森友学園への国有地売却を巡って公文書が事後に改ざんされていた問題は、なぜ財務省の幹部が法に触れかねないような前代未聞の不正を指示したのか、その動機の解明が焦点になっている。
首相官邸の政治家が改ざんを指示したのか、首相に近い官邸官僚の指示はあったのか。疑問は尽きないが、多くの国民は、最低でも官僚による「忖度」が働いた結果だという思いを抱いているに違いない。
『現代ビジネス』のコラム「朝日新聞『森友新疑惑』事実なら財務省解体、誤りなら朝日解体危機か」で元財務官僚の髙橋洋一氏は、朝日新聞の「改ざん」報道に対して、もし本当ならば財務省は解体、もし誤報ならば朝日新聞が解体になるぐらい重大な問題だ、と指摘していた。
官僚だった高橋氏は、よもや後輩たちが決裁された公文書を書き換えるなどということをするはずがない、と信じ、朝日の報道を疑っていた様子が伺われる。他の官僚OBも異口同音に、いくら何でも法律に触れかねない公文書書き換えなど手を染めるはずはないと発言していた。
近畿財務局に書き換えを直接指示したとみられる佐川宣寿・元財務省理財局長の国会での証人喚問が決まったが、どうやら与党は佐川氏の個人の罪に矮小化しようとしているようにみえる。佐川氏が自分の出世を考えて、忖度して文書の書き換えを指示した、という筋書きだ。
だが、もしそうだとしても、その忖度に応える形で、理財局長から国税庁長官に昇進させているので、官邸の政治家がまったく責任がない、という話にはならない。
そこで焦点になるのが内閣人事局である。第2次安倍晋三内閣が発足したのち、2014年5月に発足した。国家公務員の幹部職員600人の人事を一元的に行うための組織で、内閣官房の下に置かれた。
第1次安倍内閣の折、安倍首相が力を入れた公務員制度改革の目玉のひとつで、いわゆる「官邸主導体制」に不可欠のものとされた。それが、第2次安倍内閣で実現したわけだ。
それまで、各省庁の人事権は実質的に事務方トップである事務次官が握っていた。大臣が幹部人事に口をはさんで大騒動になったこともある。結果、「省益あって国益なし」と言われる「官僚主導体制」が脈々と続いていた。
人事を掌握する事務次官の権力は大きく、事務次官会議で承認されなければ閣議にかけることができない、という不文律も生まれた。その不文律を破ったのも、第1次安倍内閣時の安倍首相だった。