全メンバーが登場したこの連載のオオトリを飾るのは、この人しかいない。ナインティナイン・矢部浩之。個性が強すぎるメンバーたちが集結した番組のリーダー的ポジションとして、常識的な視線で冷静に進行し、テレビバラエティーでの芸人としての姿の新しいカタチを創造してきた。『めちゃイケ』が終了したら芸人・矢部浩之はどうなっていくのか。そんな純粋な興味のほか、2010年に相方・岡村隆史が休養した時期に感じたことなど、ファンが知りたいと思っていることを予測しながら、たっぷりと話してくれた。
終了報告を聞いた感想は「終わるの遅いわ!」 ほかのメンバーとは違う片岡飛鳥との関係性
番組終了を聞いた直後の僕の感想は2つありました。1つはほかのメンバーと同じようにビックリ、もう1つは「終わるの遅いわ!」。僕は、飛鳥さんの判断で終わるんじゃなくて、視聴率が悪いから局の編成部とかの判断で終わらされるっていうのがすごく嫌で、人から終わりって言われる前に、潔く自分たちで決断したいっていう気持ちがありました。番組終了を聞いた直後は誰の判断で終了決定したか分からなかったから、人から終わりを決められたのなら「遅いわ」って感じて。でも、その後に飛鳥さんから「直接的なことは言われていないけど、俺の判断で決めた」って聞いて、僕と考えていたことは同じだったんだな、と。
僕と飛鳥さんの関係って、ほかのメンバーと比べても特殊ですね。みんな若い頃からやってきたから、『めちゃイケ』が「学校」で飛鳥さんが「先生」ってよく言ってたけど、僕は一人だけポジションが違って、演者だけどなかなかの制作スタッフ寄りだから(笑)、その感覚じゃないんですよね。演者だったら聞かなくてもいいことを聞かされたり、“裏回し(※)”っていうポジションも任されたり。最初は“裏回し”っていうのも「それなんやねん、表で回させろよ。都合ええなぁ」って思っていたし、若い時はギラギラしていたから前に出てツッコんだりしていたけど、いま考えたらキャラにないことを無理してやっていたから、自然といいポジションに誘導されていった感じで。それに、ほかのメンバーは飛鳥さんから「怒られた」って言うんですけど、僕は一度も怒られたことがないんですよ。だから、自分の中では学校とか先生っていう例えが当てはまらなくて……、「就職」していた感覚かな。だから、番組終了も「卒業」っていうより「転職」ですかね。
神輿に担いだ相方の休養…でも「ピンチだなんて全く思ってなかった」
相方が休養した理由は、レギュラーの仕事にほかに1人で映画に主演して、自分の演出で一人舞台もやろうとして、お笑い以外の仕事をいろいろとやろうとしすぎてパンクしたんです。今でも「あの時は大変だったでしょ?」って聞かれるんですけど、ピンチだなんて全く思ってなかったです(笑)。芸人になってずっと2人の仕事ばかりだったから、1人の仕事が新鮮で楽しかった。でも、周りの人たちは「大丈夫?」って気を遣ってくれるし、その温度差を合わせるのが難しかったですね。『ぐるナイ』の「ゴチになります!」の時なんて、進行の羽鳥(慎一)くんがナイナイのことを大好きだから、収録中に急に泣くんですよ。「なんで泣いてるの?」って聞いたら、「矢部さんが一人で頑張ってるから…」って言うから、「やめろ、お笑い芸人にそんなこと言ったらアカン!」って思っていました(笑)。
――予定していた時間を大幅にオーバーしながら、トーク番組のように分かりやすく、笑いどころをたくさん盛り込みながら話してくれた矢部浩之。彼の思いに迫った貴重な機会となったため、その言葉を余すところなくお届けするためにインタビューを2回に分けることにする。後編は来週29日に掲載。
◆矢部浩之(やべ・ひろゆき)1971年10月23日生まれ。大阪府出身。1990年4月に高校のサッカー部の先輩・岡村隆史とナインティナインを結成。1992年「ABCお笑い新人グランプリ」、93年「上方お笑い大賞」受賞。『めちゃイケ』では進行役として番組を巧みに仕切りながら、2011年の『27時間テレビ』では100キロマラソンに挑戦し、見事に完走した。現在フジテレビ『アウト×デラックス』やテレビ朝日『やべっちFC』などに出演。