2019年春に卒業予定の大学3年生の就職活動に「異変」が起きている。今月解禁された主要企業による企業説明会の会場で、採用担当者から漏れるのは「昨年より学生が集まらない」との声。面接など6月の選考開始まで3カ月しかない短期決戦だが、学生の出足が鈍いという。就活生はどこへ消えた?(まとめ・段 貴則)
3月7日、神戸市内で開かれた合同企業説明会。金融機関や製造業、自動車ディーラーら幅広い業種の約50社がブースを構えた。
「昨年の5分の1」。あるディーラーの採用担当者は、ブースを訪れる学生の少なさに、お手上げといった表情を浮かべた。
主催団体によると、参加した学生は約600人。約800人が訪れた昨年とは日程や会場が異なり、単純比較はできないが、ブースを出したコンサルタント会社の社長は「大阪での合同説明会も、今年は参加者が少なかった」と漏らす。
景気回復や若年人口の減少から企業側の人手不足は続き、今年も学生に有利な「売り手市場」とされる。
就職情報サイト「リクナビ」を運営するリクルートキャリアによると、経団連が定めた採用選考ルールで正式内定は10月1日だが既に、19年春の大卒予定者の内定率(速報値、3月1日時点)は9・9%。前年同期より3・7ポイントも高い。
同社の担当者は、合同説明会への出足が鈍い要因として、早い内定による企業側の“囲い込み”に加え、インターンシップの広がりを挙げ「3月より前に既に、インターンシップで業界や企業の情報を得ている学生が多いからでは」と指摘する。
西宮市の女子学生(21)は、飲食業界の内定を得た上で7日の説明会に参加したといい、「内定した企業が本当に私の希望と合うか確かめるため、他の企業の話を聞きに来た」。他の参加者からは、仕事の内容以上に、転勤の有無や休日の数、経営の安定性などで各企業を比較する声が多く上がった。
だが、リクルートキャリアの担当者は「売り手市場という言葉に踊らされないで」と警鐘を鳴らす。
建設、流通など人手不足が顕著な業界がある一方で、名前の通った大企業や金融業界などは依然人気が高く「狭き門」という。「全ての業界・企業が売り手市場ではない。希望の業種、企業で内定が決まらない可能性も当然ある」として早めの活動を呼び掛ける。