賃貸住宅市場、半分が「おとり物件」の衝撃

2018年3月20日(火)

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スーモなど5サイトが対策強化

有名情報サイトも4割超が成約済み
●主要情報サイト別の成約済み物件比率
●全サイトの成約済み物件比率の推移
注:イタンジがノマドで調べた全物件のうち「成約済み」の比率

注:イタンジがノマドで調べた全物件のうち「成約済み」の比率

 そこで不動産仲介業界でも本当の空き部屋だけを掲載するように促している。業界団体である不動産公正取引協議会連合会では、おとり物件を掲載している事業者に対し、厳重警告、違約金などの罰則を科しているほか、悪質な事業者については社名の公表に踏み切る対応を取っている。

 ただ、全国の不動産仲介会社数は10万社を超え、多くは中小の個人事業者。「各社がサイトに載せている情報を全て把握するのは事実上不可能だ」(不動産サイト運営会社の担当者)。しかも、おとり物件がなし崩し的に増えている現状が今回の調査結果からも、読み取れる(上の棒グラフ)。

 そうした状況を変えようと、スーモ、ホームズ、アットホーム、CHINTAI、マイナビ賃貸の5つの主要不動産情報サイトが動き出した。各サイトの運営会社で構成する、首都圏不動産公正取引協議会(東京都千代田区)の部会は11月16日、新たな対応策を発表。おとり物件の掲載を続ける悪質な仲介会社に対し、全物件の情報を5つの情報サイトに1カ月以上掲載できないようにする措置を、来年1月から始めることが決まった。

 だが、対策の強化がどこまでおとり物件の抑止につながるかは未知数だ。同協議会の斉藤卓事務局長は「情報の多寡が勝負を決めるネット時代には、物件の取扱数が少ない中小の仲介事業者は顧客を取ることが難しい。そんな競争環境が変わらなければ、おとり物件はなくならないだろう」と話す。

 仲介会社と消費者の情報格差を是正しなければ、おとり物件はなくならないとの指摘もある。不動産売買で買い主と売り主の双方から手数料を取る「両手取引」。売り主の不利益になるような不正取引が減らない裏には、同じく仲介会社の情報占有がある。

 おとり物件を巡る異常事態の一端が明らかになった仲介業界。サイトの対策強化だけでは、いたちごっこで終わってしまう。業界構造にメスを入れるべき時期が来ている。

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「賃貸住宅市場、半分が「おとり物件」の衝撃」の著者

林 英樹

林 英樹(はやし・えいき)

日経ビジネス記者

大阪生まれ。神戸大学法学部卒業後、全国紙の社会部記者として京都・大阪で事件を取材。2009年末に日本経済新聞社に入り、経済部で中央省庁担当、企業報道部でメディア・ネット、素材・化学業界などを担当。14年3月から日経BP社(日経ビジネス編集部)に出向し、製造業全般を取材している。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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