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 第2の課題は、金融サービスを支えるだけのシステム投資や運用体制の構築についてあまりに経験値が浅いベンチャーが多く参入しているという現実だ。

 コインチェックは取引用のアプリで財布のような通貨の取引を意識させないユーザーインターフェースを実現するなど、サービスやソフトウエアの使い勝手で利用者から高い評価を獲得していた。

 しかし、仮想通貨の流出を10時間以上も見過ごすなど、必要十分な不正検知の仕組みがあったかがそもそも疑わしい。同社は社員が普段使っている複数台のパソコンがメール経由でマルウエアに感染したことで取引システムの侵入を許したと発表しており、社内でのネットワークの分離も不十分など、セキュリティ対策には様々な問題点があった。

 同社は2度目の処分を受けた3月8日に再発防止策を発表。システムの全面的な見直しのほか、最高セキュリティ責任者を置くなどの対策を取った。システムリスク体制はようやく金融サービスとしてのスタートラインに立ったばかりといえる。

 交換所のコンサルティングも務めるカレンシーポートの杉井靖典社長は、暗号鍵を分散管理するなどセキュリティを高めていくと、人での運用も増え、取引所の運営コスト増が避けられないという。

 例えば、マルチシグネチャー方式を採用して最低2個以上の暗号鍵を使い、コールドウォレット方式でセキュアに管理するためには、承認者も含めて最低6人の専任スタッフが常時必要になるという。

 仮想通貨事業にはLINEやサイバーエージェント、インターネットイニシアティブ(IIJ)なども参入を予定しており、今後は独自通貨の発行を予定するメガバンクも含めた大手企業が参入してくる。

 このまま一般投資家が安心して利用できる金融サービスとして脱皮して事業継続を目指すのかどうか。初期から参入している交換業者は、判断を迫られている。