両備「赤字バス廃止」が突き付けた重い意味
地方公共交通への競争原理導入は適切なのか
2018年2月9日、岡山県下やバス業界に衝撃が走った。両備ホールディングス(以下HD)の小嶋光信CEOが前日の8日に記者会見を開き、グループ2社(両備HD=両備バス、岡山電気軌道)が運行する路線バス78路線のうち、赤字幅の大きい31路線について、中国運輸局に廃止届を提出したとする発表が行われたのである。
新聞報道は西日本中心だったが、ネットニュース等でたちまち全国のバス業界や行政機関の知るところとなった。廃止届が出されたのは31路線(両備18・岡電13)で、全線廃止よりも部分廃止の路線が多いが、岡山、倉敷、玉野、瀬戸内の4市に関係し、総延長は約114kmに及んだ。20路線を9月末、11路線を2019年3月末に廃止するとしたが、その後通学利用に配慮して2019年3月末に揃えることとした。
競合の激化と内部補助
これだけなら単なる一事業者の路線廃止問題であるが、この背景には2002年の道路運送法改正以降のバス業界の動向と、それにともなう地域交通ネットワークの維持の難しさが浮き彫りにされている。すなわち、規制緩和にともなう参入の自由化を盾に既存の黒字路線に新規事業者が格安運賃で参入することにより、不当な競争が誘発され、黒字路線の減収の結果として赤字路線の維持が困難となり、生活交通のネットワークが崩壊してしまうという問題提起を含んだ路線廃止届提出だったのである。
岡山県中南部に広域に路線バスを運行する両備HDもご多分に漏れず利用者が減り、路線バスは7割が赤字路線となっている。これを高速バスなどの採算部門と一部岡山市中心部などの利益でカバーする、いわゆる「内部補助」で維持している実態がある。
ちなみに内部補助については、考えようによっては利用者の多い路線の運賃負担で利用者の少ない路線の赤字を賄っているという実態から、運賃負担の公平性の議論になることもあるが、筆者は、生活交通としてのバス路線が単独で収益事業として成立することは非常に難しい現状からすると、広く地域の交通ネットワークの維持・利便性確保のために行政も含めみんなで負担し合うという観点を持てば、容認されることと考えている。