助手席に座っているだけ……でも苦労は多い
スポーツカー……、それは男たちの永遠の憧れ。いえ、女にとっても憧れだった時代はありました。90年代にはとくに、彼氏がスポーツカーで迎えに来た女たちは、羨望の眼差しを浴びまくったものです。今でもポルシェ人気は変わらないし、マツダ ロードスターも女子ウケ抜群。トヨタ86を自分で運転したい! なんていうイケメン女子もけっこういるんですよね。
ただ、デートでスポーツカーの助手席に座るという行為は、女にとって数々の忍耐が必要なモノである、というのをもっと知ってもらいたいのです。いつも笑顔で助手席に座ってくれている彼女も、笑顔の裏では「チッ」と舌打ちしているかもしれないですよ〜。隣りを走るミニバンやセダンを、恨めしそうに見つめたりしてたら……可能性大です。
さあ、まずは見た目の問題から。スポーツカーって、そこにいるだけで良くも悪くも目立ってしまう存在ですよね。「どんな人が乗ってるのかな?」って、興味本位でとにかくジロジロ見られます。その無遠慮な視線に男は「どうだ、俺様の愛車いいだろ」と気持ちよく酔うのかもしれないけど、女は自分を査定されている気分になってしまうのです。「ハハァン、この程度か」とかね。それは、スポーツカーにはとびきりの美女が乗っているべき、という多くの人の固定観念のせい。ホント、いい迷惑ですよ。
そりゃ時にはね、女だってSNSなんかで「スポーツカーデート、見て見て」ってアピールしたくなるコトもあります。でも女には見られたくない日っていうのもあるのです。体調が悪くてメイクのノリがイマイチの日とか、寝坊してヘアスタイルがうまくいかなかった日とか、洋服が前回のSNSアップの時とカブってる日とかね。そういう、見られたくない時までジロジロと見られてしまう。そんなスポーツカーはできれば避けたいワケなのです。
さて、お次はスポーツカーの「低さ」が女の大敵な件。もうすでに、乗り込む時から気をつかうじゃないですか。ドアはたいていデカくて開けるのに幅とるし、サイドシルが太いモデルも多いから、大股開かないと乗り越えられないし、シートの座面が低いとどうしても身体をギュッと折りたたむことになって、胸元は見えちゃうしスカートはずり上がっちゃうし、もう大変。とくにミニスカートなんて履いてた日には、路上の人たちに出したくもないサービスショット連発ですよ。
さらに、走行中もスポーツカーでは気が抜けません。だって、トラックとかバスとかシートの位置が高い乗り物の人たちから、車内が丸見えですからね。足はきちんと揃え、胸元もピタリと押さえてないとダメだし、口紅とれちゃうから飲んだり食べたりも控えめにしないと……って、「あーもう疲れるわ〜」な感じです。でもそんな時に、運転席から「これ使いなよ」なんてサッとブランケットが手渡されたりしたら、それだけでキュンッときちゃうんですけどね。
で、ひとまず無事にシートに座れたとしましょう。そこからがまた、スポーツカーは女に厳しい。あの、ピタッと身体に密着するサイドサポート形状になっているバケットシートってやつは、深く腰掛けないと収まりが悪く、収まったら今度は身動きが取れず、座面の先端が盛り上がっているものだと足がフロアにつかなくてブラブラ状態。この体勢、けっこうキツいものですよ。走り出してGがかかったりすると、ずっと腹筋トレーニングさせられてる感じなんです。ステアリングという、つかまるモノがある運転席はいいですけどね。助手席で何もつかまらずにただ座っているのって、正直シンドイ。おまけに運転が荒かったりスピード狂だったりしたら、次からは乗車拒否ですね。
さらに走行中にイヤなものがもう一つ。それは、男たちが「いい音だろ〜」と悦に入りたがるエンジンサウンドです。はっきり言って、女には騒音でしかないですからね。暴走族と一緒。近ごろはただでさえ、クルマがどんどん静かになっているご時世なのに、そんな中で「ブオンブオン」なんて爆音を出されちゃ、周りの目も気になってうるさいというかもう、恥ずかしい! 車内の会話も邪魔されるし、長時間乗ってると疲労感を増長させるし、いいことなしです。その点では、ハイブリッドのスポーツカーならいいかも。
さて最後は、コンパクトなスポーツカーに多い弱点です。そう、収納&荷物スペースが圧倒的に足りない件。ドリンクホルダーさえない、というストイッックなスポーツカーも昔はありましたよね〜。2人で缶コーヒーを買ったら、助手席で彼の分まで持たされて、人間ドリンクホルダーにされちゃったり。1泊旅行でも女はアレコレ持ち物が多いのに、トランクに入らなくて「もっと荷物減らして」なんて言われたりもしたっけ。デートでショッピングに行っても、いちいち「これ積める?」って気にしなきゃいけないスポーツカー。こんな時、ミニバンなら何でも買えるのに〜ってなりますよね、そりゃ。
というわけで、スポーツカーデートへの憧れはあっても、一度経験すると女にとってはイロイロ残念なところがあるものですよね。でもまぁ、「そんなのぜんぜん気にしないわ」というスポーツカー歓迎女子もいるはずです、きっと。スポーツカー乗りの皆さまには、女がどう思うかなんてイチイチ気にせず、我が道を貫いて欲しいというのも本音です。