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【社会】官房機密費開示 月1億円、使っては補充
これまで全面非開示だった内閣官房報償費(機密費)の支出関連文書が二十日、初めて公開された。A4用紙九十四枚の開示文書に並んだ数字を追って垣間見えるのは、領収書不要の資金を一カ月当たり計一億円前後使っては補充する様子だ。安倍晋三首相は小泉内閣での官房長官在任時、毎月数千万円単位を複数回にわたって出し入れ。弁護団は「どんぶり勘定で使っていた様子がうかがえる」と疑念の目を向けた。 ▽突出「適正にやっていました。法に従って」。感想を聞かれて答えたのは開示対象の一人、河村建夫元官房長官だ。二〇〇九年九月、自民党から民主党(当時)へ政権交代する直前の麻生内閣で二億五千万円の支出があったのは知られていたが、今回の開示文書にも明記。同九月八日に五回にわたり五千万円ずつを国庫から入金し、同十日に政策推進費へ組み入れていた。 共に開示された安倍晋三首相、菅義偉(すがよしひで)官房長官の支出した額と比べても一カ月の支出としては突出し、鳩山内閣には残金ゼロの状態で引き渡された。使途については「前の官房長官からの申し送りがあってのことなので」と明かさず、情報公開の在り方を問われても「私が言うことじゃない」と述べるにとどまった。 ▽ざっくり開示されたのは、月に一~二枚ほど作成される政策推進費の使用額を記す「政策推進費受払簿」と、機密費の支出入を月ごとにまとめた「内閣官房報償費出納管理簿」、会計検査院への報告用の「報償費支払明細書」の三種類だ。 安倍氏は〇五年十一月~〇六年九月、ほとんどの月に政策推進費を数千万円規模で、最小単位もきりのいい数百万円とした額を二度に分けて引き出し、月に最大一億四千七百万円を支出。菅氏は一三年一月~十二月、毎月一括で七千八十万~一億四千九十万円を使っていた。 双方の月平均は九千数百万円で大差はないが、弁護団の谷真介弁護士は安倍氏の支出を「訴訟が始まる前なので警戒していないのか、かなりざっくりと引き出している。菅氏は数十万円単位の細かい金額が出ているが、安倍氏はどんぶり勘定で使っている」との見解を示した。 ▽難問安倍政権は情報提供者を保護する観点から、協力者の特定につながる情報や具体的な使途については非開示とする方針を堅持する。政府高官は「機密費は海外での情報収集活動にも使われる。諸外国は日本よりも潤沢な予算を確保している」と主張した。 ただ行政には透明性確保や情報公開が求められる流れの中で、政権側は機密費だけを完全な「ブラックボックス」にできないことも理解している。内閣官房幹部は「一定程度国民の目にさらされるのはやむを得ない。本来の目的に影響を与えない範囲でどう折り合いを付けるか。難問だ」と頭を悩ませる。 小渕内閣で官房副長官だった鈴木宗男氏も「国民の税金なので公にできるものは極力開示した方がいいが、表に出せないものがあるのも事実だ」と指摘した。 ◆「適正執行を徹底」 菅氏、全面開示は否定政府は、最高裁判決に従って内閣官房報償費(機密費)の関連文書の一部を原告側に開示したことについて冷静な受け止めを示している。菅義偉(すがよしひで)官房長官は二十日の記者会見で「判決に従い適切に対応するのは当然だ。国民の不信を招くことがないように引き続き適正な執行を徹底していく」と強調した。 ただ「国の機密保持上、使途などを明らかにするのは適当ではない」とする姿勢は堅持し、機密費の全面開示には応じない方針だ。菅氏は「最高裁判決でも、協力者の特定につながる情報や具体的な使途については、引き続き不開示になっている」と説明し、政府の立場に理解を求めた。 <官房機密費> 正式名称は内閣官房報償費。国の事業を円滑に遂行するために機動的に使うとされ、具体的な使途は公開されていない。官房長官の判断で自ら出納管理する領収書不要の「政策推進費」、情報提供の対価として支払う「調査情報対策費」、会合費や慶弔費などの「活動関係費」に分類される。内閣情報調査室の経費を含め年間約14億円の予算が計上されるが、支出方法や目的を定めた法令はなく、過去には野党工作や国会議員の外遊費に支出されたとの証言もある。 関連記事ピックアップ Recommended by
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