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半導体チップのトレンドの1つに、「牧本の波」と呼ばれるものがある。日立製作所で半導体事業担当の常務だった牧本 次生氏が提唱したと言われるトレンドで、半導体チップ開発の指針の中心が一定周期でカスタム化と標準化の間で入れ替わるというものだ。周期は7年と言われていた時期もあったが、2013年にIEEE Computer誌に掲載された牧本氏本人の解説では10年となっている。同氏は牧本の波が生まれる要因をさらに分析し、市場の状況に沿って顧客満足を与える要因が変わることで、カスタム化と標準化が行き来する背景を説明し、「半導体の振り子」と呼んで図示している。
牧本の波によると、2007年から2017年まではSoC(System on Chip)とSiP(System in Package)に代表されるカスタム化のフェーズだという。その代表例として、米アップル(Apple)の「iPhone」向け独自チップなどを位置づけている。そして2017年を境に、2027年までは「Highly Flexible Super Integration」と呼ぶ広い分野をカバーできるフレキシブルなチップが担う標準化のフェーズに入るとする。この牧本の波を参照した場合、現在の巨大企業による独自チップブームはどのように位置付けられるだろうか。
半導体の大口需要家による独自チップ開発の動きによる波及効果と、この動きに対峙する企業の身の処し方について議論している今回のテクノ大喜利。5番目の回答者はテカナリエの清水 洋治氏である。数多くの電子機器を分解し、中に搭載されているチップをパッケージから開封して調べている同氏は、独自チップがどのように作られているのかを熟知する立場にいる。同氏は、独自チップといえど半導体メーカーの支援なくては成立せず、独自チップブーム自体も一過性のものではないかとみている。そして、本命は牧本の波で予見された汎用性の高い標準チップだとする。
テカナリエ 代表取締役 技術コンサルタント