。

 しかし、「こそばかして、笑い飛ばしてもらうつもりだった」大阪流の笑いは、世界を席巻する超一流ブランドには通用せず、相手側は反発。商標登録を巡る紛争は知的財産高等裁判所にまでもつれ込むトラブルに発展し、大阪の普通の中小企業は「注目の国際紛争の主役」になってしまう。係争勃発から6年。下部社長が今、全てを語り切る(注:こそばす=くすぐる、方言)

聞き手は鈴木信行

 「宝くじで1億円当たった人」「事故物件を借りちゃった人」「キラキラネームの人」「電車で『中ほど』まで進まない人」「8時間以上寝る人」など、誰もが気になる23編の「末路」をまとめた書籍『宝くじで1億円当たった人の末路』。おかげさまの大反響で、あっという間に14万部を突破しました(右の書影をクリックいただければ購入できます)。

 そしてついにこの春、本書を原案にした連続ドラマの放映が決定しました。日本テレビの深夜ドラマ「シンドラ」第4弾『○○な人の末路』は、2018年4月23日の月曜深夜24時59分からスタートします。ドラマ放映前に原案本を読むもよし、連続ドラマを楽しみながら原案本を読み進めるもよし。映像化された末路ワールドにもぜひご期待ください。

「末路本」の詳細が気になる人は…

下部 良貴氏
(しもべ・よしたか)
1970年生まれ。PL学園高校を経て大阪学院大学。大手商社を経て2001年にディンクス設立。2012年「フランク三浦」を商標登録したものの、15年特許庁はフランク・ミュラー側の申し立てを受け登録取り消し。17年最高裁にてフランク三浦側の勝訴が確定した。

それにしても随分と大きな相手に戦いを挑みましたね。

下部:違うんですって。ほんの少しふざけただけなんです。まず、ウチの商売を説明しますと、海外製腕時計の並行輸入やオリジナル腕時計の企画開発が主力業務なんですが、価格帯で言えば、20万~30万円が天井で、数万円といったチープなものを中心に扱っています。

数万円でも「チープ」なんですか。

下部:腕時計の世界では、高級帯というのは数百万、数千万円の世界ですから、それに比べるとチープという表現になります。でも腕時計ファンというのはなかなか厳しくて、その数万円クラスの時計に対し、数百万円レベルの品質なり動作性能を保証してほしいといったクレームが結構来るんです。

「気休め」で開発した商品だったが…

なかなか厳しい商売だと。

下部:例えば、トゥールビヨン(機械式時計の弱点をカバーした、時計技術の中でも最も複雑とされる機構)。2006~07年には数千万円はしたトゥールビヨンを量産品として20万円を切る価格で出しました。でもそうすると、1日の遅れを5秒から3秒に調整してほしいといった申し出を頂くんです。作り手にしてみたら、2000万円とか3000万円とかするトゥールビヨンが20万円で手に入るのだから、そのくらいは堪忍してくださいという気持ちもあるんですが、商売ですからそうも言っていられない。そのほかにも機械式の手巻きのクロノグラフとか複雑な機構をずっとやっていました。

庶民には手が届かないマニアックな高級腕時計をリーズナブルな価格で市場に送り出すビジネスモデル。しかもマニアが多い腕時計ファンが相手。コストと品質をハイレベルで両立させる上で非常にエネルギーを使う商売、というわけですね。

下部:そこで、逆に気休めじゃないですけど、もっと肩の力を抜いたおもろい企画もたまにはやろうよという話になって、フランク三浦ってのはどうかと言ったら、社員が1人、笑ったんですね。それで開発に踏み切ったんです。1個3000円ぐらいで細々とやろうと。世の中に広める気などありませんでした。

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「世紀のパロディ「フランク三浦」の末路」の著者

鈴木 信行

鈴木 信行(すずき・のぶゆき)

日経ビジネス副編集長

日経ビジネス、日本経済新聞産業部、日経エンタテインメント、日経ベンチャーを経て2011年1月から日経ビジネス副編集長。中小企業経営、製造業全般、事業承継、相続税制度、資産運用などが守備範囲。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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