フェイスブックCEO「間違い犯した」 第三者企業のデータ不正使用疑惑で
フェイスブックの創業者マーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は21日、選挙コンサルティング会社がフェイスブック利用者数千万人分のデータを不正利用していた疑惑について、同社が不正使用を引き起こすような「間違いを犯した」と認めた。
英選挙コンサルティング会社のケンブリッジ・アナリティカ社は、顧客である政治団体の代わりに、不適切なデータ使用を行ったと告発されている。
ザッカーバーグ氏はフェイスブックに投稿した疑惑発覚後初めての声明で、「背信行為」があったと述べた。
同氏はまた、アプリが利用者情報を「収集する」ことを現在よりはるかに難しくすると確約した。
ザッカーバーグ氏はさらに「私たちには皆さんのデータを守る責任があります。守れなければ、私たちにサービスを提供する資格はありません」「私がフェイスブックを始めました。そして、その最後の日まで、私たちのプラットフォームで起きたことの責任は私にあります」と語った。
ザッカーバーグ氏は何を約束したのか
過去および現在の問題について、ザッカーバーグ氏が発表したフェイスブック社の対応は以下の通り――。
- 同社が2014年に行った「データへのアクセス権限を大幅に減少」する変更前に、大量の情報へのアクセス権限を有していた全てのフェイスブックアプリを調査する
- 疑わしい動作をしている全てのアプリに「全面的で詳細にわたる監査」を実施する
- 詳細な監査に同意しない全ての開発者を排除する
- 個人を特定しうる情報を不正使用していた全ての開発者を排除し、「そのアプリの影響を受ける全ての人に報告する」
ザッカーバーグ氏が明かした、今後に向けたフェイスブックの対応は以下の通り――。
- 他の種類の不正使用を防ぐため、開発者のデータアクセス権限を「いっそう強く」制限する
- ユーザーが3カ月以上使用していないアプリに関しては、そのアプリの開発者が当該ユーザーのデータにアクセスできないようにする
- 名前、プロフィール画像、メールアドレスだけをフェイスブックに登録しているユーザーについて、ユーザーからアプリに提供されているデータを少なくする
- ユーザーの投稿や他の個人データにアクセスする場合は、フェイスブックに承認を得ることと契約を交わすことを開発者に要求する
ザッカーバーグ氏はまた、以下のように付け加えた。「ケンブリッジ・アナリティカと結びついた固有の問題は、今日以降の新しいアプリではもはやおこりません。過去に起きたことを変えるものでもないですが」。
「私たちは今後、私たちのプラットフォームをより強力に守り、私たちのコミュニティを安全なものにするために、この経験から学んでいきます」
疑惑の内容を振り返る
フェイスブックでは2014年、ケンブリッジ大学の研究者アレクサンダー・コーガン博士が開発した性格診断クイズ「This is Your Digital Life(これがあなたのデジタル生活)」がユーザーに提供された。
クイズに回答したユーザー27万人のデータが収集され、それだけでなく回答ユーザーとフェイスブック上で友達になっている人の公開データも集められた。
フェイスブックはその後、開発者がこの方法で大量のデータを集めることをできなくする変更を施したが、告発者のワイリー氏は、データ収集に際してのユーザーの同意取得を定めたルールの厳格化以前に、ケンブリッジ・アナリティカ社が約5000万人分のデータを収集したとしている。
ワイリー氏は、データはケンブリッジ・アナリティカ社(ケンブリッジ大学との関係はない)に売却され、ユーザーの心理学的な輪郭を描き出すとともに、彼らに親トランプ氏的な素材を送り届けるのに利用されたと主張している。
ケンブリッジ・アナリティカ社のアレクサンダー・ニックスCEO(20日に停職)は、同社が2016年の米大統領選でドナルド・トランプ氏陣営のデジタル向けキャンペーンを運用したと語っている様子を英チャンネル4の調査報道チームによって秘密裏に撮影された。
「全ての調査、全てのデータ取得、全ての分析、全てのターゲティングを私たちが行いました。私たちが全てのデジタル向けキャンペーン、全てのテレビ向けキャンペーンを運用し、私たちのデータが全ての戦略の基盤となりました」とニックス氏は付け加えた。
コーガン博士は、ケンブリッジ・アナリティカは行った全ての行為が合法だと説明されており、自分はケンブリッジ・アナリティカとフェイスブックによって「スケープゴート(いけにえ)」にされたと語った。
ケンブリッジ・アナリティカ社の反応は
ケンブリッジ・アナリティカ社はあらゆる不正を否定している。
フェイスブックによると、ユーザーデータは合法的に取得されたが、ケンブリッジ・アナリティカはデータを削除したと言っていたにもかかわらず実際には削除していなかったという。
この点について、ケンブリッジ・アナリティカは、フェイスブックに求められた際にデータは削除したとしている。
ケンブリッジ・アナリティカは、インターネット上で政治家の信用性を傷つける戦術を同社が使えるとしたニックス氏の発言を受けて、同氏を停職処分とした。
ただ同社は、チャンネル4ニュースに隠し撮りされた発言に関する報道が、ニックス氏の発言を「大きく歪めている」とも語った。
どんな調査が予定されているのか
複数の米上院議員は、フェイスブックがどのようにユーザーを保護しようとしているのかを連邦議会で証言させるため、ザッカーバーグ氏の召喚を求めている。また、消費者保護を担う米連邦取引委員会(FTC)がフェイスブックへの調査を開始したとも報じられている。
欧州議会の議長も、データが不正使用されていないか調査するだろうと語った。
英国のデータ保護を管轄する情報コミッショナー事務局(ICO)のエリザベス・デナム委員長は、ケンブリッジ・アナリティカのオフィスを捜索するため、捜査令状を請求している。
一方、英議会委員会は、フェイスブック社の個人データ使用について証言させるため、ザッカーバーグ氏を召喚を求めている。
ケンブリッジ・アナリティカが2013年にケニアで行われた選挙に関与していた疑惑の調査を求める声もある。
<解説>「なかった謝罪」――デイブ・リー BBC北米テクノロジー担当記者(フェイスブック本社から)
ザッカーバーグ氏の声明から、私は大きく明白な一つのメッセージを受け取った。「フェイスブックは起こったことについて責任を取るつもりがない」というものだ。
悔恨がザッカーバーグ氏の長所であったことはない。疑惑の発覚から数日をかけて作成された今回の声明も、そこに違いはなかった。
当時あったデータに関する規約が、いかにして今回の事態につながるのを許したかについて、ユーザー、投資家、従業員に関する謝罪はなかった。
データの不正使用は2014年にも同じように行われていたが、なぜ2014年当時、フェイスブックは不正使用した企業を完全に排除するのではなく、注意するにとどめたのか。その説明もなかった。
フェイスブックがユーザーに、自らのデータが不正使用されているかもしれないと伝えられなかった理由も述べられなかった。厳密に言えば、同社からユーザーへの報告はいまだにない。
ザッカーバーグ氏の言葉は説明ではなく、法的・政治的な防御でしかなかった。フェイスブックは今回の事案が今後、多方面で戦いになることを知っているのだろう。
デイブ・リー記者のツイッターアカウントは@DaveLeeBBC
(英語記事 Facebook's Zuckerberg admits mistakes over Cambridge Analytica)