1990年代、中国から大量に輸入されるニンニクのせいで、韓国のニンニク農家が悲鳴を上げた。ニンニクが加工品も含め、国産の3分の1以下の価格で流入したのだ。韓国政府はニンニク農家の深刻な被害を認識し、2000年6月に未加工のニンニクを除き、関税を大幅を引き上げるセーフガード(緊急輸入制限)を発動した。
それに対する中国の対応にはあきれた。韓国製の携帯電話端末、ポリエチレンの輸入を全面的に差し止めたのだ。当時の韓国の中国産ニンニク輸入額は年間1000万ドル程度。それに対し、韓国の電子メーカーが中国に輸出する携帯電話端末とポリエチレンは年間6億7000万ドルを超えた。1000万ドルへの対抗策が6億7000万ドルだったわけだ。
中国というのはそういう国だ。国家間の貿易紛争で報復措置を取るにしても、3-4倍で対応すればやり過ぎだ。中国は67倍で対抗してきた。未加工のニンニクは輸入制限対象ではなかったので、実際には100倍返しだったと言える。韓国の貿易紛争の歴史でこんな例はない。正常な国家間交渉ではなく、一方的な屈服を要求してきたのだ。
中国は自国の利害に反する事案でそういう対応を繰り返した。終末高高度防衛ミサイル(THAAD)の配備決定を受けた限韓令(韓流制限令)、韓国への団体観光客ストップ、中国に工場を置く韓国企業による電気自動車用バッテリー販売締め上げ、ロッテマートの営業停止がそうした事例だ。
ある時、韓国で製作されたドラマが一斉に中国のテレビから姿を消した。韓国の芸能人が出演するドラマ・映画の製作も中断された。その過程ではいかなる法的措置、行政措置もなかった。むしろ中国当局は「限韓令など存在しない」「国民感情が反映された結果にすぎない」と主張した。団体観光客が途絶えたときもそうだ。しかし、そうした中国の国民感情はあまりに一糸乱れず表れる。中国には透明性と合理性がない。どんな法的手続きでそういう結果になったのかは知ることができず、説明もない。