[GDC 2018]「大切なことはみんなプロレスが教えてくれた」。プロレスとゲームの深い関係を語る講演をレポート
Game Narrative Summitでは,2018年3月19日と20日の両日,超大作からインディーズタイトル,モバイル/ソーシャルゲームの開発者達が次々に登壇して,彼らのユニークな試みを語ることになっているが,19日の最後の講演は「It's Not Fake, It's Pro Wrestling: Applying Wrestling Storytelling in Games」だった。サマリーを読まずにタイトルだけ聞くと,プロレスゲームの作り方かな? と思うが,そうではない。
講演者は2401 StudiosのLuis De Leon氏。2401 Studiosはグアテマラ共和国の首都グアテマラシティに本拠を置くデベロッパで,現在「Valkyrie Galaxy」というゲームを制作中とのこと。アニメ風のキャラクターが登場するアーケードスタイルのシューティングとのことだが,発売日や対応機種については今のところ発表されていない。
ご存じのように,プロレスラーには善玉と悪玉がいて,順にベビーフェイス(Babyface),ヒール(Heel)と呼ばれる。リングで繰り広げられる試合は,ベビーフェイスとヒールが織りなす1つの物語であり,次のような7段階のステップを踏む。
順に説明すると,「Babyface Shine」とは,ベビーフェイスが登場してデモンストレーションを行い,もしヒールと条件が互角であれば,勝てることを見せる。しかし,そう簡単にはいかない。「Heat Spot」では,ヒールが股間を蹴り上げるなど卑怯な手を使って有利になり,「Extensive Heel Beatdown」でベビーフェイスをコテンパンにする。しかし,「Hope Spot」で観客の声援に押されたベビーフェイスは生き延び,反撃を試みる。そして「Double Down」でベビーフェイスとヒールは派手に動いて一進一退の戦いを繰り広げ,「Comeback」でついにベビーフェイスがヒールを打ち負かし,「Finish」で勝利を収めるのだ。
そこには物語のエッセンスが詰まっており,このフォーマットに沿った名作タイトルも数多く,もちろん「Valkyrie Galaxy」もそうなる予定だとLeon氏は述べた。
プロレスが物語を作るうえで教えてくれることは,1つの試合だけに限らない。長い視点でものを見ることも重要で,これは棚橋弘至選手とオカダ・カズチカ選手による,2012年から2016年まで続いたエースをめぐる争いから学んだという。これを物語にどう活かすのか,講演を聞いた筆者は正直なところよく分からなかったのだが,Leon氏は2人が繰り広げた戦いにかなりのインスパイアを受けたようだ。
キャラクター作りもまた,プロレスに学べる。多くの観客にアピールし,親しみやすく,存在感のあるプロレスラーはキャラクターのお手本として理想的だというのだ。Leon氏が理想的なヒールとして挙げたのは内藤哲也選手で,試合ぶりはもちろんのこと,「Tranquilo!」「Los Ingobernables de Japón!」というスペイン語の雄叫びも,スペイン語圏に暮らすLeon氏にとって印象深いようだ。
Leon氏は「(キャラクターは)シンプルであるべきだ」とする。ベビーフェイスもヒールも,だいたい「こうだろう」という決まった型を持っており,それだけに分かりやすく,物語に組み込みやすいというわけだ。
このほか,観客を巻き込んだ盛り上がりや,ファンへのアピールの仕方など,プロレスから分かるゲームの物語作りの方法は少なくないという。ちょっと無理じゃないかという理論展開もあって,ときどき会場の空気は微妙になったものの,新日本プロレスのファンとして熱っぽく語ったLeon氏。これほど日本人レスラーがスライドに出てくるGDCの講演はさすがに初体験だったが,プロレスの文法にのっとって開発を進めているという彼らの新作,ちょっと遊んでみたくなった。
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