実は「商品化中止を決めてから一番呆れ返ったこと」は「フォトショで大体のところまで直せるだろう」という難癖であった。
これはほぼ10中10写真のしゃの字も知らない人間が発した言葉だとは思うが、恐らく知らない人の方が多いと思う。
これについてどう説明しようか悩みつつwikiを見ていたところ、エジョフの項目に掲載されている2枚のパブリックドメインが目に入った。
今回はこれを使って「ノイズ除去とレタッチは他の何かを代償として失う」事を説明したいと思う。……ああ、隠すまでもないがカメラは趣味だ。
以下の二枚は「レタッチの代償」をありありと見せつけてくれる好例だ、特に右側の河や堤防、建物に注目して欲しい。
エジョフの居た部分が薬液で消された後、その部分に「元々別撮りで撮っていたと思われる同一箇所の風景」写真を重ね焼きした写真だが、エジョフが消えた以外に2点大きな違いが生じている。
1.スターリン・モロトフ等「残った人物」のトーンが平坦になりメリハリが消えた
2.風景の水面の立ちなどの描写が思いっきり甘くなった
ここから導き出される答えは単純。「レタッチするとその部分と近隣周辺の解像感が大幅に下がる」ということになる。
流石に80年近い技術の進歩は物凄く、近年では解像感をあまり消すことなくレタッチできるようになったが、今でも「レタッチ後は1/2*2に縮小しないと等倍解像感が出ない」と言われている。
さて、FHDクラスの液晶で短編合わせ等倍で見ても破綻しない写真を撮って出しで撮るには、150万画素程度が必要とされている。
つまり、レタッチ前の写真は600万画素程度を等倍にして破綻しない解像感が必要となる。ちょうど十数年前に一気に普及したときの画素数だ。
……さて、ここにもう一つ大きな要素が加わる。レタッチ前のノイズリダクションによる画質の低下だ。
概ね常用画質と呼ばれるISO400を超えるとノイズが問題となり始める。ISO1600で「ノイズリダクション後に1/2*2縮小しないと解像感が得られるか怪しい」状態となり、それ以上は「加速度的に一気にノイズが悪化し解像感が得られる縮小幅が一気に大きくなる」傾向となる。
いくら高感度番長と言えどISO6400で「1/4*4よりは上」、同感度をそこまで番長で無い機種で撮ると「1/8*8で何とか見れるようになる」程度となる。
ついでにピント補正も加わると……あの計算式は考えたくもない。
つまり、ノイズリダクション後にレタッチを加えると「ドッターよろしくノイズを手作業で全部書き換えない限り」普通に「1/8*8~16*16」のサイズでの仕上がりとなる。2400万画素機種で撮った写真が「VGAないしはSD画質(最悪それ以下)まで落とさないと解像感が得られない」という結果になる。
その解像度・設定で現像「できないことはない」が、そんなに解像感か解像度の低い写真を商品化できるか、というのは別の話であり、相手はそれを理解しようともしていなかったので匙を投げたという次第だ。
一般的に「現像」「レタッチ」は2枚目の写真を1枚目にする行為と勘違いされているが、正しくは1枚目の写真を2枚目の写真に直す性質のものだ。
これを踏まえてこれまでの騒動を振り返ると、恐らく逆に感じていたのだろうなと思われる部分が多々見られる。
ノイズリダクションとレタッチは諸刃の剣、今日はこの言葉を覚えて買えって欲しい。
追記:甲第6号証の(月単位の)未提出期間に幾つかデータが残っているので、誰とは言わないが見たい人は「私ではなく相手に」請求されたし。
なお、一旦psd化した上でPhotoshopで現像した(時間はかかるものの唯一納得の行く出来になった方式の)ファイルだけは、渡す前に相手が「こちらがレタッチの位置と程度を確認するためだけに作った」Camera Raw直レタッチ仕様のファイルで目的外利用をやったため渡していない。まあ、復旧は試みているだろうが……