前回記したコラムについてコメント欄で素晴らしい議論が行われている。

前回のコラムにおいて、私は「不妊治療は真水で少子化対策になる」「全額国費負担にすべきである」と主張した。

それに対して「自分たちが選んでなかなか結婚も妊活もしてこなかった夫婦は自己責任ではないか?」「そんな人たちの不妊治療を税金で賄うのか?」という確かにもっともな意見が出されている。

結論から言えば、この指摘は正しい。
はっきり言って、生物学的に15・6歳~32・3歳までが一般的な出産適齢期であることは霊長類サル目ヒト科の常識である。
にもかかわらず、自分たちでその時期を好き勝手過ごし「なかなか妊娠できないんです~」と言ってもアホか、と言いたくなる気持ちは正解だと思う。

しかし、そう主張する多くの方に分かって欲しい事実がある。

私は前回のコラムでも申し上げた通り、不妊治療の生の現場をイヤというほど取材してきた。
不妊治療は…不妊治療は…経験したことのない方々には分からない事情が本当に沢山あるのだ。

そもそも、一昔前までは妊娠できない女性のことを罵倒する差別用語まであったほどだ。
が、最新の研究では、そもそも不妊のおよそ半分に当たる50%ほどが、実は男性サイドの精子に問題があることが判明している。

男性諸君に問いたい。



オマエさー

精子、死んでんじゃん?

ちょっとさー

検査行ってこいや



そう言われて行くか?病院、行くか?正直に答えて欲しい。そんなこと言われて行くか?行って病院で
「あぁ、あなたの精子、活動してませんね~」
とスッキリ言われたら、あなたどうだ?

これが現実として突き付けられるのが不妊治療。
可愛いマスク付けた看護婦さんに

「はい、これでお願いしますね~~~」

と言われてDVDプレイヤーを渡される。
DVDプレイヤーと一緒に5本ほどのDVDが入っている。
いわゆるエッチなビデオだ。
さっさと精子を採取できるように、各ジャンルが入ってるケースが多い。
制服もの。
アイドルもの。
巨乳。
スレンダー。
痴漢もの。
大体、こんな感じのラインナップになる。

これ、看護婦さんに手渡されて、精子取れと命令されて、挙句に

「あー精子、ちょっと動いてないですね~」
と言われる。

これが不妊治療の現実。


分かる。
「自業自得だろ」
と言いたくなる気持ちは分かる。
しかし、不摂生を繰り返し運動もせずになることの多い生活習慣病由来の病気などと違い、不妊治療の最大の問題は

「何一つ悪くないのに生まれつきの問題でハートにかなりのダメージを受ける」

事だ。これは目の前で取材したか、実際に体験したことのある人しか絶対にわからない。きついなんてもんじゃあない。

検査しなかったんだろー
じゃあ自業自得じゃん!

分かる。分かるのだが、現実的に不妊治療はそんな楽なもんじゃあないのだ。病院に行きたくないのだ。現実を知りたくなくて。あまりに生物としての自分を否定されているみたいで。
あと、忘れて欲しくないのは

とにかく、今の日本の少子化は「待ったなし」「何とかしなきゃヤバい」ところまで来ているという現実だ。
本当に深刻とかどうとか言ってられる状況じゃないレベルだ。

なので、私の主張は

不妊治療は無差別に全額国費負担だ。

皆さんが理解できないもの分かる。
実際に見てみないと、本当に理解は難しいと思う。