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嬉しいことに2週間前の本欄で公開した拙文に沢山の反応があり、楽しく読んだ。
拙文の骨子を再掲しておく。ロックバンドを従えて歌い踊る女性3人組の東京ドーム公演にどうしても行きたかったので、顧客に頼んで打ち合わせの日時を変更してもらった。ある50代のファンからこのように打ち明けられたが、その場にいた他の50代の思いは複雑だった。
「その場」は3人組の象徴である狐様(FOXGOD)のお面が掲げられているバー、「他の50代」も全員、3人組のファンであった。
拙文への反応は面識がある知り合いからのものと、会ったことがない読者によるものに分かれる。知り合いが電子メールで送ってきた長文の感想やSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)に書いた意見や問答を読み、返信した。知り合いではない方々のSNSへの投稿やインターネット上の掲示板でやり取りした履歴にも目を通し、一部に応答した。
古い知り合いは「確信犯一直線ですね。怖いものは何もない状況に至った感じ」とSNSに書いてきた。また、本欄担当者で拙文を最初に読んだ日経 xTECH副編集長の第一声は「まさか8本目があるとは思いもしませんでした」であった。2人とも「谷島は3人組のことばかり書いている」と受けとめたらしい。
xTECHに書いた最初の原稿(「記者の眼」欄)で「創刊されてもまたアイドルについて書くのですか」と編集長から聞かれたことに触れた。数えてみると前身のITproサイトに投稿した3人組が出てくる記事は7本もあった。編集長がそう言うのはもっともだから自粛する、と記した。
その直後に3人組が出てくる原稿を書いて送信したため、副編集長は困惑したとみられる。筆者としては「記者の眼」欄では自粛するものの「谷島の情識」欄は別だというつもりだった。
そういうことを言うから「確信犯」と指弾されるのかもしれないが、少々考え込んだ。5月から世界公演に旅立つ3人組は欧米を征服して帰ってくると確信しているがあくまでも自分の思いであり何かの犯行だと言われると困惑する。
SNSを介して知り合いに「たぶん誤解です。確信犯ならアイドルやバーの名前も書きますので」と応答した。同時に「仕事と人生に自分としてどう取り組むかという大テーマを書いたつもりでした」と付け加えた。
続編に当たる本稿では知り合いや読者の意見や感想を紹介しつつ大テーマについて書いてみる。3人組のグループ名や店名は引き続き伏せておく。
仕事第一を唱える人はほとんどいなかった
顧客との打ち合わせは仕事である。3人組の公演に行くのは自分の人生に関わることである。こう書いて気付いたが仕事は人生の一部であって人生に対立するものとは言えないが話の都合上、しばしば対立するとしておく。
対立があった際、とるべき態度ないし姿勢は3通りある。まずは顧客第一、仕事第一である。滅私奉公と言ってもよい。顧客が会議をやりたいと言った日に必ず開催する。予定を変えさせるなど以ての外である。
逆に自分第一、人生第一という態度もある。仕事の手を抜くわけではないが自分がやりたいことを最優先する。できそうもないことを依頼されたら「できない」と断る。
拙文に関連する意見や感想の数々を読んだ限り、仕事第一を唱える人はほとんどいなかった。といって自分第一を押し通す人もいなかったように思う。
投稿群を眺めていると、2日間に渡って開催された3人組の東京ドーム公演に両日行くため、経営する自社を2日連続で臨時休業にしたと語る人がいた。この方こそ自分第一の鑑だと一瞬思ったが、そういう姿勢では企業経営などできないだろうと考え直した。ちなみに2日の休みをもらえ、社員は喜んだそうだ。
仕事第一でも人生第一でもないとすると仕事と人生の均衡をとることになる。これが3番目の態度または姿勢で大半の方がそうであった。社会人である以上、仕事はきちんとこなす、ただし人生は自分のものだから楽しみたいことは楽しむというわけだ。
仕事と人生の均衡をとると言っても色々なやり方がある。楽しみたいことを楽しむため顧客の予定を変えてもらう人もいれば、楽しみたいことを楽しむが顧客の予定変更は極力避ける人もいる。