(英フィナンシャル・タイムズ紙 2018年3月20日付)
政治力とは銃身から生まれるものだと毛沢東は説いた。最近では、銃身と同じくらいマウスのクリックからも生じる。
2016年の米国大統領選挙への介入で英国のデータ分析会社ケンブリッジ・アナリティカが果たした役割を明らかにしたオブザーバー紙とニューヨーク・タイムズ紙の記事は、コンピューターによるプロパガンダ(宣伝工作)と大衆操作の潜在的な不正利用に厳しい光を投げかけている。
ケンブリッジ・アナリティカは5000万人のフェイスブックユーザーのプロフィールにアクセスしたとされ、そのおかげで米国人有権者の政治志向を推測し、共和党の大統領候補のドナルド・トランプ氏に有利になるよう、パーソナライズされたメッセージをこれらの有権者に送ることができたという。
「一人ひとりの有権者の耳にささやきかけるということだ」
ケンブリッジ・アナリティカの活動について内部告発したデータサイエンティストのクリストファー・ワイリー氏は、こう語っている。
そのおかげで、政治力を持った人々が、様々な人の耳に様々なメッセージを密かに送ることができた。「共通の理解がなければ、どうやったら社会が機能し得るのか」とワイリー氏は問いかける。
こうした出来事は、我々がインターネットという驚異の情報資源を、ロシア人のトロール(インターネットの荒らし屋)やイスラム主義のテロリスト、政財界のロビイストが怒りをばらまき、プロパガンダと嘘を売り込む「サーバー空間の肥溜め」にしてしまったことを裏づける新たな証左となる。