記事

橋下徹「これが疑惑真相追及の極意だ」

1/2

安倍晋三首相や首相夫人への「忖度」はあったかどうか。国会ではそんな論点で議論が続き、貴重な時間が空費されている。財務省文書書き換え問題の本質は何か、解決に導くには何が必要か。橋下徹氏が提言する。プレジデント社の公式メールマガジン「橋下徹の『問題解決の授業』」(3月20日配信)より、抜粋記事をお届けします――。

(略)

■財務省本省と出先機関とでは政治家への配慮の仕方も違う

今、安倍政権に対して財務省の忖度があったのか、なかったのか、ということが国会で激論されている。元官僚を中心に、財務省が政権に対して気を遣うはずがない、という意見が多い。これも1つの現実。

(略)

財務省は時の政権がどうなろうが、とにかく消費税を増税するんだという強烈な意思を持っていた。時の政権とやり合って抑え込んででも、増税を実現しようとする意気込みがありありだった。

こんな状況を知っている元官僚は、財務省が首相や政権に配慮することはない、忖度することはないと主張する。むしろ財務省は安倍政権を倒したかったはずだ、とも。

しかし元官僚も、霞が関のエリート官僚。自分たちも政治家をバカにしてきたんだろうね(笑)。彼ら元官僚は地方の役人の実情には疎い。この点が、僕が地方分権を訴える根拠の大きな柱なんだよね。中央省庁の官僚は、東京での感覚で全てを考え、地方の実情に疎い。だから地方のことは地方に任せろ、とね。

地方の役人は、中央省庁の役人のようにおこがましくない。しかも国家公務員一種試験合格者ではない、いわゆるノンキャリアと呼ばれる職員は、やっぱり政治、特にうるさ型の国会議員や政権に対して、畏怖しているよ。これが地方の現実。中央省庁の地方の出先機関に限らず、地方自治体の職員だって、国会議員やそれこそ中央省庁の官僚に気を遣いまくってる。こういう現実を中央省庁の官僚OBは知らないんだよね。

(略)

国会では連日忖度の有無が論じられている。でもこれは不毛だね。人間心理を読めていないよ。

野党は、財務省は政権を忖度したと言い、政府与党は、政権に忖度したのではなくて、森友学園に超例外・異例・杜撰な契約によって大幅値引きで土地売却をしてしまったチョンボ隠しのための組織防衛で役人組織が単独で書き換えをやったという。元官僚たちは佐川宣寿氏(元財務相理財局長)が出世を考えて自己保身に走ったという。

でもね、これらはどれか1つの択一的なものではない。全て複合的に存在するというのが真相だろう。

刑事裁判でも犯人の動機ってほんと複雑なんだ。だから今国会がやっているように、全ては安倍さん・安倍政権に対する忖度だという野党の主張も、組織防衛や自己保身で安倍政権への忖度は全くなかったという政府与党の主張も、いつまでたってもどちらかに軍配があがるという結論は出ないよ。

両方あったんだから。

(略)

■会計検査院の報告書に基づき今回の大幅値引きに根拠がないことをまず確定せよ

今回の森友学園問題は大きく2つに分けて考えなければならない。森友学園に大幅値引きで土地を売った問題と、公文書書き換え問題。この2つはごっちゃにしてはいけない。そして忖度についても、地方の出先機関である近畿財務局と財務省本省を分けて考えなければならない。

(略)

近畿財務局と森友学園の大幅値引き土地取引がスーパー・スペシャル例外契約であったことをまず確定しなければならない。この点、今の国会答弁を見ても太田充財務省理財局長は認めないね。相変わらず「適正な取引だった」と強弁している。これが不適正であることは会計検査院の報告書で明らか。何から何までもが異例ずくめの契約で、特に大幅値引きの根拠となった土中ゴミ処分費の積算がむちゃくちゃだったことは明らかになっている。これをずっと適切な一般的な取引だと言い続けた佐川氏や、そこをきちんと確認しなかった麻生太郎財務大臣、安倍政権の責任は重い。

今回の土地取引は、確かに官僚に与えられたルールの中でやっているのかもしれないが、それは今までにやったことのない例外の積み重ねをやっている。そして例外をやるために必要な根拠の確認が不十分だったし、今となって根拠資料は全くないみたい。

