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財務省は「森友文書」の真相が一発で分かる方法をなぜ使わないのか

「記録がない」はずがない

みんな「紙の書類」ばかり見ているが…

財務省が国有地を森友学園に払い下げた際の決裁文書を改ざんするという、あるまじき事件が発覚した。

裏事情や政局への影響は新聞や専門家、テレビのワイドショーに任せるとして、官公庁の情報システムのアレコレを取材してきた筆者が真っ先に抱いた疑問は、

「財務省は、公文書のアクセスログやタイムスタンプをどのように管理しているのか?」

「そもそもデータ改ざんが不可能なシステムを作ることはできないのか?」

ということだった。

この騒動は現在進行形なので、いつ何が飛び出してくるか分からないし、どこに着地するかも予測できない。だがひとつ確かなのは、「プリントアウトされた紙の文書の解釈」にばかり焦点が当てられ、憶測と類推を生み、問題の本質を見失わせているということだ。

一般論として、もし市民が公権力から不正を疑われたとき、公権力の側が「不正があった」ことを証明しなければならない。反対に、強い公権力を握る人物や組織が不正を疑われたとき、「データがないから分からない」という言い訳は通じない。そもそも、「データがない」はずがないのだ。

財務省でも、他省庁と同様にかっちりした公文書管理・電子決裁システムが構築され、厳密・厳格に運用されている。いまどき、システム上に文書編集の記録が残っていないとは考えにくい。

財務省は3月19日の国会答弁で、「首相夫人の名前が記載されていた文書が改ざんされたのは2017年4月4日だった」と公表したが、初めて分かったことではなく、もっと前から編集記録で一目瞭然だったはずだ。

 

ログを全て調べればいいのでは?

これまでの経緯から、4つの問題点を指摘できる。

第一には、財務省の公文書管理・決済システムには改ざん防止機能が備わっていないか、備わっていても管理が杜撰だということだ。

麻生財務相が強調するように、「理財局の一部の職員」による決済文書の「書き換え」が可能だったとすると、まずアクセス権限やパスワードが適正に設定されていたのか疑わざるを得ない。「決裁文書の最終版はロック付きのPDFにする」という簡単な規定すらなかったのだろうか。

第二には、重要文書の管理が職員個人のレベルで行われているという実態だ。

理財局の富山一成次長は「改ざん前の文書は、職員のパソコンの個人フォルダの、何回もクリックしなければならない深いところから見つかった」と説明している。この答弁からは、重要な公文書を「私蔵」するというデタラメを、財務省職員が日常的に行っていることがうかがえる。

三つ目は、財務省、国土交通省、文部科学省、大阪府など、関係する複数の役所が共有すべき情報(決済文書だけでなく、決済に至るプロセスや事由を示すエビデンス)が共有サーバーにバックアップされていなかったことだ。

国土交通省に渡されていた決済文書は、改ざん前の原本とも異なる版だったというから、話がますますややこしい。

四つ目は、もし文書ファイル自体から作成日時・更新日時が確定できないのであれば、文書のバージョン管理までも偽装されたのではないかということだ。

パソコンでこの記事を読んでいる方は、試しに手許のパソコンでデータファイルを右クリックしてみてほしい。ファイル名、データボリューム、タイムスタンプ(作成日時、変更日時)、フォーマットといった属性情報が表示されるはずだ。これはコンピュータの基本機能なので、特別な処理を施さない限り、属性情報を偽るのは難しい。

問題を追及する国会議員や報道関係者に、上記のような知識がないのも不思議な話だ。財務省に「アクセスログをすべて見せろ」と要求すれば時系列のアクションが読み取れるし、昨年4月10日の国会答弁で「短期間でデータが自動的に消去されて復元できないシステム」と答えた佐川宣寿・前国税庁長官のウソもすぐに追及できただろう。