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森友問題で大阪地検特捜部が「千載一遇のチャンス」と奮い立つ理由

一度は後悔しているからこそ

「存在意義が問われる」

「森友学園事件は、大阪地検特捜部にとって千載一遇のチャンス。官庁のなかの官庁の財務省がやれて政治が絡む。しかも国民注視の事件なので、“横やり”が入ることがない。これを徹底解明しなければ、大阪地検特捜部の存在意義が問われるでしょう」

こう検察捜査に期待をかけるのは、元東京地検特捜部副部長の若狭勝弁護士だ。

 

森友学園事件は、籠池泰典前理事長夫妻を詐欺や補助金適正化法違反の罪に問い、学園に国有地を安く払い下げたとして背任などの罪に問われている財務官僚については、3月末、不起訴処分で終結する予定だった。

だが、公文書書き換えという民主国家の根幹を揺るがす事態の発覚で、検察は「最終的な責任者」である佐川宣寿・前国税庁長官の逮捕も視野に入れた本格捜査に切り替えた。

解明すべきは財務官僚の役割と、官邸や政治家の指示の有無――。

検察が奮い立っているのは、単に新事実が出たから体制を強化して立件を目指しているだけではない。そこには、官邸の法務・検察人事への介入も含め、自ら体験している「官邸主導の限界」があり、その修正を迫る捜査になるという予感がある。

そこに至るには、疑惑発覚から1年強に及ぶ迷走劇があり、そうさせたのは「安倍昭恵首相夫人の存在を消さねばならない」という官僚の忖度だった。

その軌跡を辿ってみよう。

全ての発端

公文書書き換えの発覚以降、国会を取り囲むデモ、安倍政権を糾弾する集会が、連日、続くなか、森友学園問題に火を付けた木村真・豊中市議が、参院議員会館の大会議室で開かれた「安倍政治を終わらそう!3月19日集会」で、次のようにアピールした。

「情報公開請求すると、国有地の売却金額が黒塗りだった。そこで開示を求めた行政訴訟を起こしたのが森友問題の始まり。今、公文書書き換えの追及で疑惑の詰めの作業が行われているが、行われていたのは全てを隠蔽すること。安倍昭恵夫人の森友への関与を隠すのが目的だった」

木村市議らの動きが『朝日新聞』のスクープと連動して森友学園問題に火が付いたのが昨年2月。その直後から、安倍1強体制のなかで行われたのは、官僚機構の安倍政権への忖度であり、具体的には籠池夫妻に取り込まれて「瑞穂の國記念小學院」の名誉校長に就いていた昭恵夫人の存在を消すことだった。そのためには、まず国有地安値売却の事実を伏せなければならなかった。

国有地売却は公開が原則。近畿財務局が情報公開請求に「黒塗り」で応じたのは、「森友学園の信用・名誉を低下させる」という今から考えると噴飯ものの理由で、しかも「森友学園から強い要請を受けた」というのだが、当の籠池被告は、私の問いに「『(近畿財務局が)非開示にも出来ますが、どうしましょう』というので、『それならそれでお願いします』といっただけ」と、答えた。

その第一のカベを、木村市議と朝日に乗り越えられ、国会での追及が始まると、財務省がやったことは公文書の書き換えで昭恵夫人の存在と忖度の課程を消すことであり、検察がやったことは「証人」の籠池被告を逮捕することだった。

私は先週の本コラムで「すべてが安倍さんを守るために動いている」という籠池被告の証言を紹介、事件の歪みを伝えた。

(先週のコラム:「すべてが安倍さんを守るために動いてる」籠池氏が残した重い言葉

その歪みは、官邸が内閣人事局に代表される「霞ヶ関」の人事権掌握によって発生、官僚は忖度によってしのいできたが、それも限界に近付いていた。