【シリコンバレー=兼松雄一郎】米ライドシェア最大手ウーバーテクノロジーズ創業者のトラビス・カラニック氏は20日、ライドシェアで需要が減る駐車場の再生などを手掛ける不動産ベンチャーの最高経営責任者(CEO)になると公表した。ウーバーの事業と関係が深い派生事業を手掛けることになる。
カラニック氏は雇用創出を目指す投資ファンドを個人で設立したばかり。同ファンド経由で不動産開発ベンチャー、シティ・ストレージ・システムズに1億5千万ドル(約160億円)を出資し、経営権を握った。従業員は15人で、事業拡大に向け、採用を増やすという。ウーバーのダラ・コスロシャヒCEOは「おめでとう」とツイッターに投稿し、カラニック氏が返礼のツイートを投稿した。
シティ・ストレージ・システムズは、ウーバーと共同で店舗を持たない形の飲食店経営モデルを支援するサービスを手掛けている。ウーバーの宅配仲介を土台に宅配専用の業態への店舗再開発を手掛けている。カラニック氏は不動産開発によって、ウーバーの新規事業戦略を補完する役割を果たしていくことになりそうだ。
カラニック氏は需要が減った駐車場の用途転換にも力を入れる計画。ウーバーは駐車場の削減支援サービスを始めている。マンション、空港、スタジアム、劇場などの利用者、住民などに対しウーバーの利用費を補助し駐車場の需要を減らそうとしている。空港では既にライドシェアで駐車場需要が縮小し始めており、再開発の市場は急拡大していく見通しだ。
カラニック氏は不祥事を受けて、2017年6月にウーバーのCEOを辞任。現在も取締役として残るほか、ウーバーの大株主でもある。ウーバーのバーニー・ハーフォード最高執行責任者(COO)はカラニック氏の経営への影響について「取締役会には出席しているが、日々の経営には関わっていない」と語る。
カラニック氏直結で各事業がバラバラに相互の監督なく活動していた組織体制も見直したという。法令軽視の攻撃的な組織文化の象徴だったカラニック氏の影響力が薄れ、組織改革は加速している。