財務省や安倍政権は、仮に「適切な取引」であったとしても、それは「通常の一般的な」取引なのか、「例外を積み重ねた異例中の異例の」取引なのか、「例外・異例をやるための根拠はきちんと存在するのか」を明確にしないといけないね。佐川氏は「一般的な取引だ」と国会答弁しているけど、これは明らかに嘘だ。これは行政を経験した者が今回の土地取引内容を見ればすぐに分かることだ。

今も太田充財務省理財局長は「適正な取引だった」を繰り返しているけど、会計検査院の報告書によれば、それは堂々と適切な取引だったと言えるような土地取引ではないよ。野党国会議員も、いきなり安倍政権が違法・不正な介入をやったということを明らかにする大ホームランを狙わずに、まずは会計検査院の報告書を基に、今回の大幅値引きの土地取引がスーパー・スペシャル例外・異例契約で、大幅値引きの根拠が全くない杜撰な契約であったことを太田充理財局長に認めさせるところからスタートしないとね。

(略)

役所職員は真面目に仕事をする反面、うるさ型の人物に弱いところもある。

土中からゴミが発生したので売主である近畿財務局の責任を追及する。学園の開校が遅れたら損害賠償請求する意向を示す。売買代金の減額を要望する。これら籠池氏の主張・要望は違法・不適切なものではない。もっとえげつない主張をする人は大阪にはたくさんいる。

こういう交渉の際に、相手の弱いところをついていくのも交渉のノウハウだ。籠池氏は、ここで少し親しくなった首相夫人の昭恵さんの名前を最大限に活用したのだろう。

財務省の地方出先機関の役人なら、この問題を早いところ片づけて籠池氏から解放されたいという気持ちがあったであろう。しかしそこに昭恵さんの存在が全く頭にちらつかなかったかと言えば、それも完全には否定できないはずだ。

(略)

■野党の追及は稚拙。順番が違う!

野党の追及の仕方も稚拙だね。いきなり違法不正を暴こうとしても、ある程度の証拠も持っておらず、30分ほどの質問時間で、しかも手続法・証拠法にも無知な国会の場で、本人に自白させようと思っても無理に決まってる。そんな簡単に自白させることができるなら、警察や検察の捜査機関も日常、苦労しないっていうの。

まずはしっかりと攻めることができるところから攻めないとね。真相追及というのは政策論争と違って地味なもんなんだよ。数少ない証拠や客観的事実、状況証拠を積み上げて、推定していくプロセスだ。自分の手柄を見せつけようとする国会議員にはなじまない仕事。まずは「手続き」のおかしさを攻めてくのが王道なんだけどね。

近畿財務局が大幅値引きして森友学園に土地を売却した手続きはボロボロに杜撰。会計検査院の報告書に基づいて、まずはここを財務省や安倍政権にしっかりと認めさせる。まだ財務省は「適正な取引だった」と言い張っているようだからね。

そして安倍政権は外形的公正性の確保に弱い。

加計学園問題でも、安倍政権に違法不正があったとの立証はない。しかし、実質的な事業者選定のプロセスに入った段階で、その事業者とゴルフや会食をやることは違法不正がなくても外形的な公正性を害する。スーパー・スペシャルな契約の相手学園の名誉校長に首相夫人が就任するということも同様である。違法不正がなくても強く公正性を疑われるような状況は避けなければならないし、それを避けることができずに疑われた場合には、素直に謝って改めるべきである。

さらに一番の問題は、安倍政権のガバナンス責任だ。

森友学園問題が発覚した昨年2月から、安倍政権はどのように霞が関をコントロールしたのか。野党から大幅値引きの根拠がおかしいと追及されたときに、安倍政権はどこまで、どのようにそれを確認したのか。佐川前理財局長が国会答弁をするにあたり、答弁調整会議はどのように行われ、安倍政権はどのように関与し、指揮命令を出したのか。野党からある程度根拠のある指摘を受けた場合には、しっかりとそれを確認するのが政府の責任である。さらに役人組織が政権を騙し続けていたというのであれば、それも政府組織としては大問題である。陸上自衛隊日報問題と同じく、日本の政府は政治家によるガバナンスが不十分だということで、拡大した自衛権を政府に渡すことは時期尚早という結論にも至る。

