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処分を受けた他の業者も相応の問題を抱える。2016年から交換所を運営するバイクリメンツはこれまで内部監査を実施していなかったほか、会社と顧客資産の分別が一部不適切で、必要とされる帳簿書類を一部作成していなかった。ミスターエクスチェンジも資産管理が不適切などの問題を指摘された。コインチェックやビットステーションなどこれらの5業者は金融庁に登録を申請している「みなし業者」だ。
一方、金融庁の審査を受けて申請が受理された登録済みの業者にも問題があった。このところ度重なるシステムトラブルを起こしていたテックビューロとGMOコインの2社だ。
テックビューロが運営する交換所「Zaif」は、2018年2月に仮想通貨をゼロ円で販売するシステム誤動作を起こし顧客7人に異常値で販売したことで、システム上では「2200兆円」もの仮想通貨を販売したことになるという不適切な取引処理が行われた。APIキーを悪用した不正取引が発生する事件も起こっている。しかし「経営陣は根本原因分析が不十分で、適正な再発防止策を講じてなく、顧客への情報開示も不適切」だったとして、金融庁は業務改善命令を出した。
GMOコインも同様にシステム障害などを度々起こしており、金融庁は「根本原因分析が不十分で、適切な再発防止策が講じられていない」として業務改善を命じた。
改善命令を受けた7社は3月22日までに改善計画を書面で提出。1カ月ごとに進ちょくを報告する必要がある。
無期限で営業できるみなし業者の“抜け道”
金融庁の一斉検査から見えた、仮想通貨交換業者が抱える問題は大きく2つ指摘できる。1点目は、処分を受けた7社のうち5社を占めるみなし業者の扱いだ。
2017年に施行した改正資金決済法では、登録制度が始まる以前から営業をしていた仮想通貨交換業者が登録を申請してから登録を受けるまでの間は営業を続けられる特例が設けられた。法律上、申請が続いている限り、みなしで営業できる期間に限りはない。
コインチェックなどのみなし業者の多くは半年近く審査を受けているものの、申請内容や審査上の問題があり登録を受けていない。にもかかわらずこの特例に基づいて営業を続けている。
しかし今回の検査で明らかになったように、会社と顧客の資産分別や内部監査、業務マニュアルの整備や研修など、根本的な体制ができていない業者が営業している状態を放置している格好だ。
一部報道によると、金融庁はみなし業者としての営業に期限を設ける方向で検討しているという。また金融庁がみなし業者への検査に踏み込み、交換所に要求される運営体制を指摘したことで、申請中ながら登録を断念する事業者が現れ始めている。会社オーナーによる私的流用が明らかになったビットステーションに、申請を出していた来夢(三重県鈴鹿市)とビットエクスプレス(沖縄県那覇市)を加えた3社だ。
みなし業者の扱いは3月中にも金融庁が開催する、仮想通貨交換業者に関する研究会で議論されると見られる。