安倍政権の痛恨のミスは、昨年2月に野党から大幅値引きの根拠である土中ゴミの不存在を指摘されたときに、すぐに敷地を掘り返してゴミの有無を確認すべきだった。校舎が建っていないグラウンド一部の土中にもゴミが存在しているとされて値引き計算されていたので、そこはすぐにでも掘り返すことができたのである。

(略)

■タレントの“CM責任”と同じ

今回、昭恵さんの名前が最大限に利用された。安倍さんや昭恵さんは、自分たちは被害者だという感覚なのかもしれない。しかしその認識も改めなければならない。

メディアに顔を出して仕事をしている者は、その顔を利用された場合に全く責任を負わないかと言えばそんな甘いもんじゃない。タレントにとって、ここは最も注意しなければならないところなんだよね。

タレントがCMや広告に利用されて、その業者が不適正なことをやった場合に、そのタレントまで非難を浴びるよね。法的に違法責任を問われなくても、そのことによって以後のタレント活動ができなくなったタレントはたくさんいる。テレビCMだと審査が結構厳しいけど、ネット広告だと審査なんてないようなもんだから、どんな事業者なのかほんと分からないところが多い。

僕は弁護士なので、弁護士としてどこかの事業者の広告物に名前を出して、その事業者の営業を保証しているように疑われることも避けなければならない。

世間から知られている者は、自らは違法不正なことをしていなくても、名前を利用されたときに一定の責任を負うのは、民間では当然のことだ。ましてや一定の信用力がある者なら、なおさらだ。もちろん名前の利用を承諾していなかった場合には別だけど。

昭恵さんは、首相夫人だ。破格の信用力があるし、日本の役所が一定気を遣うのは当然だろう。その名前を利用させるということには最大限の注意を払わなければならないし、実際に利用されて疑われるような事態に陥ったときには、ある程度の責任を負わされても仕方がない。

昭恵さんは、森友学園に名誉校長という形で名前の利用を認めてしまった。それまでにも籠池氏との関係も深くし、名前を利用されるような状況にもなってしまった。今回のように、その森友学園が昭恵さんの名前を最大限に活用し、実際に財務省としてスーパー・スペシャル例外・異例・根拠不十分な杜撰な契約を行って森友学園に大幅値引きで土地を譲っているという状況においては、昭恵さんや安倍さんは、名前を利用されてそのことが一定役所に影響したかもしれないことの不注意を素直に謝る、そして今後昭恵さん自身の活動において変に名前を利用されないように注意することを誓う、くらいの責任は果たす必要があるし、そのことで十分だと思う。何も問題はない!と強弁するのは違うと思う。

もちろん、違法不正がなかったことが前提だし、何よりも今回の土地取引の例外性・異例性・根拠不明の杜撰性の問題を明らかにして以後改める対策を講じなければならない。この対策は既に発表されているが、それで十分かどうかをまさに国会で議論し確認する必要がある。

あわせて読みたい

「橋下徹」の記事一覧へ

トピックス

  1. 一覧を見る

ランキング

  1. 1

    自殺職員父 安倍首相の神経疑う

    女性自身

  2. 2

    佐川氏退職金明かす財務省の思惑

    舛添要一

  3. 3

    韓国で相次ぐ反日フェイク報道

    NEWSポストセブン

  4. 4

    橋下氏「野党の森友追及は稚拙」

    PRESIDENT Online

  5. 5

    「iPhone X SE」近日中に発表か

    フォーブス ジャパン

  6. 6

    橋下氏 書き換えはチョンボ隠し

    橋下徹

  7. 7

    自民議員の訴える名誉毀損は誤解

    米山 隆一

  8. 8

    音喜多氏「私は何を間違えたか」

    おときた駿(東京都議会議員/北区選出)

  9. 9

    倉持氏元妻「山尾さんが寝室に」

    文春オンライン

  10. 10

    栄氏に新疑惑 妻に強化費720万円

    文春オンライン

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。

1234